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第14話 サイレント、フラットさんが後輩に慕われていることを知る

前回のあらすじ

サイレント、冒険者ギルドに到着する。

サイレント、冒険者ギルドの受付嬢フラットさんに素材買取をお願いする。

 

「もちろん、高値で買ってもらおうとなんて思ってませんよ。いつも通り適正価格でお願いします」

 何かやっちゃった気がするけど、ボクは気にせずに返答する。


「ええ、分かってますよー。先ほどの言葉に深い意味はないことくらいー」

 フラットさんは頬を膨らませる。


「意味がない? いやいや、適正価格で買いとって欲しいだけです」

「サイレントさんは本当に真面目ですねー」

「ボクがですか?」

 バカと言われるのは慣れているが、真面目と言われることには不慣れなので、なんだか体がこそばゆいな。


「クエストではない素材ですと、冒険者ギルドを通さずに、違法で売るほうが利鞘がいいですのにー」

 フラットさんが甘ったるい声で剣呑な話を切り出してきた。

 おそらく、フラットさんに悪気はないはずだ。


 もちろん、ギルドを仲介せずに、違法で直接商人に売る方が儲かることぐらい、今日び、子どもでも知っている。

 しかしながら、違法行為をするには、頭の良さが必要不可欠なのだ。

 頭の良さが無ければ、最後には脅されたり値踏みされたりして、結局損をする。

 ボクは頭が良くないから、カモにされるのがオチだ。


「素材は冒険者ギルドで買い取ってもらうのがルールですから」

 ボクはサムズアップしてほほ笑んだ。


「私としては、違法売買してくれた方が、仕事が減って助かるんですけどねー」

 フラットさんは、おっとりとした口調で、眉を八の字にして、困った顔をする。


 えっと……それは、冗談ですよね……

 あのフラットさんが仕事を減らして喜ぶはずがない。

「ボクは絶対に違法売買しませんからね」

 フラットさん一筋だから。


「さすが、サイレントさん、冒険者の鑑ですー」

「そんなことないですよ」

 なんで、鏡が関係してくるんだろう……と思ったが、知ったかぶりをしたほうが良いと判断したボクは、あはは……と微笑んで誤魔化した。



「さて、査定を始めましょうか」

「えっと今日はですね……」


「あ、大丈夫ですよー」

 ボクが何を買い取って欲しいかを伝えようとすると、フラットさんはボクの前に手のひらで、待ったをかける。


「くんくん、この獣の匂い……魔物のファイヤー・ウルフですねー?」

 さすが、フラットさん。

 いつも話がはやい。

 素材の買取とこちらから伝えなくても、香りだけで何を買い取るかまで察してくれる。

「そうなんです」

 ボクはこくりとうなずいた。


「匂いだけで冒険者さんの御用が分かるなんて、さすがフラット先輩です」

 フラットさんの神対応に、カウンターの奥でジューンさんも感心しきりだ。


「そんなことないですよー」

「あ、フラット先輩、今、査定表を準備します」

「その必要はないのよー」

「え? でも、査定表をもとに査定しないと……」

「全部暗記しているから大丈夫なのよー」

「さすがです、フラット先輩」


「ジューンちゃんも私のように15年も経験を積めば、すぐにこれ位の対応はできるようになりますよー」

「15年? 僭越ながら、フラット先輩って今年で20歳ですよね?」

「そうですよー」


「僭越ながら、5歳の頃から魔物と関わっていたんですか?」

「そうなりますねー」

「僭越ながら、フラット先輩みたいになるには、15年以上かかりそうです」

「いえいえ、ジューンちゃんなら慣れればすぐにできるようになりますよー」

「精進します!」

 ジューンさんはピシッと敬礼をした。


「頑張ってくださーい」

 後輩に慕われているな、フラットさん。

 もしも、ボクに後輩ができたら、こんな風になれるかな……

 なれないだろうな、ボクには。

 弱いから。


「それで査定価格はおいくらになりますか?」

「サイレントさーん、まだ毛皮を出していないじゃないですかー。いくら私でもー、匂いだけじゃ素材の良し悪しは分からないですよー」

「そうでした」

 雑談ばかりしていて、肝心の毛皮を見せていなかった。

 なんというイージーミス。


「これ、お願いします」

 ボクは床に置いていた毛皮を取り出してカウンターへと置く。

 置いてから気づいた。

 全部の毛皮、カウンターに乗りきらない。

 どうしよう。

 毛皮は全て見せないといけないのに……


「カウンターじゃなくても、床のボックスの中に置いてくださいー」

 あ、そうだった。

 カウンターに素材が乗りきらない時には、カウンターの隣に大型魔物を討伐した時の素材置き場が設置されていたんだった。

 ボクはボックスに毛皮を山積みにするとボクの身長と同じくらいの高さになった。


「あらあらー、こんなに多いんですねー」

 うん、冒険者ギルドの閉館間際に持ってきていい量じゃないね、これ。

「すみません。これだけあると、鑑定も大変ですよね。明日にでも出直します」


忙しい人のまとめ話

サイレント、違法売買はしない主義だと伝える。

サイレント、魔物の素材をフラットさんに適正価格で買い取ってもらう。

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