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第5話 サイレント、空中に立ちぬ

これまでのあらすじ

 サイレント、スケアード・スライムの酸攻撃を避けない。

 サイレント、スケアード・スライムの酸攻撃でダメージを受ける。





「ねえ、アリア、もしかしてだけど、目の前にいるスケアード・スライムは幻覚じゃなくて実在しているんじゃないの?」

 人ジゴクの幻覚じゃないんだ、きっと。


「それはないはずデス」

「なんでそう言い切れるのさ?」


「見ててください、師匠!」

 アリアは目の前にいるスケアード・スライムを大鎌で叩ききる。


「スケアード・スライムが消えた」

「そうデス。体液が出るわけでもなく、素材もドロップせずに、消えたデス。これは間違いなく幻覚デス!!」


「そうか、幻覚か……でも、痛かったよ。髪も溶けたんだよ!!」

 ボクは酸攻撃されたところをみせつける。


「髪が溶けたということは、幻覚じゃないデス。もしも幻覚なら痛みは伴わないはずデスから」

「そうか、痛いってことは、幻覚じゃないのか……って、幻覚じゃないんかいっ!! どっちなんだよ!!」


「もしかして……いや、その可能性は低いはずデス」

 アリアは何か言い出しそうになった後、かぶりをふった。

「何か可能性があるなら言ってみて」


「もしかしたらデスが、幻覚の中に、本物が混じっているのではないデスか?」

「人ジゴクとスケアード・スライムが共闘しているということ? いや、それはないでしょ」

 魔物同士が共闘するなんて聞いたことない。


「共闘するというよりは、人ジゴクが野生のスケアード・スライムを一方的に利用していると考えたほうがいいかもしれないデス」

「確かに、利用しているなら、その可能性もあるね」

 共闘はなくても、利用するならあり得そうだ。


「でも、アリアの仮説が正しいかどうか確認のしようがないデス」

「あるよ、確認する方法。全てのスケアード・スライムを倒せばいいんだ!!」

 ボクはアリアを地面におろして、両手にダガーを持つと、周りにいたスケアード・スライムにきりかかった。


 …………

 ……


「はぁ、はぁ、アリア、本物はいないみたいだよ」

 目に見える範囲でスケアード・スライムに斬ったが、一匹として手ごたえがなかった。


「そうみたいデスね」

 アリアはこくりとうなずく。


「本物がいないにも関わらず、どうやって酸攻撃をしてきたのさ?」

「分からないデス」

 周囲からガサガサと音が聞こえ始めたので、ボクとアリアは背中越しになって周囲を警戒した。


「もしかしたら、スケアード・スライムを幻覚で木とか草とかにしているんじゃない?」

 本物のスケアード・スライムをそのままにしておく必要はない。

 幻覚で無生物に変えればいいだけだ。


「その可能性はないデス」

 背中越しにアリアは言い切った。


「どうしてさ?」

「人ジゴクの幻覚は石や木や何もない空間など、基本的に動かないものに有効なんデス。魔物や人間などの動いているものを幻覚で他の物にみせることはできないデス」


「そうなの?」

「そうデス。もしも、生き物にも幻覚をみせられるのであれば、最初からアリアをスケアード・スライムにみせれば、師匠はアリアを襲うはずデス」


「あ、それもそうか」


 アリアが魔物に見えていたら、ボクは間違いなく、魔物に見えるアリアと戦って同士討ちさせるはずだ。


 それをしていないということは、確かに、生き物に幻覚をかけることはできないということだろう。


「分かった。スケアード・スライムは、ボク達の近くに隠れて身をひそめていて、幻覚に合わせて酸攻撃だけをしたんだ!! そうすれば、ボクの髪が溶けたのもうなずける」

「さすが師匠デス。その可能性は高いデス」

 珍しく褒められたぞ。


「……ということで、師匠、もう一回攻撃を受けてくださいデス」

「よし、分かった……って、嫌だよ!! 何でそんなことをしなければならないんだよ」


「アリアには一度攻撃を見れば、コピーできる特殊な眼があるので、師匠が攻撃を受けるところをしっかりと見るデス」

「そうか、アリアの眼があれば、どこから攻撃したかが分かるんだね?」


「アリアの眼は相手の技をコピーするだけなので、どこから攻撃したかは分からないデス」


 分からないんかいっ!!

 ボクは心の中でツッコむ。


「でも、次の攻撃で分かるかもしれないデス!! ……多分」

「攻撃を受けても、結局分かりませんでした……ってなるフラグだよね?」


「分かるデス!! ……おそらく」

「『おそらく』って、さっきは『多分』だったよね? だんだん自信がなくなってるよね?」


「師匠、アリアを信じるデス。アリアが攻撃の正体を解明するデス……きっと」

「語尾が『きっと』になってる!! 全然信用できないんだけど!!」


「でも、幻覚のスケアード・スライムがどうやって攻撃しているかを解き明かさないと、こちらも反撃できないデス」

「う、それはそうかもしれないけど、でも、あの攻撃を食らうのは嫌だよ」


「師匠ならノーダメージデス」

「違うよね。さっきの攻撃で、ボクの髪の毛は間違いなく溶けていたよね?」


「その痛みさえも幻覚かもしれないデス」

「そっか、あの痛みは幻覚か……って、そんなわけないじゃない!! 間違いなく本物の痛みだったよ」


 ボク達が会話していると、四方八方に囲んだスケアード・スライムがにじり寄ってきて、また雪だるまみたいな形になる。


「師匠、一斉攻撃が来るデス」

「そうだね、うまくかわそう」


「四方八方からくる酸攻撃をかわしきれるデスかね?」

「大丈夫」


 ボクがこたえると、周りは静寂に包まれた。

 ヒューっと風が吹き、1枚の葉っぱがひらひらと落ちていき、地面についた瞬間、スケアード・スライムが酸攻撃を噴出する。


 ボクは背中越しにいたアリアをお姫様抱っこで抱えてから、思い切りジャンプをして、木の枝に飛び乗ろうとした。

 今にも着地しようとした瞬間、木の枝が消えてしまう。


「え? 枝が消えた!? このままだと、地面に落ちちゃう!!」

「師匠、落ち着いて、そのままでいてください。幻覚で木を消しただけデス。実際にはそこに木はあるはずデス」


「え? あ、そうなの?」

 ボクはアリアに言われるまま、そこに立ち続ける。


 確かに、脚の裏には、木に立っている感触が伝わった。

 おおっ、ボク、空中に立っているぞ。


忙しい人のためのまとめ話

 サイレントとアリア、幻覚の中に本物の魔物がいるのではないかと疑うが、本物はいない。

 サイレント、攻撃を避けた結果、空中に立つ。

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