40話 サイレント、火鳥と戦う
これまでのあらすじ
サイレント、フェス様と会う。
サイレント、フェス様に襲われる。
これ以上、草を焼かれてはいけないと思ったボクは、立ち止まって火鳥と対峙した。
『立ち止まったということは、観念して捕まる覚悟は決まったということですか?』
火鳥はボクに問いかける。
「覚悟は決まった…………君と戦う覚悟がね」
おっちゃんの闘気草を確保するために、戦ってみせようじゃないか。
火ネズミの時と同じだ。
相手を驚かせて、魔法が消えた一瞬を狙えばいい。
ボクはダガーを構えて口角を上げる。
『ふん、空も飛べない人間風情が粋がるな』
火鳥は高速飛行でボクを捕まえにきた。
「ボクは飛べないけど、跳べるんだ!!」
火鳥が体当たりを仕掛けた瞬間、ボクはジャンプして火鳥をよけて、地面に着地した。
『ほう、少しはやるようですね……ですが、ちょっと跳べるだけではわたくしには勝てませんよ』
「それはどうかな?」
『すぐに思い知らせてやりましょう』
火鳥はボクの心に話しかけながら、またボクを捕まえにきた。
「また、同じ攻撃? そんなの避けちゃうんだから」
ボクが高く上にジャンプして火鳥の攻撃を空中で避けた瞬間である。
火鳥は急停止したかと思ったら、体を翻してボクに体当たりしてきた。
『わたくしのまとっている青い炎で焼け死になさい』
今度はボクを脚で捕まえるためでなく、確実にボクを燃やしに来ている。
まずい。
ボクは空中にいるからよけることができない……
このままだとボクは焼け死んでしまう。
なんとか避けないと。
でも、どうやって?
空中にいるボクには何もできない。
「マジック・バック!!」
本能的に叫んでいた。
ボクは何もない空間からタンスを取り出すと、すぐさま、それを足場にして、火鳥の攻撃を紙一重で回避した。
もちろん、タンスは燃えてしまったが。
『まさか二連撃もかわすとは驚きです』
「その驚きついでに、自分自身を燃やす魔法も消えてくれるとありがたいんだけどね」
戦闘中だというのに、ボクは軽口をついてしまった。
こういう時、調子に乗る自分が憎い。
『自分自身を燃やす魔法? 勘違いしているみたいですが、わたくしが自分自身を燃やしているのはオートなので、わたくし自身の炎が消えることなんかあり得ませんよ』
「え?」
『寝ているときでも、食べるときでも、ずっと燃えていますよ。もちろん、驚いた時も』
ええーっ!?
聞いてないよ、そんなの。
「ずっと無敵なんて、ずるいぞ」
どうやって倒せばいいの?
『わたくしにかなわないことが分かったなら、はやく捕まって、マグマに落ちて、どろどろに溶けていただけませんか?』
言葉は丁寧だけど、今、さらっとひどいことを言ったよね?
「絶対に捕まるという選択肢はないから!!」
『そうですか……それなら、攻撃方法を変えますか……この方法だとずっと捕まりそうにないですしね』
いや、そんなことないよ。
マジック・バックの中に、タンスは無限にあるわけじゃないからね。
言わないけど。
『それならば、また同じ攻撃です』
えー!?
「なんで? さっき、攻撃方法を変えるって言っていたよね??」
『ふふふ、顔に出ていますよ。わたくしが別の攻撃にしようとした瞬間、満面の笑みでした』
本当にボクのバカ。
戦いの最中なのに、ポーカーフェイスをするのを忘れていた。
「えー、そんなことなかったと思うけどな……」
ボクは吹けない口笛を吹きつつごまかす。
『わたくしの目はごまかされません。きっと、足場になるようなものは多く持っていないのではないですか?』
はい、正解です。
足場になるもの持っていないです。
あ、でも、それをそのまま直接言ってしまったら、ボクが不利になる。
「ボクが足場になるものを持っていないかどうか、試してみる?」
ボクは挑発する。
『こちらに目線を合わせずにそっぽ向きながら答えているのが答えです』
「そう思うのであれば、攻撃してみるといいさ」
足場になるものはほとんど持っていないが、ボクはあえてまたもや挑発をした。
『それならば、ご自慢のジャンプでわたくしの攻撃をよけきってみてください』
「もちろん」
ボクはきちんとあたりを見回してから自信満々で答えた。
『生意気な』
言いながら火鳥は高速でボクを捕まえにきたり体当たりをしてきたりした。
ボクはそのすべての攻撃ををよけまくる。
『なぜ、よけることができるのですか?』
「君のスピードは見切ったからね」
ボクの感覚によると、ボクのスピードは火鳥の高速と同じくらいなのだ。
だから、高くジャンプして火鳥を逃げるのではなく、火鳥が襲ってくる方向とは向きをそらし、次の足場を考えながら回るように逃げ続ければ、よけ切れるのだ。
もうここに生えていた草はすでに燃え尽きてしまっているので、薬草のことを気にしなくてよいからできる逃げ方。
これならいける。
「ボクは逃げるプロだからね」
自慢にもならない自慢をするボク。
『まさか、ジャンプだけでわたくしの攻撃をよけるとは……』
悔しそうにつぶやく火鳥。
はっはっはっ。
人間をバカにするなよ、鳥。
『困りました。わたくしとしてはすぐにでも決着をつけたいのですが……』
「ちょっと待って。なんでそんなに短期決着つけたがるの? あ、分かった、その自分を燃やす魔法は魔力消費が激しいから、すぐに決着つけたいんでしょ?」
『勘違いされているようですが、この魔法の消費魔力は少ないです。眠っているときでさえオートで発動するほどに』
「それなら、なんで短期決着したがるのさ?」
『人間相手に体力を消耗したくないですし、こんな寒空ところを飛び回り続けるなんて、まっぴらごめんですから』
「寒空って、今、夏だよ? 暑さで言ったら今が一番暑い時期だよ? それを寒いっていうの?」
『そうです。マグマほどではないですから。ああ、マグマの中から出たくない』
マグマを自分の布団みたいに言うなよな。
「ボクはしぶといから、短期決着は無理だよ。だから、ボクの命は諦めてすぐにマグマの中に帰りな」
お願いだから、諦めて帰ってくれ。
『そう言って油断させて、わたくしを襲う魂胆なのはわかっています』
「だから、襲わないって」
ボクの言葉をどうしたら信じてくれるんだろう?
忙しい人のためのまとめ話
サイレント、火鳥と戦うことを決意。
サイレント、火鳥の攻撃をよけ続ける。