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39話 フェス様にあったサイレント


これまでのあらすじ

 フェス様、人間と会話する。

 フェス様、人間が命を狙っているとわかり、返り討ちにする。


 


 ――フェス様が人間の男を落とした同時刻、ボルケノ火山9合付近――


 あれ?

 誰か、ボクのことを『愚か』って言った?

 あたりを見回すが、誰もいない。


 気のせいか……

 そうだよね、こんなところにボク以外の人間がいるはずないよね。


 そんなことよりも、火ネズミも倒したことだし、早くボルケノ火山の頂上までいかないと。

 頂上に着いたら、薬草を採集しなければならないんだから。


 ……ん?

 あれはなんだ?


 もうすでにあたりは暗いのに、やけに明るい青い光を放った何かが空中にいるぞ。


 あれは星か?

 いや、星はあんなに大きくないし、近くもない。


 鳥?

 いやいや、鳥が青い光を放って飛ぶはずがないでしょ。


 それじゃあ、もしかして、あれは……天使族か?

 天使族といえば、ボクたちよりも文明が進んでいて、聖魔法や医学がとにかくすごい……って、院長先生が話してくれたっけ。


 しめた。

 もしも天使族なら、おっちゃんの病気も治せるかもしれないぞ。


 青い光の正体を確かめるために、ボクは両脚に力を込めてジャンプをした。

 頂上付近についたボクは、光る正体を見上げる。


 うん、やっぱり鳥だったか。

 青く光る上に、ボクより大きい鳥なんて初めて見たよ。


 珍しい鳥だけど、天使じゃないならおっちゃんを治せないだろう。

 がっかり。


 まあ、いいものを見せてもらったと思って、気を取り直して、闘気草でも探しますか。

 ボクが地面に生えている草を探そうとすると、


『まだ他にも人間が居たのですか』


 誰かがボクに話しかけてきた。

 ボクはきょろきょろと周りを見回すが、誰もいない。


「気のせいか」

 ボクは闘気草を探し始めた。


『そうやって、気づかないフリをして、わたくしを襲うつもりですね、人間?』


 あれ?

 誰もいないのに、声がする。

 世の中には不思議なことがあるものだなぁ。

 そう思いながら、闘気草を探すボク。


『こちらを向きなさい、人間』


「もしかして、ボク?」

 ボクは自分で自分を指さして尋ねる。


『あなた以外に誰がいるんですか?』

「あ、やっぱりボクのことか……って、誰がボクに話しかけているの?」


 きょろきょろと見回すが、やはり人はいない。

 もしかして、自分の中に、もう一人の内なる自分が存在し始めたのか?

 よし、そいつの名は、リトル・サイレントだ。


「どうした、リトル・サイレント?」

 ボクは自分の中のリトル・サイレントに話しかける。


『リトル・サイレント? 何を言っているのですか?』

「いや、ボクの中の人が話しかけてきているんじゃないの?」


『違います。あなたの中ではありません』

「それなら、ボクに話しかけている君はどこにいるのさ?」


『わたくしは今も飛んでいます』

「飛んでる? ……って、もしかして、青く光る鳥の声?」


『そうです、鳥の声です』

「なんだ、それならそうと最初から言ってよね。なんだ、鳥の声か……って、鳥がしゃべってる!!」

 ボクは普通に驚いてしまった。


『何をそんなに驚いているフリをしているのですか? 先ほどわたくしと人間との会話を聞いていたのでしょうに……』

「先ほど? ボクはここについたばかりだから、会話なんて聞いてないよ」

 いったい何の話をしているんだろう、この鳥は。


『とぼけても無駄です。あなたもわたくしの命を狙いにきたのでしょう?』

「違うよ、ボクは闘気草を取りに来たんだよ」


『そのくだりはもう結構です。あなたもそうやってわたくしを油断させて、脚のダガーで襲ってくる気なのでしょう?』

「ボクが君を襲う? そんなわけないじゃないか」

 ボクに鳥を襲う気なんてさらさらないよ。


『わかっています。さっきの人間も同じようなことを言っていました。これ以上は問答無用のようです。あなたもマグマの中へと落としてあげます』

 鳥がボクめがけてすごい速さで飛んできた。


「いやだよ」

 ボクは高速飛行してきた鳥をよけた。


『まさか、わたくしの体当たりをよけるとは……』

 鳥は驚いている。


 体当たりを避けたボクはといえば……


「熱い、熱い!!」


 全身熱くなっていた。

 この鳥も火ネズミと同様、自分の体を燃やして突進してくるタイプなのだろう。


「鳥、お前もか!!」

『お前もかとはどういうことですか?』


「火ネズミも自分自身を燃やして攻撃してきたぞ。お前も自分自身を燃やして攻撃しているんだろう!!」


 つまりは鳥は鳥でも、炎をまとった鳥、火鳥ひとりというわけだ。

 命名、ボク。


『わたくしをあのような弱い魔族と一緒にしないでいただきたい』

「今、火ネズミを弱いって言った?」


『ええ、言いました。火ネズミの炎は赤いですが、わたくしの炎は青い炎。火ネズミに比べて温度が格別に熱いですし、あんな地をはいつくばるだけの魔物より、空を飛べるわたくしの方が速くて強いに決まっているでしょう』


 ボクがギリギリの勝負をして勝利をもぎ取った火ネズミを弱いというなんて、この火鳥はどれだけ強いんだよ。


「えっと、戦わないってことにできない?」

『できるわけないでしょう!!』

 火鳥はボクめがけて体当たりをしてきた。


 火ネズミよりも温度が高くて、速いならば、ボクに勝ち目はないよ。

 よし、逃げよう。


 ボクは敵前逃亡した。

 あれ?

 火ネズミよりも速いって言っていたけど、もしかして、ボクと同じくらいのスピードじゃないか?


 しめしめ、これなら、逃げ切れそうだぞ。


 ボクは逃げながらも、ちょっとだけ振り返る。

 ボクの逃げてきた道の草は燃えていた。


 ボクの前には火はないが、ボクの逃げ道に火事ができる。


 そうだよね。

 火ネズミで周りの草が燃えたんだから、それより強い火鳥なら、なおさらだよね。

 ちょっと考えればわかることじゃないか。


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、フェス様と会う。

 サイレント、フェス様に襲われる。

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