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34話 サイレント、火ネズミと戦う

これまでのあらすじ

 サイレント、火ネズミは自爆していないと気づき、逃げようとする。

 サイレント、火ネズミに攻撃するが失敗する。


 


 もちろん、ボクの心の声が届くわけもない。

 ボク一人でなんとかしないといけないんだ。


 でもさ、ずっと燃え続けることができるなんて、無敵じゃないか?

 どうやって倒すんだよ。


 ボクが考えていると、火ネズミがじりじりと動き始めた。


 まずい、こちらが何もしてこないことわかって、あちらから攻撃を仕掛けてくるつもりだ。

 そうはさせないぞ。


「うぉー!!」

 ボクは時間稼ぎのために、ただ大声で吠えた。


『チュー!』

 ボクが吠えると、それに呼応するかのように鳴き声を上げ、半歩だけ身を引き、警戒する火ネズミ。


 よし、時間稼ぎは成功したようだ。


 この時間を有効に使って、思い出せ、思い出すんだ、サイレント。

 火ネズミに勝てそうな戦法を。


 近接戦闘じゃなくて、遠距離からの攻撃方法を。


 遠距距離といえば、アイズの氷魔法……はボクが魔法を使えないから却下。

 同じ理由で、ブリジットの聖魔法も却下だ。


 あとは……ぱっと思い出すのは、ラカンの回転斬りだ。


 回転斬りといえば、遠いところから敵にジャンプで近づきながら縦回転して攻撃方法。

 そうだ、これだ!!


 ちょうど火ネズミとの間合いもラカンがいつもしている回転斬りと同じくらいだし、試してみよう、回転斬り。

 この方法なら倒せるぞ、間違いなく!!


 よし、そろそろしびれを切らせた火ネズミが攻撃してくるかもしれない。

 先手必勝。


「秘技、回転斬り!!」

 ボクはジャンプをしながら回転をして火ネズミに切りかかった。


「熱い!! 手が、手が!!」

 ダガーが火ネズミのまとう炎に触れた瞬間、ダガーが急激に熱くなり、必然、ダガーを持っていた手も熱を帯びた……って、これさっきと同じパターンじゃないか!!


 いや、同じパターンじゃない。

 ボクが回転をしながら風を送っちゃったから、火ネズミの炎がさっきよりも大きくなっている。


 相手を強くするなんて、何をやっているんだ。


「ふっ、少しはやるようだな、火ネズミ。ボクに回転斬りをさせるのも計画のうちってことか?」

 ボクは火ネズミと距離を取り、右手に息をふーふーと吹きながら、捨て台詞を吐く。


『チュー?』


 ボクが攻撃しても微動だにしなかった火ネズミだったが、初めて首を傾げた。

 まるで、俺は何もやってないんだけど……とでも言いたそうだ。

 そうだよ、バカなボクが自爆技をしちゃっただけだよ。


 でも次はこんな自爆技なんかしないんだからね。

 ボクも学習したんだから。


 そう、武器を持ったまま攻撃すれば、同じように手をやけどさせられるということを。


 武器が通用しないならば、徒手空拳で戦うか……いや、ダメだ。


 火ネズミに直接パンチなんか食らわせたら、ボクの拳が燃えちゃう。

 燃える拳……ビジュアル的には格好よさそうだから少しだけやってみたいけど……

 そんなことになったら、手にやけどを負って、冒険者としてやっていけなくなってしまうじゃないか。


 却下だ、却下。

 拳がダメなら、武器を投げる……とかどうだろう……


 そうだ、投げればいいんだよ。


 武器を投げれば、熱さなんて関係ないはずだ。


 アリアが司祭様に大鎌を投げつけたように、ボクも火ネズミにダガーを投げつければいいんだ!!


 ふっふっふっ……

 まさか、このボクが高価なダガーを投げつけるなんて、お釈迦様でも思うまい。


 待ってろよ、火ネズミ。


 ダガーを投擲して、お前の度肝を抜いてやるぜ。


「うぉー!!」

 ボクはもう一度大声をあげた。


『チュー』

 ボクの声に反応して、火ネズミも声を上げ警戒する。


 さあ、かかってこい……とでも言わんばかりだ。

 ボクは警戒した火ネズミに右手に持っていたダガーを投げつける。


 これで、おしまいだ!!


 ボクが投擲した瞬間、火ネズミは1歩だけ横にずれた。

 ボクが投げたダガーは直線的に飛び続けるので、1歩だけ横にずれた火ネズミには絶対に当たりっこない。


『チュー』


 お前も武器を投げるのか……

 俺と戦う人間は、みんなそうするんだ……と言わんばかりの火ネズミ。

 そんな火ネズミを見ながら、ボクは全く別のことを考えていた。


 え、ちょっと待って。

 そのダガーは5千ゴールドで買ったダガーなんだよ?


 ボクの大切にしていたダガーなんだよ?

 そのダガーをよけたっていうの?


 ここは食らっておけよ、火ネズミ。

 火ネズミに当てるつもりで、今、ボク、思いっきり投げちゃったよ。


 もしもボクの思いっきり投げたダガーが、このまま山頂まで飛び続ければ、マグマの中に入るかもしれないじゃないか。


 そんなことになったら、永遠に見つけだせなくなってしまう。

 つまり、5千ゴールドが一気になくなるってことだ。


 そんなのダメだ。

 あのダガーだけは絶対に手放したくない。


 ボクはそんなことを思いながら、すでに走り出した。

 ダガーをなくさないために。


 走れ、サイレント!

 自分の脚がちぎれてもいい!!


 あの5千ゴールドもするダガーを取り戻すんだ。


 瞬動を使っていないにも関わらず、瞬動と同じくらいの速さで移動するボク。

 まさか、瞬動を使わずとも、こんなにスピードが出るなんて驚きだ。

 火事場のバカ力というやつだな。


 やっぱり、5千ゴールドは惜しいもんな。

 いざ、行かん、5千ゴールド。


 火ネズミの隣を通った瞬間、火ネズミの炎が一瞬だけなくなった気がした。


 あれ?

 火ネズミの炎が消えた?

 いや、今、火ネズミの炎が消えたなんて、ささいなことはどうでもいいんだ。


 高価なダガーをはやく取り戻さないと。


 ボクは手の届くところまで飛んでいるダガーとの距離を詰める。

 よし、すぐそこだ。


 届け!!

 ボクは右手で飛んでいるダガーをわしづかみにした。

 手には金属の冷たい感触。


 やったー、ダガーを取り戻したぞ!!


 うれしさのあまりに涙がでそうだ。

 ……というか、涙が出てる。

 おかえり、ボクのダガー。


 おっと、感傷に浸っている場合じゃない。

 まだ、戦闘中で、ここは戦場だぞ!!


 すぐに火ネズミを目視しなくては。

 ボクが振り返ると、火ネズミはまた炎に包まれたまま、ボクの方をキッとにらみ続けていた。


 …………って、ちょっと待って。

 もう一度冷静に今までの一連の流れを振り返ってみよう。


 ボクが走り出すと、火ネズミの炎が一瞬消えて、ボクはガン無視してダガーを取り戻し、振り返ると、そこにまた炎に包まれた火ネズミがいた……って、火ネズミの炎が消えた瞬間って、火ネズミを倒す最大のチャンスだったんじゃないか?


 そうだよ、一瞬だけだけど、炎が消えていたじゃないか。

 その瞬間に左手のダガーで火ネズミの首を切り落とせば、勝てていたんだよ。

 もしかして、ボク、やっちゃった!?


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、2回目の攻撃も同じ過ちで失敗する。

 サイレント、また攻撃するが、武器を取り戻したいがためだけに、最大のチャンスを逃す。


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