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17話 サイレント、ケンカしている女性達に出くわす

これまでのあらすじ

 サイレント、平和なニック村で、口喧嘩を目撃する。

 サイレント、ニック村を憎む村に改名すればいいのにと思う。




 

「むーっ!!」

 ボクたちがおばさんと別れると、急にボクの腕の中で暴れはじめるアリア。


 どうしたんだ、急に暴れ出して……


 ……って、息ができないのか!!


「あ、ごめん」

 ボクはすぐさまアリアを開放する。


「はぁ、はぁ、師匠、酷いデス」

「アリアとおばさんの会話を止めたかったんだ。あのおばさんの愚痴を聞いていたら、ずっとこの村にいることになって、冒険の準備ができないからね」


「確かにそうかもしれないデス……って、ちょっと待ってください、師匠。それって、この村には住まないってことデスか?」

「うん、まあ、そうなるかな……ニック村に留まるよっぽどの理由でもない限りね」


 ボクはなぜか顔が熱くなったので、頭を掻きながら、アリアの方を見ないようにしながらぶっきらぼうに呟いた。


「素直にアリアとまだ冒険がしたいと言ってくれればいいデスのに」

 まだ一緒に冒険することがよっぽど嬉しいのかアリアはニコニコ顔だ。


「だから、ニック村に留まるよっぽどの理由がなかったらの話だからね。もしも何かあれば、冒険はここでおしまいなんだからね。勘違いしないでよね」

「分かったデス。ニック村に留まる理由がなければ……デスよね」


「そうだよ」

 ボクはこくりとうなずく。


「それなら、師匠がニック村に留まる理由ができる前に、冒険の準備をしましょうデス」

「うん、そうだね。水も食料もなくなってしまったからね」


「その前に、買うべきものがあるデス」

 水と食料より買うべきもの?

 そんなものあるか?


「地図デス」

「おお、地図!!」

 確かに、地図がないおかげで、迷子になり続けているからね。


「そうデス。地図さえあれば、魔王城へも行けるはずデス」

「アリア、ボクは絶対に魔王を倒さないからね」


 まだ魔王を倒すことを諦めてなかったんだね、アリア。

 夢を持つのは良いけど、Fランク最弱冒険者のボクを巻き込まないでね、アリア。


「師匠、行くだけデスよ、魔王城へ」


 物見遊山感覚で言ってくるアリア。


 いやいや、魔王城だよ?

 強い魔族がたくさんいるんだよ?


 そんなところ行けるわけないじゃないか。


「ボク、行かないからね」

 行ったら最後、魔王と戦うことになりそうだしね。


「それなら、師匠はどこへ行きたいデスか?」

「どこって、それは……近くの町とか、村とか……」

 具体的に行きたい場所なんてないからね。


「分かったデス。近くの町とか村デスね。それを確認するためにもまずは地図デス。地図って、どこで売っているんデスか?」

「それは……どこかな?」

 地図が読めないボクにとって、地図は無用の長物だから知らないよ。


「師匠、分からないんデスか?」


 まずい。

 冒険者なのに、地図の売っているところを知らないって言ってしまった。

 バカと思われてしまう。


「ああ、今思い出した。地図は冒険者ギルドに売っているんだよ」

 口から出たのは、でまかせだった。


「そうなのデスね。それならすぐに冒険者ギルドへ行くデス」


 アリアに手を引かれる。


 まあ、いっか。

 もしも、地図が冒険者ギルドに売ってなかったら、初めて来た村だから、分からなかった……とか言って、適当に誤魔化そう。


 アリアに手を引かれながらボクは村の様子をきょろきょろと見まわす。

 道幅が狭いためか、村の道中にはたくさんの人がごった返していた。


 その観光者の中を縫って歩くアリアとボク。

 アリアに手を引かれてしばらすると、先ほどよりも狭い人気のない道に着く。


「アリア、冒険者ギルドってこっちの道であってるの?」

 さっきの大通りと比べて明らかに人が少ないから、多分ここは裏路地だよね?

 こんなところに、冒険者ギルドがあるとは思わないけど……


「分からないデス」

 分からないで手を引いていたんかい。


 ついにアリアも迷子の達人に一歩近づいたね……

 ……って、ダメでしょ、それ。


「それなら道を尋ねようよ」

「そうデスね……えっと、人はどこにいるデスかね?」

 きょろきょろと周辺を探しアリア。

 うん、こんな裏路地じゃ人は見当たらないよね。


「だから、言ってるじゃないか。うぬは占いの結果を聞く必要がないんだって!!」

「はぁ? なんでっ? 私は客よ。占い結果を言いなさいっ!!」


 いたよ。こんな裏路地に人が。

 おばあさんと若い女性の言い争う声だよ。


 本当に、この村は言い争いが日常茶飯事なんだな……


 取り込み中みたいだし、この人たちには関わらないことにしよう。

 他の人はいないかな……


「我は占い師だ。その占い師が言っておるのだ。うぬに結果を伝えられないと」

「意味わかんないっ! さっさと結果を伝えなさいっ!!」

 きょろきょろと人を探している間にも、言い争いの声が耳に入ってくる。


「結果を伝えると、うぬの良い運命が悪い運命にかわってしまうからね」

「結果を聞けないなら、お金を返してっ!! 良く当たる占い師がいるって聞いたから、わざわざこんな田舎まできたんだからねっ!!」


「いやいや、私はちゃんと占ったじゃないか」

「その結果が聞けないんじゃ、本当に占ったかどうかも怪しいわっ!! この、ぼったくり占い師っ!!」


 確かに高飛車っぽいお客の言うことには一理ある。


 占いを聞きに来て、結果を聞けないんじゃ、それは占っていないのと同じことだ。

 まあ、ボクには関係のない話だ。


「それは聞き捨てならないね。私はね、ホバッカ村の女の子を教祖様にしたくらいすごいんだからね」


 ホバッカの村?


 あ、そうだ、ニック村って名前、思い出した。

 ホバッカ村のネークラが観光に来たところじゃないか。


 ……ん? 待てよ。

 今、教祖様って言ったよな……


 ……ってことは……

 うわっ、この人、ネークラを教祖様に仕立て上げた本人だ。

 絶対に関わらないようにしないと。


「とにかく、占いの結果を教えなさいっ!!」


 強い命令口調で突っかかっている女性がいた。

 この女性に教えてあげたいよ。

 ニック村の人は何年もの長い間根に持つおそろしい性格だからつっかからない方が良いですよ……って。


 関わりたくないから言わないけど。


「最後の確認だ。今、ここで黙ってお金さえ払えば、良いことばかり。占いの結果を聞き、お金を払えば、悪いことばかりおこるぞ」

「いいから教えなさいっ!! あんたに占ってもらうためだけに、わざわざこんな田舎まで出向いたんだからっ」


 どうやら、この村の人間ではないらしい女性の怒りのボルテージは溜まっていく一方だ。


「あの人たちに冒険者ギルドの場所を訊くデス」

 アリア、君は勇者なのかな?

 あんなにケンカしているところに道を訊きに行くなんて。


「アリア、言い争っている人にはなるべく関わらない方がいいよ」

 ボクはアリアを止める。

 絶対に教えてくれる雰囲気じゃないでしょ。


「師匠がそう言うなら、他の人に訊くデス」

 あっけらかんとアリアは言うと、他の人を探し始めた。


 ボクが止めなかったら、あの喧嘩している人たちに道を訊きに行くつもりだったのか……

 なんて、おそろしい娘なんだ、アリア。


忙しい人のためのまとめ話

 サイレントとアリア、地図を買いに冒険者ギルドへ行こうとするが道に迷う。

 サイレント、道に迷っている途中でケンカしている場面に出くわす。

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