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50話 サイレント、ニック村全員を治療する

これまでのあらすじ

 サイレント、女の子を秘密で治す。

 サイレント、秘密がすぐにばれる。

「俺も治療してくれ!!」「私も」「僕も」「わたくしも」


 ボクは多くの人に一瞬で囲まれる。


 もしかして、これは全員を治さないといけない展開なんじゃ……


 貴重で高価な火鳥の羽根を持ち続ける限り、面倒ごとに巻き込まれるリスクがある。


 そのリスクを回避するために、フラットさんに頼まれた人だけを治して、帰る予定だったのに……


 あーあ、やっちゃったな……

 さて、どうやってここから逃げ出そうか……


 ボクは逃げ道を探すために周囲を見回す。


 ボクに縋り付いてくる病人の中には黒い花のあざが顔にできている人もいた。


 やっちゃった……とか、どうやってここから逃げ出そう……とか思っていたけど、違うだろ!!


 やっちゃったんじゃない。

 何もやっていないんだ、ボクは。


 ここから逃げ出すんじゃない。

 今から立ち向かわなければならないんだ、ボクは。


 火鳥の羽根はたくさんあるのに、知り合いとたまたま出会った人だけを治して終わりにして、ほかの人は見捨てるなんてこと、できるわけないだろ!!


 冒険者は助け合う必要があると、アリアにさとしたのはボクじゃないか。


 ボクが治す力があるとみんなに知られて良かったんだよ。


 ハイタッチすれば病気が治るって状況を見ていたんだ。

 それなら、こちらからお願いすることなく、全員とハイタッチするのも簡単だ。


 でも、このもみくちゃにされた状態じゃ、まともにハイタッチできない。


「順番に治しますから、列を作って並んでください。並ばない人は治療しませんよ」

 ボクの一声で全員が列を作り始める。


「それじゃあ、順番にハイタッチ!!」

 ボクは言いながら順番にハイタッチをする。


「花のあざが消えて、体も軽くなった!!」「本当だ、すごいぞ」「私は虫歯も治ったよ」

 次々に元気を取り戻す人々。


 うん、良かった、良かった……って、殺気??


 何で?


 ボクが殺気の先を見ると、そこには腕組みをしてにらみつけてくるお医者様がいた。


 ただ、その表情は複雑そうだ。


 そうだよね。


 ボクが病院で病気を治していたら、お医者様の商売あがったりだもんね。


 でも、超熱病はお医者様は治せないわけだから、治してくれてありがたいとも思っているはずだし……


「あはは、お医者様、場所を貸してくれてありがとうございます。ハイタッチ!! それでは、どこか調子が悪いところを治していない人は、広場に行きましょう。そこで治しますので」


 お医者様も超熱病にかかっているかもしれないと思ったボクは、お医者様ともハイタッチして、逃げるように立ち去った。


 ボクは人を携えて、広場に着くと多くの人とハイタッチをする。


「無料で調子が悪いところを治してくれるなんて、どんだけいい人なんだ」「もはや神じゃないか」「きっと、神の化身だ」


「「「「「神様、神様!!」」」」」


 湧き上がる神様コールの中でハイタッチをし続けるボク。


 あれ?


 もしかして、ボク、本当に神になっちゃった。


 あの占いはこれだったんだ、きっと。


「いやいや、ボクは神様じゃないよ」

 ここは否定しておこう。


「さすが神様、謙虚!!」「徳が高いな、神様は」「神様はいうことが違うね」

 褒められると照れるなー。

 そう思いながら、男の子とハイタッチをする。


「神様、病気を治してくれてありがとう。これ、お礼の飴玉」

 男の子が飴玉を渡してくれた。


「いや、受け取れないよ」

「いいから受け取って」

 ボクは飴玉を握らされた。


「ありがとう」

 ボクが飴玉を握ったことを見た村人は、ボクにいろいろなものを渡してくる。


「これ、うちで作ったワインだ。良かったら持っていきな」「今年は大量に小麦が収穫できたから、これ良かったらどうぞ」「神様、ありがとよ。これはお礼の小麦30キロだ」「神様、ほんの気持ちですが、小麦を受けとって下さい」「これはお礼で、小麦10キロをお受け取りください」


 ボクの目の前にはワインと大量の小麦袋。

 もらっておいて文句をいうわけじゃないけど、小麦のお礼が多いな。


 こんな大量の小麦、一度に食べられないよ。

 ま、あとでマジック・バックに入れればいっか。


 そう思いながら次々とやってくる人たちとタッチを続ける。

 タッチを続けていると、いつの間にかお昼が過ぎ、治療を求める行列も少なくなってきていた。


 この村にいるほぼ全員とタッチしたのかもしれないな……

 ふう、さすがに疲れたな……


「はい、次の方」

 ボクは地面に視線を落としながら次の人を呼ぶ。


「よお、神様、俺が最後の村人だぜ!!」

 聞きなれた声が耳に入ってきたので顔を上げる。


「おっちゃん!! もう大丈夫なの?」

「ああ、もちろんだ」


 おっちゃんは自分の胸をポンと叩いた。

 朝まで病気だったとはわからないほど、おっちゃんの血色はよくなっている。


「アリアは、すぐに起き上がっちゃいけないって止めたんデスけど……」


 あ、アリアも一緒に来ていたんだ。


「大丈夫だって、アリアちゃん。目が覚めてからすこぶる体調がいいんだ。ずっと寝ていたおかげだろうぜ」


「よかった。あ、アリアもおっちゃんの面倒をみてくれてありがとうね」

 ボクは胸をなでおろし、アリアにもお礼を言う。


「えへへ、師匠に感謝されたデス」


 照れを隠そうともせずにほおを緩ませるアリア。

 かわいい。


「でも、おっちゃんたちは、どうして行列に並んでいたの?」

 超熱病が治ったんなら、列に並ばなくてもよかっただろうに……


「そりゃあ、お前、村中、神様が現れた、神様が現れたなんて騒いでいたら、一目見てみたいと思うのは人の性だろうが」


 ああ、野次馬根性か……


「まあ、神様と讃えられていたのが、お前だったとは思わなかったがな」

「どう? 本当にボク、占いの予言通り、神様になっちゃったよ」


「まさか、お前が神様になるとは思わなかったぜ!! それで相談なんだけどよ」


 うわっ、すごい悪だくみを考えている悪い顔。


「何?」

 ろくな企みじゃないと思うけど、一応話を聞くだけ聞いてみよう。


「俺に病気を治す羽根を何枚か譲ってくれないか?」

 おっちゃんは誰にも聞こえないように耳元でささやいた。


「それで何する気?」

「お前と同じだ。神様ごっこに決まっているだろう」


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、ニック村全員を治療する

 サイレント、超熱病から復帰したおっちゃんと話す

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