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33話 サイレント、火ネズミから逃げようとする

これまでのあらすじ

 サイレント、火ネズミに遭遇する。

 サイレント、火ネズミが自爆したと思い込む。

 


 いやいや、あんなに真っ赤な炎をまといながら燃えているんだ。


 そのうち、熱さで倒れるだろう。

 もう少しだけ待ってみよう。


 ボクは火ネズミが倒れてくれることを願いつつ、ダガーを構えなおした。


 火ネズミは燃えたままの状態で、ボクに向かってまた体当たりをしてきた。

 今度は、さっきより早いスピードでだ。


 危ないっ!!

 もうちょっとで当たるところだった。


 よけた火ネズミを見やると、こちらをにらみつけたまま、また体当たりをしようとしている。


 自爆しきる前に倒そうという目論見か?

 ボクは火ネズミの目をちらりと見た。


 その表情に焦りはなく、むしろボクをいたぶって楽しんでいるようだった。

 うん、これ、自爆技じゃないね。


 間違いなく、必殺技のたぐいだね。


 火ネズミは燃えたまま、さっきよりもスピードを上げて体当たりしてくる。

 俺のスピードについてこれるか?


 ……とでも挑発しているかのようだった。


 ボクはまた体当たりをよける。

 心なしか、スピードが上がるごとに、火ネズミがまとう炎は大きくなり、熱さも高くなっているような気もするけど、それは気のせいだろうか……


 ボクは自分の背中が熱くなっている気がして、目線を後ろにおくった。


 え?

 草が燃えている?

 いやいや、ボクの見間違いだよね。


 もういちど確認するために、今度は一瞬だけ振り返った。


 確かに、草が燃えていた。


 えー、見間違いじゃなかった。

 これって、火ネズミのまとった炎のせいで、草が燃えちゃったってこと?

 いやいや、火ネズミの体には直接当たってなかったよね。


 火ネズミの体に直接的には当たってなかったけど、草を燃やしたってこと?

 どんだけ熱いの、火ネズミ?


 以前戦ったことのある、Fランクのファイヤー・ウルフの比じゃなく、強いじゃないか……ボクの感覚からすれば、多分、Eランクレベルのモンスターだ。


 もしかして、冒険者ギルドが、ランク付けを間違えたんじゃないの?


 ボクが冷や汗を流しているのを見て、満足げにあざ笑う火ネズミ。


 よし、逃げよう。

 ボクがEランクのモンスターを倒せるはずがない。


 ボクは火ネズミに視線を合わせたまま、全力で走り出した。


『チュー、チュー』

 ボクが全速力で逃げた瞬間、炎をまといながら追ってくる火ネズミ。


 逃がしはしないからなとでも言わんばかりだ。

 ふん、粋がって『チュー、チュー』鳴いたところで、ボクの脚力があれば、君から逃げることなんて簡単なんだからね。


 ボクは火ネズミから視線を外して敵に背を向けて逃げようとした。


 逃げようとした瞬間、ふと今までさんざんお世話になってきたおっちゃんの顔が脳裏に浮かんでくる。


 もしも、このまま逃げればどうなる?


 ボクが逃げ続ければ、追ってくる火ネズミの影響で草はすべて焼かれてしまうだろう。


 もしそうなれば、闘気草も燃えてしまう。


 闘気草が燃えれば、おっちゃんを助けることはできない。


 このまま、逃げていいのか、サイレント?

 自分は自分に問いかける。


『いいんだよ、逃げて。闘気草を取りにここまで来たんだから十分さ』……なんて自分をごまかすこと、ボクにはできない。


 ここで命を落としてしまうかもしれないけど、戦おう。

 お世話になったおっちゃんのために。

 何より、自分のために。


 ボクは覚悟を決めて、逃げていた足を止め、火ネズミと対峙する。

 ボクが急に足を止めたためか、火ネズミも警戒して動きを止めた。


 でもどうやって倒すんだ?

 策なんか一つもないぞ。


 策はなくても何か考えないとな……

 何もしてこないと悟られれば、きっと火ネズミは攻撃をしてくる。


 よし、燃えている火ネズミに、あえて距離を詰めて直接ダガーで切りつけてみよう。

 ボクは脚に力を入れて、一気に距離を詰めた。


 ボクの行動に、一瞬だけ動きを止める火ネズミ。

 どうやら、ボクが距離を詰めてきたことに驚いたようだ。


「これでおしまいだ」

 動きを止めてくれているなら都合がいい。

 ボクは火ネズミの首を右手のダガーでかっ切ってやる。


 ボクはダガーを振り下ろした。


「熱い、手が、手がぁー!!」

 ダガーが火ネズミのまとう炎に触れた瞬間、ダガーが急激に熱くなり、必然、ダガーを持っていた手も熱を帯びる。


「ふん、少しはやるようだな、火ネズミ。ボクの黄金の右手を負傷させるなんて」

 ボクはたまらず距離を取り、右手に息をふーふーと吹きかけながら、低い声で言った。


 火ネズミは当然の結果だろうに、何てバカな攻撃をしかけてくるんだ……とでも言わんばかりの目でこちらを見てきた。


 やめろ、ボクはバカじゃないんだ。

 ちょっと配慮の足りない攻撃をしてしまっただけなんだ。

 残念な目でこちらを見てくるな。


 次はこうはいかないからな……という怒りの目でボクは訴えかける。


『チュー、チュー』


 次はこうはいかないだと?

 それなら、早く仕掛けてこいと鳴き声で挑発してくる火ネズミ。


 よし、それなら、次の作戦だ!!


 ………………うん、全然思いつかない。

 これも、今までずっと暗殺ばかりしていたせいだ。


 攻撃は敵に気づかれずに近寄って首をダガーでかっ切るしかしてこなかったもんな……


 それ以外の方法で敵を倒したことなんて記憶にほぼない。


 本当にどうやって倒せばいいの?

 誰か教えて!!


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、火ネズミは自爆していないと気づき、逃げようとする。

 サイレント、火ネズミに攻撃するが失敗する。

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