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41話 サイレント、火鳥に提案する


これまでのあらすじ

 サイレント、火鳥と戦うことを決意。

 サイレント、火鳥の攻撃をよけ続ける。


 


 いや、ボクの話を信じさせるのは無理だ。

 それなら、説得じゃなくてほかの作戦を考えよう。


 何か、良い作戦はないか?


 火鳥は、短期決着を望んでいる……そして、火鳥の弱点らしきもの……

 ん? もしかしたら、今思いついた作戦がうまくいくかもしれないぞ。


「君は短期決着をつけたいんだよね?」

 ボクは火鳥に話を切り出した。


『その通りです』


「それならさ、一つ提案したいことあるんだけど、いいかな?」

『どんな提案ですか?』

 よし、食いついた。


「上空までボクと君、どちらが高くとべるか勝負しない?」

『は?』

 こいつはバカなのか……という『は?』が返ってきた。

 そりゃあ、そうだ。

 空を飛べる鳥とどちらが高くとべるかを競おうってんだから。


「だから、どちらが高くとべるかだよ」

 ボクはもう一度言い直す。


『それは、どちらが高くジャンプするという意味ですか? 人間はジャンプできるが、鳥はジャンプできないとか言いだすんじゃないでしょうね?』

 おお、そんなトンチがあるとは気づかなかった。


「そういう意味じゃないよ。単純な高さ比べだよ。ボクはこの脚でジャンプして、君はその羽で飛んで、どちらが高くまでとべるか勝負しようっていう意味だよ」

『そんなの勝負するまでもなく、羽を持つわたくしの方が遥か高くまで飛べるに決まっているではないですか』


「いやいや、ボクが勝つと思うよ。君はさっきからジャンプしかできない生き物をバカにしているけど、ボクは君なんかより高く跳ぶことができるからね」

『空を飛べるわたくしが、ジャンプしかできない人間ごときに負けるとでも思っているですか? そんなわけないでしょ』


「それなら勝負してよ」

『なぜわたくしがそんな勝負に応じないといけないんですか?』


「もしかして、ビビってる? そうだよね、町で一番バカだと言われたボクなんかに負けたら、末代までの恥だもんね」

『は? わたくしがビビってる? そんなわけあるはずがないでしょ』


「それなら、勝負しようよ。もしもボクが勝ったら君は何も言わずにマグマの中に帰る。もしもボクが負けたら、煮るなり焼くなり好きにするといいさ」

『わかりました。そう言って、そのマジック・バックに入っている足場を取り出して、何度もジャンプするつもりなのですね?』


「そんなことしないよ。ボクがジャンプするのは一度きり」

『それなら約束をしてください。もしも、わたくしが負けを認めるまで、足場を出さないと

 もし、約束を違えた時は、おとなしく捕まると』


「わかったよ」

『後悔しませんね?』


「もちろんだよ。そのかわり、絶対に約束は守ってよ」

『いいでしょう』


 やった!!

 約束を取り付けたぞ。

 これでボクの勝ちは確定だ。


「それなら、気の変わらないうちに、勝負だ!! いっせーのーででとぶよ」

『いつでもどうぞ』


「よし、それじゃあ、いっせーのーで!!」

 ボクは叫ぶと、脚に力を入れジャンプをし、火鳥は飛んだ。

 あっという間に雲を突き抜ける。


『まさか、人間がこんな高くまで跳べるとは思いませんでした』

「まだまだこんなもんじゃないよ」


『そうですね、空はとても高いですからね』

「そうだね」


 ボクは隣で飛んでいる火鳥を見る。

 もうそろそろかと思ったが、まだか?


『どうしたんですか? ちらちらとこちらを見て』

「え、いや、何でもないよ」


『もしかしてあなたは、寒がりであるわたくしが上空に行けば、上空の寒さに耐えきれずにリタイアするんじゃないか……と思っているのでは?』

「いや……まさか、そんなことを考えてないよ」


 まずい、ボクの必勝作戦が読まれていた。


『そうですよね、わたくし自身が燃えているというのに、寒さに耐えかねてリタイアするなんてことありえませんもんね』

「そうですよ」


『冷や汗が出ていますよ、人間』

「え?」

 ボクは自分の顔を触ってしまった。


『なるほど、これで確証を得ました。やはり、わたくしの予想は当たりましたか』


 まずい、リタイアしない気だ。

 ボクの計画だと、もうすでにリタイアしている頃合いなのに……


 もうすぐ、ボクのジャンプの勢いも止まってしまう。


 このままだと、火鳥はどんなに寒くなっても、ボクより高く飛ぶだろう。


 それはつまり、ボクの負けってことだ。

 どうしよう……

 何か策を考えないと……


 …………ダメだ。

 全然思いつかない。


 高くジャンプしすぎたせいだろう、息ができなくなってきて、考えることさえままならなくなってきた。


『まさか、人間がこんなにも高く跳べるなんて思いませんでした。寒いので、わたくしはここでリタイアしましょう』


 え?

 どういうこと?

 勝負の途中で火鳥がリタイアをした。


「それじゃあ、ボクの勝ちってことで……」

 よくわからないけど、ボクの勝ちだ。


『いいえ、あなたが勝つかどうかは、あなたが着地するまでわからないです』

「ん? どういうこと?」


『あなたはわたくしと約束しましたよね? わたくしが負けを認めるまで足場はださないと』

「うん、そうだね」


『わたくしはリタイアをしただけで、まだ負けを認めていません。ですので、まだ勝負は続行中です』


「えー、何、その理屈。いつになったら勝負がつくのさ?」

『それはあなたがこの雲の上の高さから落下して、着地をした時です。もちろん、まだわたくしは負けを認めていませんので、足場を出さずに着地をしてくださいね。それができたら、わたくしは負けを認めましょう』


「え? 足場なしでどうやって着地するのさ?」

 もう一つのタンスを出して、その上に乗って、落下速度を軽減させてから着地をする予定だったのに……


『そうですね、着地をそのままして落下衝撃で死ぬか、あるいは、足場を使って負けを認め、わたくしにおとなしく捕まって、マグマに落とされるか選ばせてあげます』

「何、その究極の選択!! どっちもいやなんだけど」


『いやでも選ばなければいけないのです。わたくしは一足早く、地上で待っていますよ』

 火鳥は急転直下して、先に地上へといってしまった。


 ボクは火鳥を追いかけるかのように、すごいスピードで地上へと落ち始めた。


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、火鳥にどちらが高くとべるか提案する。

 サイレント、火鳥に作戦を読まれた上に、無理難題を吹っ掛けられる。

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