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47話 ニック村、一難去ってまた一難

これまでのあらすじ

 サイレント、火鳥の素材を回収するが、薬草は燃えていて採集できず。

 サイレントとアリア、おっちゃんを助けられずに落ち込む。


 


「ごめんね、おっちゃん」


 ボクは気絶しているおっちゃんに頭を下げて謝る。

 その時、ボクの胸当ての隙間から、1枚の羽根がおっちゃんの胸の上に落ちた。


 ボクがその羽根を拾おうとすると、宿屋の部屋のドアがトントンとたたく音。


「はい、どなたですか?」

「サイレントさーん!! 助けてくださいー」


 この甘ったるい声は、フラットさんだ。


「どうしたんですか」

 ボクはドアを開けて尋ねる。


「すみませんー。冒険者ギルドの人たちがー、謎の病気にかかってしまったみたいなんですー」

「謎の病気ですか?」


 へー、ニック村で謎の病気が流行っているのか。

 大変だな。


「もしかして、体のどこかに花のようなあざがあるんじゃないデスか?」

「そうなんですよー。よく分かりましたねー」


 あざ?

 それって、もしかして……


「超熱病?」


 ボクは心の声を漏らしてしまった。


「間違いなく超熱病デス。おそらく、保菌者から空気感染したんデス」


 ボクの声を拾ったアリアはこくりとうなずく。


「超熱病って感染するの?」

 初耳。


「もちろんデス。魔力が弱い人から順に感染して、症状が発症するはずデス」


 えー、それじゃあ、もしかして、この村の人全員がおっちゃんと同じ層状になるかもしれないってこと?


 大惨事じゃないか。


 せっかく火山を防いだのに。

 一難去ってまた一難とはこのことだ。


「超熱病って、昨日、特効薬を探していた病気ですよねー?」

「そうです。実はおっちゃんもその病気にかかっているんです」


「サンザールさんが超熱病にかかっていたから、昨日のサイレントさんはあんなにも必死だったんですねー」


 そっか。

 誰が超熱病にかかったとは言ってなかったんだっけ……


「そうです。闘気草が効くかもしれないということで、闘気草も探していたんです」


「そう、闘気草ですよー。フラットさん。お医者様が言うには、闘気草で元気づけるしかないといわれたんですー。もしもー、闘気草があまっていたらー、譲ってほしいと思いましてー」


「すみません、闘気草はないんです」


「そうなんですねー。ところで、サンザールさんの胸のところが光っているみたいですがー」


 あっ、しまった。

 羽根を取るのを忘れてた。


 あの羽根は、燃えていたんだ。

 おっちゃんが燃えてしまうかもしれない。


 慌てておっちゃんのところに駆け寄る。


「師匠、その羽根、どうしたんデスか?」

 すごく驚いた表情で聞いてくるアリア。


「ああ、これは、山頂で戦った鳥の羽根だね」

「その羽根があれば、サンザールさんは助かるかもしれないデス」


「本当?」

 薬草でもないのに、こんな羽根でおっちゃんが助かるの?


「はい、すぐに、その羽根をサンザールさんの手に触れさせるデス」

「分かったよ」


 アリアの指示通りにおっちゃんに火鳥の羽根を持たせる。


「あたたかい……」

「おっちゃん、意識が戻ったの?」

 ボクの問いかけにこたえないおっちゃん。


「ボクの空耳だったのか?」

「アリアも聞こえていたので、おそらく寝言デス」


「なんだ、寝言か……」

 意識が戻ったわけじゃないんだ……


「寝言デスが、明らかに血色がよくなっているデス。確実によくなっているデス」

「本当?」


「これなら、サンザールさんは治るかもしれないデス。さすがは超貴重な素材、フェニ……」


 アリアが何か言いかけて、途中でやめた。

 どうしたんだろう、アリア。


「もしかしてー、その羽根があれば、病気は治るんですかー?」

 フラットさんがアリアに聞いてくる。


「それは分からないデス」

 アリアは慌てて火鳥の羽根を隠しながらそう答えた。


「でも、さっき、血色が良くなっていて、治るかもしれないって言っていましたよねー?」

「えっと、確かに言ったかもしれないデスが……」


 言い淀むアリア。

 本当にアリアはウソがつけないんだな。


 でも、なんでウソなんかつこうとしたんだ?


 火鳥の羽根を隠したってことは、フラットさんに羽根の存在を知られたくないんだろうけど、別に隠す必要なんかないだろうに……


「この火鳥の羽根のおかげです。この羽根のおかげで、おっちゃんは快方に向かっています」


 ボクは後ろ手にマジック・バックの中から羽根尾1枚むしり取って、フラットさんの目の前に掲げた。


「師匠、他にも羽根を持っていたんデスか?」


「え? あ、うん。素材として回収してきたから、いっぱいあるよ」

「それなら最初から隠す必要なかったデス」


「どういうこと?」

「アリア、羽根は1枚しかないと思っていたデス。1枚しかないと分かったら、力ずくの羽根争奪戦になるのではないかと思ったので、フラットさんにはごまかして隠そうとしたデス」


 ボクとフラットさんが争奪戦をする?

 そんなことありえないよ、アリア。


「それはいけないな、アリア。たとえ羽根が1枚だったとしても、それを隠さずにきちんと正直に話さないといけないんだよ。それが冒険者ってもんだ」


「お説教をしているところ忍びないのですがー、すみません、その羽根を譲っていただけないでしょうかー?」


 フラットさんが聞いてくる。


「いっぱいあるから、何枚でも持っていっていいですよ……」


「ちょっと待つデス」

「どうしたのさ、アリア?」


 まさか、この期に及んで、渡すのが惜しいなんてことを言うまいな。


「師匠が持っている羽根はレア・アイテムで入手が困難なんデス」

「そうなの?」


 ボクはアリアに聞いてしまう。


「そうですねー。まったく市場には出回らないほどの激レアですねー」


 こたえたのはフラットさんだった。


「その羽根を持っているだけで、強盗にあったり、脅されたり、監禁されるかもしれないデス」

「それはイヤだね」


「そんな羽根をフラットさんに渡すのは危険デス」

「確かに」


 フラットさん、ふんわりしているからな。

 すぐにでも災難に遭いそうだ。


「いえいえー、わたしこう見えても強いのでー、大丈夫ですよー」


 フラットさんは細い上腕を見せつけて、力をぐっと入れた。

 もちろん、力をいれても上腕は細いままで、全然強いようには見えない。


「大丈夫じゃなさそうですね」

「でもー、その羽根がないとー、仲間を助けられないですー」


 困り顔をするフラットさん。

 うん、かわいい。


「ここは師匠がフラットさんについていって、奇跡の技として師匠が超熱病を治すデス」

「え? ボクが?」


 ボクは自分で自分を指さして尋ねた。


忙しい人のためのまとめ話

 火鳥の羽根のおかげで、おっちゃん快方に向かう。

 超熱病が蔓延したニック村をサイレント救おうとする。

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