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19話 サイレント、占い師に占ってもらう


これまでのあらすじ

 サイレント、ケンカに巻き込まれる。

 サイレント、占い師に占いされる。

 




「さて、それじゃあ、占うよ」

「アリアを待たせているから、できるだけはやくね」


 トランプのようなカードをきって、並べる占い師。


「うむ、うぬには神になる前に女難と天難と魔難の相が出ているね」

「じょなん? てんなん? まなん?」

 意味不明な言葉が出てきた。


「今からひとつずつ解説してやるよ。まずは女難だ。女難っていうのは、人間の女絡みで不幸なことが起こるってことだ」

「いやいや、女難なんてあるわけが……」


 ないと言いかけて、ボクは思い出す。

 アリアに会ってから、カバッカの町から追い出され、ボクの人生一気に変わってしまった。


「……ありました、女難!!」

「おかしいね……過去じゃなくて、未来に女難だと気づくことになってるんだけどね」


「え? これ以上に酷くなるってこと?」

「占い上ではね」


 なんてこった。

 カバッカの町から追い出される以上の不幸があるということか……


「これ以上、酷くなる……ニック村でアリアと別れて、冒険を続けない方が良いんですか?」

「それは教えられないよ」


「そんな意地悪言わないで、教えてくださいよ」

 すごく気になるじゃないか。


「うぬはさっきの客とのやり取りを見ていなかったのか?」

「見てましたよ……って、まさか、さっきの女性と同じように、占いの結果を聞いてしまったら……」


「ああ、運命が変わってしまうね。だから聞かないほうが良い」

 占い師はニヤリと片方の口角だけをあげた。


「分かりました……」

 ボクはしぶしぶうなずくしかなかった。


「だが安心するといい。女難については絶対に回避はできないが、天難や魔難より不幸は小さいみたいだ。まあ、今のところはだがね」

 絶対に回避はできないんだ……


「ボクも冒険者です。それくらいの女難は受け入れます」

 どうせ、女難なんて、アリア絡みだろうし。


「よくぞ言い切った。器量の大きい人間だ!!」

「いやあ、それほどでもないですよ」

 ボクは照れながらこたえる。


「それなら次に天難について話そう。天難って言うのは、天使族で不幸なことが起こるってことだ」

「これから先、どこかで天使族にあうってこと?」


「いや、うぬは既に天使に会っているし、不幸も経験済みなのだが、これからさらなる不幸に巻き込まれる可能性があるということだ」

「ちょっと待ってください。そもそも、ボク、天使族なんてあったことないですよ」


「そんなことはないはずだ。もう既に会っているはずだ」

「いやいや、そんなはずないよ」


 天使族っていったら、背中から翼が出ているんだよ?

 いくらバカで鈍感なボクでも背中に翼が生えていたら気づくよ。


「身近にいなかったか? かわいい顔をして、悪魔のように性格の悪い天使が」

 天使のようにかわいいって言われて、ぱっと思いつくのはブリジットだけど……


 ブリジットが悪魔のように性格が悪いか?

 ブリジットはボクをパーティーから追い出すときも最後の最後までかばってくれて……いなかったね。


 そうだ、ブリジットは二重人格というやつだった。

 そうだよ、ボクのことをボロクソにけなしていたじゃないか。


 きっと、ブリジットのことを言っているのだろう。

 一度だけだけど、背中に翼があるように見えたことがあるもん。


「会ったことあります。悪魔のような天使に」


「その者と会っても、決して自ら声をかけてはいけないよ」

「今後会う予定はないはずだから大丈夫ですよ」


「いや、私の占いでは絶対に再会する」

 えっ、ブリジットと再会するだって!?


 ブリジットがいるということは、きっとラカンとアイズもいるということだろう。

 あのメンバーにまた会うことになるのか……


 想像するだけでも吐き気が催してきた。


「悪魔のような天使に会ったら、相手から声をかけてもらいなさい。そして、もしも天使が何かを提案してきたら断りなさい。決して一緒に行動してはいけないよ。とんでもない目に遭うから」

「分かりました。もしも、何か提案してきたら、絶対に断ります」

 ボクは自信満々でこたえる。


「なんだか、心配だね」

「大丈夫ですよ。天使が何かを提案してきたら、首を横に振ればいいだけですから」

 そんなの、バカなボクでもできるよ。


「たとえ首を縦に振らざるを得ない状況でも、絶対に首を横に振れるかい?」

「はい、絶対に」

 ボクは大きくうなずいた。


「それなら、安心だ。最後に魔難について話すよ。魔難って言うのは、魔族絡みで不幸なことが起こるってことだよ」


「いやいや、魔難なんてあるわけが……」

 ないと言いかけて、ボクは思い出す。


 人狼に会ってから、ホバッカ村から追い出され、ボクの人生一気に変わってしまった。


「……ありました、魔難!!」

「それは、天使のような魔族だったかい?」


 天使のような……

 そういえば、人狼は天使のように優しかったけ。


「そうです、そうです」

 ボクは激しく何度もうなずく。


「その魔族には、警戒するんだね」

「その魔族とは、もう既に別れたから警戒なんてする必要なんかないんじゃないと思うけど……」


「おかしいね。未来にも同じ魔族のせいでもっと酷いことになることになってるよ」

「何だって!?」

 まさか、また人狼とも再び会う運命にあるのか?


「うぬは魔族に何かをお願いされる。でも、魔族に何かお願いされても、決して同意するんじゃないよ」


「もしも同意したら、どうなるんですか?」

「女難や天難以上の人生最大級の不幸に見舞われるね。そして、今のところ一番被害の小さい女難が、魔難以上の不幸になるだろうね」

 ひー、そんなの絶対に嫌だ。


「分かりました。肝に銘じます」

 人狼のお願いは今後断る。

 うん、簡単なことだ。


「女難・天難・魔難が起きるかどうかは分からないが、例え起きたとしても、起きなかったとしても、うぬは神になる」

「ちょっと待って。ボク、本当に神様になれるの?」


「当たり前だ。あの女の運命があなたに移動したんだから」

「ボクに神様なんか務まるかな……」


「神様に必要なのは人間性です。自分の良心に従うと良いだろう」

「なるほど」


 ボクはバカだと思われないためにうなずくが、全然意味が分からない。

 神様は完璧なのに、人間性が必要なの?


 どういうこと?

 ま、いっか。


 未来は明るいんだ。

 ボクはこの後、女性と関わらず、天使と悪魔の提案を断り、そして神になるんだから。


「占いは以上だ」

「代金はいらないんだよね?」


「ああ、いらない。だが、神になった時、我の望みを融通してくれないか?」

 ああ、そういう下心があったから、占い料金がタダだったのか。


「もしも、神になったらね。ありがとう、占い師さん」

 ボクは占い師に手を振る。


「ニック村はフェス様に守り包まれている。うぬにフェス様の加護があらんことを」

 占い師はボクに祝福の言葉をかけてきた。


忙しい人のためのまとめ話


 サイレント、未来に女難と天難と魔難があると聞かされる。

 サイレント、女難と天難と魔難の回避方法を聞く。

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