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30話 サイレント、またもや町中を駆け回る

これまでのあらすじ

 サイレント、特効薬の情報を聞こうとするが、返ってくるのは励ましの言葉だけ。

 サイレント、冒険者ギルドのSランククエストを安請け合いする。


 


「ごめん、アリア。アリアの話を聞かなかった、ボクが悪い」

「いいえ、アリアもすみませんデス。存在しない特効薬をあたかもあるかのように言ってしまったデス」

 ボクたちは謝りあう。


「ううっ」

 謝り終えると、おっちゃんが苦しそうな声をあげた。


「何か今のボクにできることはないの、アリア?」

 いたたまれなくなったボクはアリアに尋ねる。


「薬でサンザールさんの免疫力を高めることならできるはずデス」

「免疫力を高める薬があるの?」


「闘気草という薬草があるデス。ただ、闘気草はとても貴重なので、この村に在庫があるとは思わないデスが……」

「でもあるかもしれないよね? ボク訊いて回ってくる!!」

 ボクは駆けだそうとした。


「師匠、待ってください」

「何、アリア?」

 アリアに止められたので、今度はきちんと振り返って、アリアの話を聞く。


「特効薬と違って、闘気草はたいていの人は知っている薬草なので、偽物をつかまされる可能性もあるデス」


「それなら、大丈夫。ほら、フラットさんから、これをもらったんだ」

 ボクは一枚の紙をアリアに見せつけた。


「冒険者ギルド発行の借用書デスか? この借用書があるからと言って、偽物をつかまされないという保証はないと思うデスが……」


「大丈夫、アリア。この借用書はね、フラットさんの特別製で、『もしも偽物を渡した場合は冒険者ギルド総出できちんと清算いたします』……って書いてあるんだよ」

「冒険者ギルド総出できちんと清算? どういうことデスか?」


「えっとね、この借用書とお金を後から交換するわけだから、もしもボクに偽物を渡したら、冒険者ギルド総出で、ボコボコにしに行くので、凄惨な目にあうよ……って意味のことが書いてあるんだよ。清算だけに」


「なるほど。だから偽物をつかまされる可能性は低いということデスね?」

「そういうことだよ」


「デスが、師匠、闘気草は高価なので、その借用書じゃ金額が足りないかもしれないデス」

「そうなの? まあ、たとえどんなに高価だったとしても、おっちゃんの命がかかってるんだ。ボク、一生かかっても働いて返していくから、大丈夫!!」

 たとえ、豪華な地図くらい高かったとしても、絶対に返してみせるから。


「師匠、その時はアリアも借金返済を手伝うデス」

「ありがとう!! まずは、薬草があるかどうかを聞いて来るよ……えっと……」


「闘気草デス!!」

「そうだ、闘気草」


 ボクはまた全速力で町中を駆け回り、全員に闘気草があるかどうかを尋ねてみせる。

 おっちゃん、待っていてね。

 きっと闘気草をみつけてみせるから。

 ボクはもう一度、冒険者ギルドへと走り出した。


…………

……


「あー、サイレントさん、特効薬はありましたかー?」

 ボクが冒険者ギルドにつくなり、フラットさんが心配そうに聞いてくる。


「すみません、特効薬はこの世に存在していないことが判明したので、代わりに闘気草を探しているんです」

「闘気草ですかー?」


「もしかして、冒険者ギルドにありますか?」

「すみません、ここにはないですー。珍しい薬草ですからー」

「そうですよね……」



「あ、でもー、闘気草って、ボルケノ火山の頂上付近に生えているのではなかったですかー?」

「本当ですか?」


「はいー、ごくまれにですがー。運が良ければ見つけることができるかもしれないですー。あ、でもー、火口付近は火ネズミが大量発生する場所でもあるから、危ないですよー」

「でも、あるかもしれないんですね?」


「そうですねー。もしも町の人たちが闘気草を誰も持っていないというのであれば、採取しにいくのもありかもしれないですー」

「わかりました。もしも誰も持っていなかったら、登ってみます。ボルケノ火山に」


「火ネズミも倒せば、クエストも達成できて、一石二鳥ですー」

「まずは、ニック村にいる全員に聞いて回ってきます」


「そうですよねー。暗くなっているので、お気をつけてー」

 フラットさんに見送られ、ボクは町の中を駆け回る。


「残念ながら、闘気草は切らしているよ」「あんな高価な物、家にあるわけないだろ」「闘気草って何? 美味しいの?」


 ボクは町中を駆け巡ったが、闘気草を持っている人はいなかった。

 そして、また、みんなから、『フェス様は我々ニック村を守り包み込んでくださる』という励ましの言葉をもらったんだけど、そういう励ましの言葉、今はいらないから。


「ダメだ、なかったよ、闘気草」

 またもや、ボクはアリアに残念な結果を報告した。


「そうデスか……お疲れ様デス」


「おっちゃんの様子はどう?」

「すでにあざの色が濃くなってきているデス。サンザールさん体力もないところをみると、明日が山かもしれないデス」


 それって、明日、おっちゃんが死んじゃうかもしれないってことだよね……

 時間がないじゃないか。


「アリア、ボルケノ火山に闘気草が生えているかもしれないってフラットさんに教えてもらったから、ボク、今からボルケノ火山を登ろうと思うんだ」

「今からデスか?」


「当然」

「既に夜ですので、今からボルカノ火山を登るのは極めて危険デス。暗くてどこを登っているか分からないデスし、それに魔物もうじゃうじゃいる可能性が高いデス。せめて、明日の朝になってからにしたほうがいいデス」


「そんなに待ってられないよ。登って降りてくるだけでも時間がかかるのに、おっちゃんの命は明日までもつかも分からないんでしょ?」

「確かに、朝に登り始めたら、サンザールさんの体がもつかどうかはわからないデスが、危険デス」


「でもリスクは承知で闘気草を探してくるしか、おっちゃんを助ける方法はないじゃないか」

「それなら、師匠、アリアも連れていってくださいデス」


「それはできないよ」

「何でデスか? アリアが足手まといだからデスか?」


「そうじゃないよ。アリアを危険な目に合わせるわけにはいかないし、それにおっちゃんには誰かがついていてあげないと」


「デスが、師匠。師匠は闘気草がどんなものかを知ってるデスか?」

「知らないよ。でも、アリアは知ってるよね? 闘気草」


「アリアは知っているデスが、師匠が知らなければ意味ないデス。どうやって闘気草を採取するつもりなんデスか?」

「それは簡単だよ。ボルカノ火山にある全ての草を刈ればいいんだよ」


「全部デスか?」

「そう。目についた草を全部刈って、後からアリアに見てもらえばいいんだよ」


「効率が悪すぎるデス!!」

「それでも、おっちゃんを助けるにはこの方法しかないんだ。だから、やらなきゃいけないんだ」

ボクはじっとアリアの瞳を見た。


「分かったデス。それなら、火山の山頂付近から採って行ってくださいデス。闘気草は高山植物のはずデスから」

「うん、分かったよ」

 ボクは村から飛び出した。

 目指すはボルケノ火山、頂上だ!!


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、闘気草を探すが、返ってくるのは励ましの言葉だけ。

 サイレント、ボルケノ火山を登ることを決意する。


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