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48話 サイレント、フラットさんに頼まれて治療をする



これまでのあらすじ

 火鳥の羽根のおかげで、おっちゃん快方に向かう。

 超熱病が蔓延したニック村をサイレント救おうとする。


 


「なるほどー、サイレントさんが羽根を隠し持ったままならば、安全に治療ができますねー」

 納得するフラットさん。


「いやいや、治療だなんて、羽根の使い方もわからないボクにはできないよ」

「できるデスよ。羽根を手に持って、相手の手を握ればいいだけデス」


「それだけ?」

「それだけデス」


「いやいや、何かあるんじゃないの? 患者1人につき羽根を何枚も使わなくちゃいけないとか」

「おそらく、一枚で何人も助けることができると思うデス。何人も助け続ければ、そのうち効力が切れを起こして、羽根は消えてなくなるかもしれないデスが」


「それなら、絶対に無理だよ」

「そんなことないデス。もしも、効力がなくなってきたら、新しい羽根を出せばいいだけデスから。いっぱい持っているんデスよね?」


「うん、いっぱいあるよ」

「それなら、絶対にできるデス」

 アリアに絶対にできると言い切られるとできる気もしてくる。


「お願いできますかー?」

 フラットさんは上目遣いでボクに懇願してきた。


 日ごろからお世話になっているから、断りづらい……


 でも、意識を取り戻すかもしれないおっちゃんの様子も気がかりだ。

 ボクはチラリとおっちゃんの顔を覗き込む。


「サンザールさんはアリアがみているので、師匠は安心して行くといいデス」


「わかりました、引き受けましょう」

 ボクは右手でぽんと自分の胸を叩いた。


「ありがとうございますー。それではすぐに行きましょうー」


 フラットさんに案内されて、病室に着くとそこにはベッドに横たわっている患者さんがいた。

 おっちゃんみたいに気絶はしていないが、全員真っ赤な顔をして、切なさそうだということは見ているだけで伝わってくる。


「全員超熱病患者ですか?」


「そうですねー。5人とも超熱病患者ですねー」

「すぐに治します」


「ありがとうございますー」

「それでは、お手を拝借」

 ボクはまず手前の方にいた男性の手を握ろうとした。


「ゴホッ、ゴホッ、いきなり何なんだ、あんた。いきなり手を握ろうとしてきて、不謹慎じゃないか!!」


「支部長ー、その人はー、支部長の病気を治す救世主ですー」


 フラットさんがボクのことを説明する。


「なんだって? この神官でも医者でもなさそうな男が救世主? フラットさん、あなたの口から冗談が聞けるとは思いませんでしたよ」


「冗談じゃないですー。騙されたと思って手を握ってみてください。症状がすぐに和らぐはずですー。そうですよねー、サイレントさんー」


「そうです」

 ボクは自信満々でそう答えた。


「そんなはずがないだろ!!」「医者でもお手上げなのに、手を握って症状が和らぐなんてありえない!!」「どさくさに紛れてセクハラをしようとしているのよ!!」「そうだ、そうだ! 帰れ!!」


 病室にいたほかの病人たちもボクを責め立てる。


「フラットさん、みんなが言っているように、この男の手を握られただけで症状が緩和するなんて奇跡が起こるわけがないだろう!!」


 面倒くさくなったボクは、とげとげしい声を出している支部長の手を握った。


「言っているそばから何をするんだ、君は。こんなことで症状が和らぐはずが……和らぐはずが……和らいでいる!!」


「「「「何だって!?」」」」

 他の患者も大声を上げた。


「病気どころか、長年悩まされた腰痛もきれいさっぱり治っているぞ!! はっはっはっ、こんなに体が軽いのは何十年ぶりか」


 言いながらベッドの上でバク転をする支部長。


「あ、すみません、支部長、勝手に手を握って、症状を緩和してしまって。すぐに帰るんで安心してください」

 ボクは病室のドアノブに手をかける。


「あ、お待ちください」


「何ですか? どうやらほかに人は手を握られるのはイヤみたいですし、ボクの力を信じていただけていないみたいなので、ここにいる意味ないですよね?」


 ボクはそう言い残して帰ろうとした。


「大変失礼をいたしました。この病室の全員の手を握っていただけないでしょうか?」

 もみ手をしながら懇願してくる支部長。


「でも、手を握るのはセクハラだって、他の誰かが言ってましたよ」


「誰か言ったか? そんな失礼なことを」

 支部長はほかの患者に確認をとった。


「誰も言ってません」「治療がセクハラ? そんなわけないですよ」「そうですよ、あくまで治療なんですから」「あなた様の力を信じています」


 全員手のひら返しだ。


「まあ、そこまで言うなら、治しましょう」

 ボクは病室の人たちの手を握り、回復させた。


「「「「「ありがとうございました」」」」」

 さっきまでベッドに横になっていた人たちが、全員立って頭を下げる。


「いやいや、困ったときはお互い様だよ」

 ボクは全員にそう告げて、部屋を出た。


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、治療を拒まれる。

 サイレント、治療を頼まれる。

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