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第54話 副村長、村人全員を集める

前回のあらすじ


  サイレント、棺に小さな穴があいていることに気づく。

  アリア、人狼がどうやって姿を消したか推理する。




 

「人狼は、『パーフェクト・コピー』を使って、以前コピーしていたスケアード・スライムになって、棺の中から這い出たんデス!!」


「「「「なんだってー!!」」」」

 その場にいた全員が叫ぶ。


「ちょっと待つのですな。村の中にスライムがいれば、魔物察知のアビリティを持つ村人がすぐに気付きますな」


「そうだよ、アリア。小さい村とはいえ、警備兵がいるんだから、誰かが気付くよ」

 ボクは副村長の味方をせざるを得なかった。


「師匠、スケアード・スライムには気配がないデス」

 あ、そうだった。

 すっかり忘れていた。


「そうですよ、副村長。スケアード・スライムには気配がないんですよ」

 ボクは手のひらを返し、アリアの味方をせざるを得なかった。

 バカと思われないために。


「気配がない魔物なんかいるのですかな?」

「二人とも、嘘はついてなさそうですわ」

 副村長の懐疑的な質問に助け舟を出してくれる嘘発見調査官。


 さすが、できる女は違うね。

 モテないけど。


「嘘発見調査官が言うのであれば、きっと気配がない魔物もいるのはのみこみますな。ただ、こんな小さな隙間からスライムは抜け出すことはできるのですかな? にわかには信じられませんな」


「それは、余裕だよ。だって、ほんのわずかな隙間があれば、スライムは行き来できるんだから。そうでしょ? 嘘発見調査官のお姉さん」


「その通りですわ」

 嘘発見調査官は自分の使役するスライムを胸元から出す。


「これは納得するほかなさそうですな」


 言いながら、嘘発見調査官の胸元をまじまじと見る副村長。


「ですが、棺が軽くなれば、さすがにムーとジュンは気づくのではないですかな?」

 副村長は嘘発見調査官の胸元を見たまま訊いてくる。


 おい、いい加減、見過ぎだろ、副村長!!


「そういえば、棺を持った時に、だんだん軽くなっているなと思っていたんだよ」「うん、思っていたんだね」


「何でそれを言わなかったんですかな?」

 やっと副村長は胸元からムーとジュンへと目線を移した。


「勘違いかと思ったんだよ」「勘違いだと思ったんだね」


「どうやら、アリアの推理で間違いないようデス。出棺で移動している時、スケアード・スライムとなった人狼はひも状になり、少しずつこの穴から出て行き、そこら中に自生しているカリン糖の植物の陰に身を隠して、みんなの目の前から姿を消したのデス」


「なるほど」

 そういうことだったのか。


「それで、人狼は今誰に化けているんですかな?」

「それは……」


「「「「それは?」」」」

 その場に居た全員が固唾を飲んで見守る。



「分からないデス」

 全員ががっくりと肩を落とす。


「分からないとはどういうことですかな? 今日中に人狼を特定しなければどうなるか分かっているのですかな?」

 口だけ笑う副村長。


「落ち着くデス、副村長。誰が人狼かは分からないデスが、人狼を特定する方法があるデス」


「それはどういう方法ですかな?」

「それは、生きている村長を探すことデス」


「そうか!! アリアの推理が正しければ、死んだはずの村長は生きているはずだ!!」

「そうデス。生きているはずの村長を捕まえて、事情を聞けばいいだけデス」


「村長を捕まえる? それは村長狩りということですかな?」

「そう言えなくはないデス」


「素晴らしいですな。まさか、村長狩りができるとは思いませんでしたな」

 副村長はさらに口の端をあげた。

 ニコニコしすぎていて、なんだか怖いくらいだ。


「ムーにジュン、村民全員をここに集めるのですな」

「分かったんだよ」「分かったんだね」


 ムーとジュンは持っていたほら貝を吹きながら、村の中を走り回る。


 ぶぉおー。

 村全体に響き渡るほら貝の音。


「墓場へ行くんだよ」「墓場へ行くんだね」

 そして、ムーとジュンの大声。


「ほら貝ということは、緊急事態だ!」「墓場だ! 墓場で何かがあるぞ!」「みんな、心は落ち着かせたままで、急いで集まれ」

 ムーとジュンの招集で速やかに集まってくる村人たち。


「すごい。全然時間が経っていないのに、みんなすぐに集まってきた」

 まるで訓練された兵士みたいだ。


「それは、村長がいつも突然の思い付きで、ほら貝を使って、みんなをすぐに招集していたからですな」

「なるほど、みんな慣れているんデスね」


「そうですな」

「お、副村長、演説するなら台座が必要じゃないかい?」

「ありがたく使わせてもらいますな」


「気が利く人ですね」

 わざわざ、台座を持ってくるなんて。


 緊急招集だというのに。


「村長がいつも突然の思い付きで、ほら貝を使って、みんなをすぐに招集していたからですな」


「これなら、実際の緊急招集でも混乱しなさそうだね」

「本当デス。もしかして、村長は緊急時にみんなが慌てないように、あえて、緊急招集を頻繁にしていたのかもしれないデスね」


「ははは、あのノリだけで動く村長がそんなことまで考えているわけありませんな」


「そうだよね、さすがにそこまで考えていないよね」


「そうですな。村長が生きていたころは、毎日のように緊急招集していたから、本当に緊急かどうかわかりませんでしたからな」


 うん、頻繁にしすぎだよ、村長。

 どちらかというと、オオカミ少年の類だよ、村長。


 村長は、あえて緊急招集をしていたんじゃないね。

 本当に突然の思い付きだったんだね。

 まったく迷惑な話だね。


「村長、ほぼ全員の村人が集まったんだよ」「村長、ほぼ全員の村人が集まったんだね」

「分かりましたな」

 ボク達が話している間に、全員が集まったので、副村長は村人が用意してくれた台座へとあがる。


「みなさん、ご静粛にお願いしますな」


 副村長が台座に上がった瞬間、ざわついていた村人全員が静かになったので、副村長の声はうるさいくらいに墓場に響き渡った。


 いや、村人たち、まじで訓練された兵士か!


「みなさんに集まってもらったのは他ではありません。みなさんにはどこかに隠れている村長を見つけて欲しいのですな」


「え? 村長は魔物に襲われて亡くなったはずじゃないの?」「そうだよ、亡くなったよ。葬儀もしたべ」「死体を見つけろってこと?」


「みなさん、落ち着いてきいてください。村長は今もまだ、生きているのですな」


「「「何だってー!?」」」


 村人全員が声をあげて驚いた。


忙しい人のためのまとめ話


 アリア、人狼がスケアード・スライムに化けていたと言い当てる。

 副村長、村人全員を墓場に集める。




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