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第17話 サイレン、院長先生にお願いされる

前回のあらすじ

サイレント、町に出たら調子乗ってると町人から悪口を言われる。

サイレント、孤児院でお世話になった院長先生とばったり会う。





「大食い大会がなくなったのは残念ですけど、気を落とさないでください。そうだ、荷物、孤児院まで持ちますよ」

 院長先生を励ますために、院長先生の荷物を受け取ろうとした。


「いいのよ? サイレントはまだ買い物終わってないんじゃない?」

「大丈夫ですよ、今日はヒマなので、孤児院に寄っても時間はありますから」

「それならお言葉に甘えるのよ」

「はい、頼ってください、院長先生」

 ボクは紙袋を受け取り、院長先生の歩くスピードに合わせて横に並びながら歩いた。


「もう、8年なのよ」

 院長先生がぽつりとつぶやく。

「何がですか?」

「サイレントたちが孤児院から出て、冒険者になってからなのよ」

「そんなに経ちますか……」

 あまり実感ないな。


 なぜなら、8年ってどれくらいの時間かよくわかってないからね。

 話の腰を折るので、このことは院長先生には言えないけど。



「みんな元気なのよ?」

「もちろんですよ」

「最近はどんな魔物を狩ってるのよ?」

「昨日はみんなでファイヤー・ウルフを狩りましたね」

「ああ、あの『わんころ』ね」

「わんころ?」


 聞き間違いじゃなければ、今、院長先生、『わんころ』って言ったよな……

 いやいや、Fランクの魔物とは言え、あの炎を吐くファイヤー・ウルフだよ、院長先生。

 Fランクの魔物と言えば、冒険者になった瞬間にでも倒せる魔物だと認知されているかもしれないけど、命がけなんですよ。


「こっちの話なのよ。あのファイヤー・ウルフをを倒せるよになるまで成長したなんてすごいのよ。そのレベルに達しているのなら、サイレント、孤児院に将来の職業で悩んでいる女の子がいてね、その相談相手になって欲しいのよ」


「ボクですか? 相談相手ならラカンとかアイズとかブリジットがいるじゃないですか」

 バカなボクに頼まずに、他の3人に頼めばいいのに。


「あなたが適任だから、頼んでいるのよ、サイレント」

「ボクが適任? どんな内容なんですか?」

 バカのボクのほうが適任ということだろうか?

 そんな相談あるのか?


「冒険者になるか、冒険者ギルドの受付事務をするか迷っているのよ。もし、あなたなら、何てこたえるのよ?」

「受付事務、一択です」


 冒険者という職業はいつだって死と隣り合わせだし、クエストや素材採集ができなければ、路頭に迷うことになる。

 一方、受付事務は、安全な暖かい部屋で、他愛ないお話をしながらお茶を飲める上にお給料までもらえる仕事だ。


 ボクみたいに頭が悪く、事務仕事ができないならいざ知らず、事務もできる素質があるというなら、絶対に受付事務をしたほうがいいに決まっている。


「やっぱり、相談相手はサイレントが適任なのよ」

「どうしてですか?」

「他の3人なら絶対に冒険者を勧めるのよ」

「確かに」

 3人ともリスクを負って、みんな大金を手に入れたいと思っているだろうしな……


「私も受付事務を勧めてはいるんだけどね……」

「どうして決めかねているんですか?」

「その子、冒険者の適性があり過ぎるのよ」

「もしかして、ラカンみたいに適正職業が勇者だったんですか?」

 勇者はとてもレアな職業らしく、勇者になれば国から一生遊んで暮らせるようなお金がもらえるらしい。

 もしも、適性職業が勇者であれば、迷うところだろう。


「いいえ。そういうことじゃないのよ」

「それじゃあ、どういうことですか?」



「腕力や脚力などのステータスがすでに熟練者レベルなのよ」

「熟練者レベルって……まだ、ダンジョンに潜ったことないんですよね?」

「ええ。ダンジョンに潜るどころか、このカバッカの町から出たことさえないのよ」


「……ということはもちろん、魔物と戦ったこともないってことですよね?」

「そうなのよ。それなのに、既に熟練者レベルな上に、魔物についての本もたくさん読んでいて詳しくいもんだから、周りが天才だともてはやして、それで本人もその気になっちゃって、困ってるのよ」


「そうなんですね。経験なしで町を出たこともないのに、熟練者レベルって、どういう生活を送っていたんですか? 毎日筋トレをかかさずにしていたとか?」

 全身の筋肉がムキムキなマッスル女子なのか?


「どこからどう見ても華奢な女の子で、筋トレなんかしているところ見たことはないのよ」

「華奢な女の子が熟練者レベル……末恐ろしい逸材ですね」

「ご両親が関係しているのかもしれないのよ」


「ご両親ですか?」

「そうなのよ。その子は、両親はどちらも魔王討伐軍に所属していたのよ」


「サラブレットじゃないですか」

 両親が魔王討伐軍に所属するなんて聞いたことない。

「そうなのよ、サラブレットなのよ。ただ、ご両親は殉職されているのよ」

「そうなんですね」

 殉職……つまりはご両親共になくなっているということだ。


 ボクが生まれる前、神様が殺されるという世界を揺るがす大事件があった。

 神様がいなくなったのをいいことに、魔王軍が人間界を侵略し始めたのだ。

 抗戦のために、魔王軍に親を殺されて、孤児院に入る子は多い。

 その子もその中の一人なのだろう。


忙しい人のまとめ話

サイレント、院長先生の教え子がどんな職業に就くか迷っていることを知る。

冒険者ギルドの受付をお勧めして欲しいと院長先生に頼まれる。


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