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第6話 スケアード・スライム、空中に立ちぬ

これまでのあらすじ

サイレントとアリア、幻覚の中に本物の魔物がいるのではないかと疑うが、本物はいない。

 サイレント、攻撃を避けた結果、空中に立つ。







 ボクは空中に立ったまま下をのぞき込む。

 スケアード・スライム達がまるでゴミのようだ。


「ふー、なんとか体液まみれは避けられたね」

「そうデスね。ありがとうございますデス」


 アリアはお姫様抱っこされながら優雅にお礼を言って来た。


「いいえ、どういたしまして。ところで、攻撃のカラクリは分かった?」

 ボクに抱えられている間も、酸攻撃をじっと見ていたアリアにボクは尋ねる。

「酸攻撃は本物だということは間違いないデス」


「酸攻撃が本物だということは、近くにスケアード・スライムが隠れていたってこと?」

「その可能性もないデス。師匠がジャンプしてくれたので、上から見ていたデスが、本物はいなかったデス」


「ん? つまりは、幻覚のスケアード・スライムの攻撃だけが本物だったってこと?」

「そういうことデス」


「スケアード・スライムは幻覚だけど、その幻覚の攻撃は本物って、いったいこれはどういうことなの?」

 頭の悪いボクにはさっぱり分からない。


「分からないデス」

 アリアもお手上げのようだ。


「でも、それを解明しないと、倒せないよね?」

「そうデスね」

 アリアはこくりと肯く。


「それなら、考えよう。ここなら、そう簡単に登ってこられないでしょう……って、ええ!! スケアード・スライム!!」

 ボクの目の前にスケアード・スライム達があらわれた。

 空を飛んでいるのか、ボクらを囲み始める。


「幻覚なので、空中だろうが、海中だろうが、どこにでも出てこれるデス」

「そっか、そうだよね」


 スケアード・スライム達は、雪だるまのようになり始めた。

 また、酸攻撃をしてくる気だ。

 どうやら頭を回転させる暇も与えてくれないらしい。


 まずは、スケアード・スライムから距離をとらないといけないぞ。

 周りの木に跳び移るために、ボクは周囲を見回した。


「跳び移れそうな木がない」

 ボク達は森の中にいたのだから、木がないなんてことはないはずだ。


「人ジゴクの幻覚で、木が消されたデス」

 おのれ、人ジゴク!!


「それなら、下だ」

 ボクは地面に着地をしようと下を見た。


「うわっ、ものすごい大量のスケアード・スライムがいる!!」

 地面には足の踏み場もないほどのスケアード・スライムで埋め尽くされていた。


「人ジゴクの幻覚で、大量にスケアード・スライムを召喚したデス」

 おのれ、人ジゴク!!

 ボク達の逃げ場を失くす気だな!!


「確認なんだけどさ、アリア。攻撃すれば、スケアード・スライムは消えるんだよね?」

「一時的には消えるデスね」


「それなら、もう一回、目の前にいるスケアード・スライム達を全てなぎ倒せばいいよね?」

「師匠が何匹かのスケアード・スライムを倒している間に、残ったスケアード・スライムが酸攻撃を仕掛けてくるはずデス」


「それなら、どうするの?」

 ボクの周りに浮いているスケアード・スライムが今にも酸攻撃をしようとしていると分かったボクは、とっさにアリアをお姫様抱っこして空へとジャンプしてしまった。


「師匠」

「何、アリア? 今、地面に落下する前に、この後、どうすればいいか考えているんだけど」


「師匠、アリアの大鎌を渡すので、大鎌の上に乗って、空中でジャンプをして、幻覚で消されている木々にぶつからない高さで、スケアード・スライムのいない方向に一直線に移動してくださいデス」

「でも、一直線に跳んだとしても、幻覚で方向を狂わされるんじゃない?」


「いくら幻覚でも、一直線に跳べば、方向が狂うということはないはずデス。運が良ければ、人ジゴクの幻覚領域から抜けられるかもしれないデス」

「なるほど、分かったよ」


 ボクはアリアから大鎌を受け取ると、鎌の刃の部分を足場にして、空中で思い切りジャンプした後、着地をする。


「おお、本当に人ジゴクの幻覚領域から抜け出せた。スケアード・スライムが一匹もいない」

「いいえ、師匠、人ジゴクの領域からは抜け出せていないみたいデス」


「どうしてそう言い切れるのさ?」

「木がないからデス」


「あ、本当だ。森の中だというのに、木がない」

「ここもすぐにスケアード・スライムの幻覚が見えてくるはずデス。もしそうなれば、大鎌がないので、次は逃げられないかもしれないデス」


「よし、すぐに作戦会議だ……アリア、何か良い作戦ある?」

 作戦らしい作戦は浮かんでこないので、アリアに話を振る。



「師匠、もしかしたら、アリア、人ジゴクの攻撃方法が分かったかもしれないデス」

「本当に?」


「はいデス。結論から言うと、人ジゴクだけの仕業じゃないということデスね」

「どういうこと?」


「スケアード・スライムの攻撃はジツゲンゴロウの仕業デス」

「ジツゲンゴロウ?」


「師匠、ジツゲンゴロウを知らないデスか?」

 アリアはびっくりして尋ねてきた。


「知ってはいるよ、いるんだけど、ド忘れしちゃって。ほら、ボクたくさんの魔物と戦っているからさ」

 本当は全然知らないんだけどね。


「そうだったんデスね。それなら、僭越ながら、アリアが説明させていただくデス」

「よろしく頼むよ」


「ジツゲンゴロウは、ゲンゴロウの突然変異で、幻覚を本物にする魔物デス」

「なるほど、だから、スケアード・スライムの攻撃が本物になったのか!!」


「ちょっと待って、アリア。それなら、どうしてスケアード・スライムは実体じゃないの?」

「きっと、あえて魔物は幻覚のままにして、攻撃だけを本物にしたんデス。そうすれば、アリア達は混乱するデスから」


「そういうことか」

「そうデス。厄介な魔物コンボデス」


「魔物コンボ?」

 またもや聞いたことない言葉だ。


「師匠は冒険者デスが、もしかして、魔物コンボって言わないデスか?」

 アリアは驚きながらボクに聞いて来た。


 もしかして、冒険者なら知っていて当然の専門用語なのだろうか?

 まずい、このままだと、冒険者なのに何も知らないバカだと思われる。


「もちろん、知ってるよ。魔物コンボでしょ? うん、知ってる、知ってる」

 ボクはウソをつく。


「そうデスよね、他の種族の魔物で協力して共闘する魔物コンボは、知ってるデスよね」

 アリアはほっと胸をなでおろした。


「うん、知ってるよ、他の種族の魔物が協力して共闘する魔物コンボ……って、協力するだって!?」

 ボクは大声をあげてしまった。

 他の種族の魔物を一方的に利用するのは聞いたことあるけど、協力するなんて、聞いたことないよ。


忙しい人のためのまとめ話

 幻覚のスケアード・スライムが空中に浮いて攻撃してくる。

 アリア、幻覚のスケアード・スライムの攻撃が本物なのは、ジツゲンゴロウの仕業と推測する。

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