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27話 アリア、おっちゃんがどうしてニック村に来たかを訊く

これまでのあらすじ

 おっちゃん、サイレントを逃がしたことがばれて、カバッカ町一番のバカになる。

 おっちゃん、カバッカ町から逃走する。



 



 



「以上、回想終わり」


 おっちゃんはパチンと手を叩くと、こちらに向き直った。


「おっちゃん、大変だったんだね」


 かわいそうに。

 ボクの代わりにカバッカ町のバカ代表に選ばれるなんて。


「師匠、ちょっと待つデス。サンザールさんは肝心なところを話していないデス」

「肝心なところ?」

 おっちゃん、何か省いていたか?


「どうして、カバッカ町を抜け出したサンザールさんがニック村に来たかの理由デス」

「それは、カバッカ町から逃げ出してきたからじゃないの?」


 アリアはおっちゃんの話を聞いていなかったのかな?

 バカなボクでもわかる話だったよ。


「アリア、そこが気になるデス。もしも、カバッカ村から本当に逃げ出したというのなら、ニック村ではなく、ホバッカ村を逃亡先にしたのではないデスか? 師匠が最初考えたみたいに」


「あ、確かにそうだ!!」


 ボクはアリアに気づかされた。


 カバッカ町とホバッカ村は仲が悪い。

 カバッカ町から追放されたというのであれば、ボクがそうしたように、まずはホバッカ村に助けを求めようとするはずだ。


 それなのに、おっちゃんはニック村へ来た。

 そこには何かしらの理由があるはずだ。


「おいおい、アリアちゃん、俺はサイレントとは違って、カバッカ町の門番だったから、ホバッカ村へは行かずに、ニック村に来ただけだぜ」


「門番だとどうしてニック村へ来るデスか?」


「俺の仕事はホバッカ村から追放されてカバッカ町にかくまって欲しいと懇願する村人を受け入れたり、逆にカバッカ町にちょっかいを出してくるホバッカ村の連中を追い返したりする仕事だ。だから、俺はホバッカ村のほとんどの奴らから間違いなく嫌われている!! そんな俺がホバッカ村に逃げたら、ニコニコ顔で受け入れられて、間違いなくいじめられる!!」


 おっちゃん、それ、仁王立ちになって堂々と言うことでもないことだと思うんだけど……


「素性を隠し通せばいいじゃないデスか?」

「嘘発見調査官が来たら、すぐにバレる」


「確かに、その通りだ」


 嘘発見調査官がいたら、隠し通すことはできないだろう。

 嘘発見調査官のせいで、ボクを逃がしたこともばれたんだしね。


「だから、俺は観光名所であり、警備兵がいないこのニック村を亡命先に選んだってわけだ」


「なるほどデス」

 アリアも納得してくれたようだ。


「サイレントはホバッカ村に逃げていると思っていたから、まさか、俺が追い出された原因の張本人にニック村であうとは夢にも思わなかったけどな」


『ああ、今まで本当に大変だった』とウソ泣きをしてこちらをチラリと見てくるおっちゃん。


 これは非常にまずい。

 間違いなく、法外な責任を取らされる。


「災難だったね、おっちゃん。それじゃあ、お達者で。アリア、ボクたちはホバッカ村へでも行こうか」

 ボクはその場から逃げ出そうとした。


「おい、逃げるな、卑怯者。お前のせいなんだぞ。きちんと責任を取れ」


 ちっ、捕まってしまった。

 うまく逃げられると思ったのにな。


「今度、ご飯でもごちそうするよ」


 法外な責任を取らされる前に、ボクは素晴らしい提案をした。


「ごちそうよりも金と仕事を斡旋し……」

 言葉の途中でおっちゃんは、ばたりと倒れた。


「もう、おっちゃんったら、疲れたからってこんなところで寝たら風邪ひくよ」

「師匠、サンザールさんは苦しそうデス」


「わかった。もう酔ってるんでしょ? 顔を真っ青にして急に倒れこんじゃって……」

「師匠、おっちゃんからアルコールの香りはしないデスし、もしもアルコールで酔っているなら、赤い顔をするはずデス」


 ……ってことは本当に倒れたってこと?


「おっちゃん! おっちゃん!!」

 ボクの呼びかけにも応えずにぐったりとするおっちゃん。


「おそらく、寝ずに歩いてきたから体力が限界だったんデス」


「そっか、疲れているなら休ませてあげよう」

「すぐに宿屋に行くデス」

「うん、そうだね」


 ボクはおっちゃんをおんぶすると、すぐさま駆け出した。


 …………

 ……


「とりあえず、部屋を取って、ベッドに横にさせたけど、大丈夫かな?」

 ボクはおっちゃんの顔をのぞきこむ。


「おかしいデス。ただ寝ているだけなのに、こんなに呼吸が乱れるなんて」

 確かに、寝ているだけなのに、ぜぇぜぇはぁはぁするんなんておかしい。


「疲れからくる病気かな?」

「師匠、ちょっといいデスか?」

「え? あ、うん」


 アリアはおっちゃんのおでこに手を当てて体温を測り、脈をとると、右手でおっちゃんの目を片方ずつ開けた。


「もしかして……いや、まさか……あり得ないデス」

 何かに気づいたアリアは、おっちゃんの服を躊躇なくはぎとる。


「アリア、倒れているおっちゃん相手に追いはぎをする気?」

 なんて非人道的なことをするんだ、アリアは。

 パンツ一丁じゃないか。


「師匠、冗談を言っている場合じゃないデス。あざがないか確認しているんデス。師匠も手伝ってくださいデス。はやく!!」


「え? あ、うん」

 あざ?

 ボクはアリアに急かされ、ボクはおっちゃんの体をまじまじと見た。


 胸にもおなかにも、特にあざのようなものはない。

 アリアがパ人つの中も見ろと言うので、ボクだけがおっちゃんのパンツの中をのぞき見るが、とくにあざのようなものはなかった。


「あざなんか、なさそうだよ」

「まだ、背中側が残っているデス」


「あ、そうか」

 ボクはおっちゃんを仰向けからうつぶせにひっくり返す。


「アリア、背中のところに、灰色の花に見えるあざがあるよ」

「最悪デス。サンザールさんは超熱病という病気にかかっているデス」


「超熱病?」

 聞いたことのない病気だ。


「はい、そうデス。この灰色のあざがだんだんと濃くなっていき、黒くなると死に至るデス」

「なんだって!?」


「デスが、どうしてサンザールさんがこの病気にかかっているんデスか? この病気は魔界の――」

 アリアがぶつくさとよくわからない独り言を言い始めた。


「アリア、大切なのは原因を究明することじゃなくて、おっちゃんを助けることだよ。どうすれば助かるの?」

 ボクはアリアの言葉を止めて、これからどうすればよいかを尋ねる。

 そう、今すべきは人命救助で、原因を追及することではないのだから。


「この病気は魔物の仕業なので、魔物本体を倒すしかないデス」

「よし、それなら、倒すぞ、魔物本体!!」


「デスが、そんなに簡単に倒せる相手じゃないデス。死神・ザデスが引き起こす病気デスから」

「死神・ザデス……だって?」

 うん、聞いたことない魔物。


「最弱で最凶と呼ばれている四天王の一人デス」

「また四天王か」


忙しい人のためのまとめ話

 アリア、どうしてニック村に来たかを尋ねる。

 おっちゃん、超熱病で倒れる。

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