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15話 サイレント、火山の被害を軽んじる

これまでのあらすじ

 サイレントとアリア、おばさんにニック村に来た目的を伝える。

 サイレント、ニック村に住もうとする。




「そりゃあ、良いことばかりではないさ」

「何が問題なんデスか?」


「それは、この村が活火山のふもとにあるということさ」

「なるほどデス」

 アリアが頷く。


 いやいや、一人で納得しないでよ、アリア。

 ボクには全くわからないんだけど。


「活火山のふもとだと、何が問題なんですか?」


「活火山のふもとだと、火山が噴火するかもしれないからね」

「なーんだ、噴火か。『そんなこと』か」


 ボクはそんなの全然問題ないと思ったボクは簡単に答える。

 噴火って、火山からマグマが出てくるだけでしょ?

 マグマに触らなければ万事解決。


「まあ、『そんなこと』と言ったら、そんなことだね」

 ……と微笑みながら話しかけてくるおばさんの言葉には明らかに怒気がこもっていた。

 正直、怖い。


「村全体が黒い雲で厚く覆われ、辺りは火山灰だらけになるから、地上に日光が届かなくなり、農作物や林業は全滅し、食べるものもなくなる」


 あれ?

 思っていた被害と違う……

 噴火したマグマに触らなければ、後は穏便に暮らせるんじゃないの?


「もちろん、そんなところへ来る観光客もいなくなり、経済は冷え込む。他の村や町へ移住する人も出てきて、村は大パニックになるだろうけど、『そんなこと』と言うなら、『そんなこと』だね」


「『そんなこと』と言って、申し訳ありませんでした」


 ボクは頭を下げて謝る。


「分かればいいのさ」


「噴火の被害が尋常でないことは分かったんですけど、噴火って、頻繁に起こることなのですか?」

 そんな被害がしょっちゅうあったら、商売にならないよ。


「いや、頻繁には起きないね」


「それじゃあ、この村は安全ってことだね!!」

「師匠、それは楽観しすぎデス」


「そうだよ、油断しすぎだ。『天災は忘れたころにやってくる』という言葉くらい、あんたも知っているだろう?」

「『天才は忘れたころにやってくる』でしょ? もちろん」

 知らないよ。


 でも、知らないなりになんとなく意味は分かる。

 きっと、バカと違って、天才は正義のヒーローみたいに忘れたころにやってくるってことだろう。

 美味しいところだけをもぎとっていくために。


「地震や噴火や水害などの災害は忘れたころにやってくるから、日ごろから気をつけなさい……という意味デスよね?」

 そういうことか。

 全然想像していたのと違った。


 良かった、アリアの前で言わなくて。

 バカがばれるところだった。


「その通り。噴火は今じゃない遠い未来に起こるだろう……と、あんたみたいに油断していると、危険だってことさ!!」


「はい、油断しません。肝に銘じます」

 叱られたボクは素直にそう答えた。


「そうだよ。ここの火山はだいたい80年サイクルで噴火するんだけど、長老の話では、79年前に起こっているらしいよ」

「なるほど」

 一応分かったフリをしているけど、数字の話になると、ボク、全然分からないからね。


「79年前ということはいつ噴火してもおかしくないということデスね?」


 なんだって。

 いつ噴火してもおかしくないだって。


「周期的にはそうなるね。だから、毎日びくびくしながら過ごさなければならないのさ。こればかりはいつ起こるか分からないからね」

「いつ起こるか分からなくてびくびくしているなら、よろしければ、アリアが噴火させてあげるデス」


「あはは、面白い冗談だね。お嬢様もジョークを言うんだね」


 全くだ。

 火山を噴火させるなんてことできるわけないじゃないか。


 ボクは一緒に笑おうとして、アリアの顔を見た。


 目が本気だ。


 いやいや、アリアが本気で火山を噴火させるわけがない。

 念のためにもう一度アリアを見る。

 うん、やっぱり目が本気だ。


「まさか、アリア、魔法で噴火させようとしてる?」

 ボクはアリアの耳元で囁いた。


「してるデス」

 アリアは真面目な顔でこくりと肯く。


「あのね、アリア、こういうのは人の力でどうこうさせるのではなくて、自然の力に頼ったほうがいいんだよ」

「そうなのデスね……すみません。アリア、出すぎた真似をしようとしていたデス」


「どうしたんだい、急にコソコソ話はじめて」

「えっとですね……そう、今、お嬢様に言っていいジョークと悪いジョークを教えていたんですよ。火山を噴火させるなんて、犯罪紛いなことはジョークでも言ってはいけません……って」


「皿を割っているから、ドジな従者だと思っていたけど、結構まともなじゃないか」

「ははは、お褒めに預かり光栄の至りです」


 元々、皿なんか割ってないからね。

 ボクは乾いた笑いで受け流した。


「おっと、一応言っておくけど、この村であんたのように奉公人として雇ってくれるような金持ちお貴族様はいないよ」

「そうなんですか」


 安心しておばさん。

 最初から奉公人になるなんて考えてないから。


「そうデスか。師匠、噴火の恐れがあるので、この村には移住しないで、違うところに行きましょう。そうですね……魔王城まで出向いて魔王を倒すとかどうデスか?」

 それ、ボクが大変な目にあうパターンだよね?


「魔王を倒すだって!? あんたそんなに強いのかい?」

「強くはないです!!」


 即座に食い気味に否定するボク。

 だって、ボクのランクはFランクなんだよ、おばさん。


「それなら、どうしてお嬢様はそんな提案をしたんだい?」

「それはボクが冒険者だからですよ」


「へー、冒険者ね……そういえば、あんたの格好はお嬢様の護衛というよりは確かに冒険者って感じだね」

 ボクを上から下まで嘗め回すように見てから納得するおばさん。


 それ、どういう意味ですか?

 もしかして、ボクにはお嬢様に仕える様な気品の欠片もないということですか?


 ちょっとしたムカつきが込み上げてくるが、深呼吸して気分を落ち着かせた。


忙しい人のためのまとめ話

 サイレント、火山の被害を軽んじて、おばさんを怒らす。

 サイレント、おばさんに冒険者ぽいって言われて、イラつく。


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