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43話 サイレント、火鳥の羽にかこまれる

2023/11/13 誤字脱字を訂正しました(内容に変わりはありません)


これまでのあらすじ

 フェス様、サイレントに完全敗北する。

 フェス様、完全敗北をなかったことにするために、サイレントに襲い掛かる。



 


 あれあれ、おかしいぞ。


 ボクはただおとなしく帰ってほしいだけなのに、火鳥はなんでこんなに怒っているの?


 高さ比べをさせようと思って、ビビってる……って挑発したから?


 それとも、本当は着地のことなんか考えていなかったのに見栄を張って、最初から着地のことを考えていたとウソついたから?


 ウソは卑しい行為だと格好をつけて、あげ足をとったから?


 いや、今は原因なんかどうでもいい。


 火鳥はボクを本気で殺す気だ。


 ボクも本気で逃げないと。


『あなたは逃げる専門だとおっしゃいましたね? この技は魔力を大量に消費するので、使いたくはなかったですが仕方ありません。百羽繚乱ももはりょうらん


 火鳥からたくさんの燃える羽が抜け落ちたかと思ったら、その抜けた羽は、火鳥の左右へゆっくりと飛んでいってしまった。


「どこに攻撃しているの? ボクは君の目の前にいるんだよ?」

 左右に燃える羽を飛ばしたところで、ボクには当たりっこない。


『これは下ごしらえです』

「下ごしらえ?」

 何を言っているんだ、火鳥は。


『逃げられては面倒ですから』

「逃げられる? どういうこと?」

『こういうことです!!』


「あっ!!」

 ボクが周りを見回すと、逃げだす隙が無いほどの羽がだんだんと迫っていた。


『わたくしの羽であなたの逃げ道をなくしました。技名を“羽かご”とでも名付けましょうか。どうです、お気に入りいただけましたか?』


 たくさんの羽はゆっくりと、しかし確実にボクの方へと向かってくる。


「もちろん、この羽に触れてしまったら、ボクは燃えてしまうってことだよね?」


『そうですね、魔力量の少ないあなたなら、すぐに燃えてしまうでしょうね』


 時間的猶予はなしか。


「それなら」

 ボクは脚に力をいれ、火鳥本体に近づきダガーで首をかっ切ろうとした。


『愚かな』


 愚かな?

 どういうことだ?

 ……って、熱い!!


 ボクは熱さのあまり、距離を取らざるを得なかった。

 そっか、考えてみれば、火鳥自身も燃えているんだ。


 接近戦をしようにも熱くて近づけないじゃないか。

 それなら、一度大きく距離をとって……って、ダメだ。


 羽が近づいている。

 あの羽に触れたら、アウト。


 さて、どうする?


 こうなったら、熱いギリギリの位置から、中距離攻撃をするしかない!!


 ボクはダガーを投げようとした瞬間、火ネズミと戦った時の記憶がよみがえる。

 もしも、ダガーをよけられてしまったら、ボクはそのダガーを拾いに行ってしまうんじゃないか?


 いや、絶対に無意識でダガーを拾いに行く。

 そんなことをしたら、ボクは焼け死ぬだろう。


 跳んで火にいるサイレント……なんてことわざができてしまうかもしれない。


 よし、ここは、ダガー以外のものを投げてダメージを与えよう。

 ダガー以外のものといえば、マジック・バックだ!!


 マジック・バックの中にあるものを投げつけちゃえ!!

 どれか一つくらい当たるかもしれないぞ!!


『マジック・バック? 今更何をするんですか?』

「こうするんだよ!!」


 ボクはタンスを投げつけた!!

 ダメだ、燃えた……


 ボクはヤカンを投げつけた!!

 溶けた……


 ボクは包丁を投げつけた!!

 これもダメか……


 えーい、破れかぶれだ。


 まな板!! 机!! 椅子!! びっくり箱!! 漬物石!! フライパン!! お玉!! ゴミ箱!! 麦を挽くためのうす!! ペナント!! くまの木彫り!! 幸運を呼ぶ壺!! 


 ボクは他にも、冒険者ギルドでもらった教本だの、借用書だの、自分のマジック・バックに入っていたものをとにかく何でも投げつける。


 投げつけるのだが、ことごとくが燃えるか溶けるかしてしまった。


 なんてこった。

 これじゃあ、相手にダメージを与えられないじゃないか。


『もう終わりですか?』

「いや、まだまだ……」

 マジック・バックに手を突っ込むが、もはや何も入ってはいなかった。


 最後に残ったのは手に持ったダガーのみ。


 最後のダガーを火鳥に投げつけようとする。

 するのだが、その手は止まってしまった。


「くっ、ダメだ、このダガーだけは投げられない」


『どうやら、終わりのようですね。それなら、こちらから行きますよ』

 燃える羽を広げこちらを威嚇してくる火鳥。


「いや、来なくていいです」

 そしてその威嚇を丁重にお断りをするボク。


『わたくしの体当たりがイヤなら、迫る炎の羽に燃え殺されなさい』


「お願い、殺さないでください」

 ボクは土下座して命乞いをする。


『土下座したところで意味はないです。あなたはここで燃え死になさい』

 たくさんの羽はゆっくりと、でも確実にボクに近づいてきていた。


「そう言わずに、お願いいたします。お慈悲を!!」

 ギリギリまで羽を自分に引き付けたと思ったボクはもう一度土下座する……フリをして地面に思いっきりダガーを突き刺した。



 ぴきっ、と音がしたかと思ったら、地面がえぐれるように穴ができた。


『地面が割れた……だと?』


 やっぱり、ここの地盤は緩いんだ。

 ボクがダガーを地面につくだけで、こんなにも大きい穴ができるんなんて。


 この地面の穴をから地上に出れば、羽を潜り抜けれられるはずだ。

 座して死を待つだけのボクじゃないんだからね。


 穴から地上へと頭を出すと、羽は先ほどボクがいたところを取り囲んでいた。

 よかった、羽からは逃げられたみたいだ。


「ボク、このまま村に帰るから、君もマグマの中に帰って!! じゃ、そういうことで」


 ボクは背を向けて走り出した。

 今度は絶対に捕まらないんだから。


『絶対に逃がしません、人間!!』


忙しい人のためのまとめ話

 フェス様の攻撃でピンチに陥ったサイレント、マジック・バックの中身をすべて投げる。

 サイレント、なんとか逃げ切る。

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