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第7話 サイレント、羽虫を逃がす

これまでのあらすじ

幻覚のスケアード・スライムが空中に浮いて攻撃してくる。

 アリア、幻覚のスケアード・スライムの攻撃が本物なのは、ジツゲンゴロウの仕業と推測する。






「どうしてそんなに声を荒げているデスか?」

「ダンジョンでは、協力する魔物なんていなかったからね」


「ダンジョンでは種族同士で縄張り争いをしているから、協力なんかしませんが、棲息地が異なる場合、協力することがあるんデス」

「ああ、棲息地が異なると、協力することあるよね」


 良く分からないけど、とりあえずオウム返しをしておこう。


「そうデス。人ジゴクは砂地に棲んでいるデスし、ジツゲンゴロウは、水辺に棲んでいるので、協力することがあるデス。相手が格上だと感じればデスが……って、師匠は魔物コンボという言葉を知っているんですから、それくらい知ってるデスよね?」


「え? あ、うん、もちろん」

 知らないよ。


 ボクは魔物の知識なんてこれっぽっちもないんだから。


「師匠の受け答え、知らない人の反応みたいデス」

 まずい、このままだとウソがばれてしまう。


「とにかく、ジツゲンゴロウさえ倒しさえすれば、スケアード・スライムは、ただの幻覚になるはずだよね?」

 ボクは無理矢理話を逸らす。


「そうデスね」

 アリアはこくりとうなずいた。


「それなら……気配察知!!」

 ボクは周囲の生き物の気配を探る。


「ねえアリア、スケアード・スライム以外には何もいないよ」

「きっと、目に見える範囲外から攻撃しているデス。ジツゲンゴロウの魔法範囲は5キロもあって、広範囲デスから」


「なんてこった」

 5キロはどれくらいか分からないけど、とにかく広い範囲なんだろう。


「どうするの、アリア。アリアの大鎌もないし、このままだと負けちゃうよ」

「人ジゴクかジツゲンゴロウ、どちらかの本体さえ見つけ出せれば、大鎌が無くても勝てるんデスが……」


「え? 大鎌が無くても勝てる? どういうこと?」

「人ジゴクもジツゲンゴロウもどちらも弱くて、単体ならFランクなんデス」


「こんなに強いのに、Fランクだって? Aランクの間違いじゃないの?」

 こんなに強いのに、Fランクのスライムと同レベルなんてことあるはずないでしょ。


「Aランク級の攻撃に思えるのは、人ジゴクとジツゲンゴロウが協力しているからで、間違いないくどちらもFランクの魔物デス」

「そんなバカな」


「先ほども説明しましたが、人ジゴクは幻覚をみせるだけの魔物デス」


「ジツゲンゴロウは?」

「ジツゲンゴロウ自身は誰か見せた幻覚を本物にするだけで、自分自身では何もできないデスから」


「つまりは、人ジゴクとジツゲンゴロウがタッグを組まなければ、弱いということ?」

「協力しないなら、滅茶苦茶弱いデス」


「ちょっと待って。それじゃあ、もし、負けてしまったら……」

「Fランクの魔物に負けた冒険者という称号を手に入れるかもしれないデス」

 Fランクの魔物に負けた冒険者の称号……そんな称号欲しくない。


「いや、でもさ、ボク達が人ジゴクに負けて食べられたとしても、死因は分からないでしょ?」


 そうだよ。

 他の強い魔物に襲われたとか、道に迷って餓死したとかの可能性もあるわけだしさ。


「いいえ、分かるデス」

「何でさ?」


「人ジゴクの歯形と食べ残した部位によって、一発で分かってしまうデス」

「アリア、倒そう、人ジゴク!!」


 もしも負けてしまったら、末代までの恥だ。

 ボク、子どもいないけど。


 絶対に負けられない戦いがここにある!!

 ボクが決意を固めるていると、カサカサという音がした。


「人ジゴクの幻覚……いや、幻聴魔法デスかね?」

 アリアは物音をする方へと視線を向けた。


「気配はないのに音だけするということは、おそらくね」


 ボクがアリアに答えた瞬間、

 ぷーん。

 またもや耳元で羽虫が飛び回る。


 うっとうしいと思ったボクは羽虫を手で払った。


 すると、目の前にショッキング・ピンク色の羽虫が飛び込んできた。

 うっわー、すっごく、目立つ色で珍しい羽虫発見!!


 しかも、飛ぶスピードが滅茶苦茶遅い。


 まるで止まっているかのようだ。


 よくもまあ、こんな目立つ色で生き残れたな、お前。

 ボクは両手でそっとショッキング・ピンクの羽虫を捕まえる。


 両手で作った虫かごからそのショッキング・ピンクの羽虫を覗きこむ。


 はっはっはっ。

 どうだ、人間様に捕まってしまった気分は?


 お前は今から潰されてしまうのだ。


 ボクはパチンと両手で叩き潰そうとした瞬間、あることが脳裏をよぎった。



 こんなショッキング・ピンク色をして目立つ上に、飛ぶのも遅い……ということは、絶対に毒とかある虫なのではないか?


 そうだよ。

 こんな弱肉強食の世界で生き残っているんだ。

 絶対に毒があるに違いない。


 ボクは両手で作った虫かごをぱっと壊すと、羽虫はぷーんと音を鳴らしながら、どこかへと飛び去った。


 命拾いしたな、お前。


「元気に生きるんだぞ!!」

 なんなら、後で恩返しをしてくれてもいいんだからな。


「元気に生きるって、何の話デスか?」

「こっちの話だよ」

 ボクはにかっと笑って、サムズアップする。


「そうデスか」

 話しが見えないアリアは曖昧に頷く。


「それよりも、これからどうするかだね」

「もうそろそろ本体が出てきてもよさそうな時間帯デスので、死んだふりが一番いいかもしれないデス」


「死んだふり? 何で?」

「人ジゴクは、アリア達を十分に追い詰めたと思っているはずデスし、それに……」

「それに?」

 ボクはアリアの続きの言葉を待った。


「人ジゴクの主食は人肉デスから」

 感情を込めずに無機的に説明するアリア。


「アリア、言い方!! 主食が人肉って怖いよ」

「ごめんなさいデス」


 しおらしく謝るアリア。

 うーん、カワイイ。


「いや、分かればいいんだけどね」


忙しい人のためのまとめ話

 アリア、サイレントに人ジゴクもジツゲンゴロウもFランクだと説明する。

 サイレント、ショッキング・ピンクの羽虫を逃がす。

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