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37話 サイレント、火ネズミを自爆技で倒そうとする

これまでのあらすじ

 サイレント、火ネズミを驚かせようとするが失敗する。

 サイレント、ジャンプしすぎてピンチに陥る。



 


 こうなってしまった以上、火ネズミ、お前を倒すしかない。

 ボクは右手に持っていたダガーの切っ先を火ネズミの脳天に向けた。


 ボクは何秒か後に、火ネズミの炎に包まれるだろう。

 だがしかし、この姿勢を保ち続ければ、ボクのダガーがね火ネズミの頭につきささり、火ネズミも倒すことができるはずだ。


 これぞ、死なばもろともの自爆技。


 こんなにピンチな状況でもこんな技を編み出せるボクって、やっぱりすごいな。

 ボクが自画自賛していると、ボクのダガーを見た火ネズミはボクの落下予測地点から1歩だけ横に動いた。


 いやいや、ちょっとまって。

 さっきまでいじわるして、ボクの落下地点に合わせて移動していたよね?


 ボクが自爆技を試みた瞬間、そのまま自爆を誘うなんて聞いてないんですけど。

 これじゃあ、せっかく考えた自爆技が不発のままで、ボクはあの世行きじゃないか。


 どうする?

 どうすればいい?

 考えろ、考えろ、ボク。


 くっ、もう地面はすぐそこだ。

 はやく何とかしないと。


 このまま火ネズミに向かってダガーを投げるか?


 いや、ダメだ。

 火ネズミはボクのダガーを警戒して、じっとこちらを見つめている。


 もしもボクが火ネズミにダガーを投げれば、すぐさま火ネズミはダガーを避けるだろう。


 ここは火ネズミを倒すのではなく、ボクの落下スピードを減速させてダメージを軽減させる方法を考えるしかない。


 それなら、地面にダガーを投げるというのはどうだろう?

 そうすれば、ダガーを投げた反動で落下速度が減速されて、命は助かるかもしれないぞ。


 うん、やってみる価値はある。

 そうと決まれば、思いっきり投げてやる。


 ボクは力を込めて、ダガーを地面に投げつけた。

 よし、これでボクの落下スピードは減速され……………ませんよね。


 うん、なんとなく気づいてた。

 なんて思っていると、目の前には地面。


 あれ?

 ボクは神様になるんじゃなかったの?


 あの占い師はやっぱりペテン師だったってこと?


 それとも死んだ後、転生して神様になるってこと?

 つまりは、このまま天国行きだということかな?


 ボクが地面にぶつかる寸前、ピキッという音がした。

 何かが割れる音?


 ああ、分かったぞ。

 神様の怒りの琴線に触れたので、ピキッって音がしたんだ。


 きっと、『サイレント、お前は天国行じゃなく、地獄行きだ』という意味だろう。

 ……ということは、やっぱり死んじゃうんだ、ボク。


 短い人生だったな。


 ごめん、おっちゃん。

 助けられなくて。


 ごめん、アリア。

 アリアとの冒険はここまでみたいだ。


 頭と地面がぶつかる瞬間、ガラガラと何かが崩れる音がした気がした。

 ああ、きっとこれは、奈落の底に落ちる音なんだろうな。


 はぁ、死ぬ間際にこんな幻聴が聞こえるということはボクの地獄行きは確定ということかな……


 ボクが死を悟ったその瞬間、目の前に火ネズミが現れた。

 しかも、火をまとっていない姿で。


 え?

 なんで?


 いや、なんでかは分からないけど、これは絶好のチャンス。

 ボクは左手のダガーで思いっきりのど元にダガーを突き刺す。


『チュー!!』

 火ネズミは断末魔をあげた。


 ボクは火ネズミとともに、土の中を落ち続ける……って、土の中?


 あたりを見ると、確かに、ボクは地中に落ち続けている。

 なんで、こんなところに大きな落とし穴があるのさ?


 ボクが落下しているときには、こんな大きな穴なんてなかったよね?

 ……ということは、ボクが地面にたたきつけられる寸前に大きな落とし穴を火ネズミが作ったってこと?

 いやいや、そんなそぶりはしていなかった。


 それなら誰がやったんだ?

 今ここにいるのは火ネズミとボクだけしかいないのに。


 ……ん?

 もしかして、ボクが作っちゃったのかな、落とし穴。


 ボクが投げたダガーが地面を裂いたせいで地割れが起こったってことかもしれない。


 さっきの『ピシッ』って音は、地面が避ける音で、『ガラガラ』って音はボクの幻聴なんかじゃなくて、本当に地面が崩れ落ちる音だったってことならば辻褄が合う。


 それで、足場をなくした火ネズミが地割れにびっくりして魔法を解呪してしまった上に、ボクの落下地点に転んだってことだ!!


 うん、そうとしか考えられない。

 なんてラッキーなんだ。


 まさか最後の悪あがきで形勢逆転するなんて……


 だけど、この後、どうすればいいんだ?

 今現在もすごい勢いで落下しているんだけど。


 こんな勢いで地面にたたきつけられたら、ケガじゃすまないぞ。

 結局ボク、死んじゃうじゃないか。

 うわっ、もう、落とし穴の底が見える。


 ボクは今度こそ死を覚悟して目をつむった。


 ぽよん。


 ……って、ぽよん?


 地面にたたきつけられて、全身骨折で激痛が走ると思っていたのだが、全身骨折どころか、自由に動かせる。


 どうして?

 ボクはおそるおそる目を開けた。


 そこには、火ネズミの体があった。

 まさか、この火ネズミのおかげか?


 ボクは一緒に落ちた火ネズミの皮を触ってみる。

 なんということでしょう……火ネズミの皮は燃えない上に、弾力があり、落下した衝撃をすべて優しく包み込んでくれるではないですか。


 言うならば、これぞ、自然の匠が作った緊急脱出用マット。


 なるほど、このマットのおかげで、ボクは助かったというわけか。


 最初はなんて大きなネズミで最悪だと思っていたけど、今は体が大きかったことに感謝しているよ。


 本当にありがたい。


 ついでに、火ネズミの素材もゲットしておこう。

 ほとんど傷がないから高く買い取ってもらえるはずだぞ。


 ラッキー。


 マジック・バック。

 ボクは魔法のバックの中に火ネズミの死体を傷つかないように丁寧に入れた。


 あとは投げたダガーを回収しないといけないぞ。

 地面は投げたダガーを中心に円錐状に崩れているようで、一番奥深くにボクのダガーがあった。


 ボクはそれを引っこ抜くと、右脚のホルスターに収めた。


 さて、クエストの火ネズミも倒したことだし、おっちゃんの薬草を探しに山を登りますか。

 待っててね、おっちゃん。

 ボクは山頂を目指して走り出した。


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、火ネズミを自爆技で倒そうとするが失敗する。

 サイレント、火ネズミを倒す。

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