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第51話 アリア、みんなの前で推理をする

前回のあらすじ


 サイレント、アリアにヒントを言う。

 アリア、人狼を特定する。





「みなさんに墓場に集まっていただいたのはほかでもありませんデス。今回の事件の真相を話すためデス」


「誰が村長とカマテを殺したんたのですかな?」「気になるんだよ」「気になるんだね」「本当に分かっているのだわ?」

 ざわつく墓場。


「まずは、落ち着くデス。これから今回の事件の真相を……」

 うん、これで煮られも焼かれもしない。

 一安心というやつだ。


「真相を……」

 アリアは『真相を……』の後の言葉が続かない。


「真相を話さないデス」

 えー!!


 何で!?

 全然安心できないじゃないか!!


「まさか、我々を集めておいて、まだ真相は解明されてない……とか言いだすんじゃないのですかな?」「そうなのですか?」「それなら帰らせてもらうのよ」


「そんなことないですよ。皆さん、落ち着いてください」

 ボクは皆をなだめる。


「どうしたの、アリア?」

 ボクは小声でアリアに確認した。


「師匠、落ち着いて考えてみたら、アリアには師匠の手柄を横取りなんかできないデス」

「え?」

「師匠には誰が人狼か分かってるんデスから、師匠から話すべきデス」

「ええっ!?」


 無理だよ、アリア。

 だって、ボク、真相にたどり着いていないもの。


「アリアが真相にたどり着けたんだから、アリアが説明するべきだよ」

「でも、師匠が最初に気づいたんデスよ?」


「いいかい、アリア。今一番大切なことは真相にたどり着くことなんだ。手柄がボクのものとか、アリアのものとか、そういうことは、ささいなことなんだよ」

 お願いだからアリア、真相を語ってくれ!!


「なるほど……それなら、師匠が真相を言っても良いデスよね?」

「それはそうなんだけど……」


 あ、これまずいパターンだ。

 はやく何とかしないといけないやつだ。


「……ほら、みんなにはアリアが真相を語るってみんなに伝えているんだから、ボクが言ったらおかしなことになっちゃうでしょ?」

「でも……」


「約束は守らないといけないんだよ、アリア!」

「そうデスよね。約束は守らないといけないデスよね」

 なぜだか、ボクの腕を見て納得するアリア。


「そうだよ、アリア」

「すみませんデス。これから真相を話すデス」


「おおっ、やはり真相にたどりついていたのですな」

「まずは、村長の事件とカマテの事件は同一犯で犯人は人狼という魔物だということを先に言っておくデス」


「聞いたことない魔物だね」「聞いたことない魔物だよ」


「それもそのはずデス。人狼は触った相手に化けることのできる、Sランクの魔物デスから」


「「「「「なんだって!!」」」」」

 その場にいた全員が驚愕の声をあげる。


「どういうことですかな、サイレントさん。そんな話していなかったですな」

「Sランクですよ? 大したことないじゃないですか」


「大した事ありますな。これは村を揺るがす一大事ですな」

「大丈夫だよ。ボクもアリアもいるんだし。なんだったら、ムーとジュンでも倒せるよ」

 スライムより弱いんだから。


「にわかに信じられませんな」

「大丈夫、ボク達を信じて」


「そうデス、師匠がいれば、Sランクの魔物なんか秒殺デス」

「そんな根拠のない話、信じられるわけありませんな」


「ウソではないのだわ」

 嘘発見調査官が副村長に伝える。


「それなら信じるしかないですな。それで、人狼は誰なんですかな?」


「それは順を追って説明するデス。最初の村長の事件からおさらいをするデス。埋葬された村長が、その日の夜、副村長の家で目撃されているデス。このことに間違いはないデスね?」


「間違いないですな」


「でも、ここに間違いがあるんデス」

「間違いとは?」


「村長はまだ死んでいないんデス」

「「「「「は?」」」」」

 その場に居た全員がきょとんとする。


「いやいや、それはありませんな。あれは間違いなく村長の死体でしたな」

 口火を切ったのは副村長だった。


「確かに、副村長さんが見たのは、村長の死体デス」

「それだと、矛盾していますな」


 そうだよ、アリア。

 村長が死体で発見されているのに、村長は生きているなんて矛盾しているじゃないか。


「矛盾はしていないんデス。なぜなら、人狼は村長に化けたあとに、自殺をしていたんデスから!!」

「「「「なんだって!?」」」」


「人狼が村長に成り代わり、自殺したとしますな。そしたら、事件はそれでおしまいですな。カマテは殺されたりしなかったはずですな」


「いいえ、人狼は復活したのデス」

「人狼はどうやって復活したのですかな?」


「人狼は殺されても、24時間以内に恐怖を食べることができれば、蘇ることが可能なのデス」


「そんな能力があるなんて聞いていませんな」

 副村長はボクを睨んできた。


「そういえば、そんな能力があるって言ってたな」

 ボクはポンと手をうつ。


「ちょっと、待って欲しいですな。それじゃあ、村長を埋葬した後、夜中に我々が見た村長は……」

「それは本物の村長さんだったんデス」


「「「「「「なんだって! 本物の村長は生きてるだって!!」」」」」」

 その場に居た全員が驚きの声をあげた。


「そう考えるとつじつまがあうデス。副村長さんが村長を追いかけている時の罠が稚拙だったのは、本物の村長さんがノリだけで作った罠だったからデス。もしも本物の人狼なら、絶対に捕まらないように、もっと高度な罠をしかけるはずデス」


「確かに、村長が罠をしかけるなら、ノリで作っているから、クオリティーは低そうですな。しかし、疑問が残りますな」


「何デスか?」

「本物の村長が目撃されたすぐ後に、人狼が復活したところですな。土の中に時計が入っていたならわかりますが、そんなものはいれていませんでしたな。これだとタイミングが良すぎはしませんかな?」


 確かにその通りだ。

 タイミングを合わせるのは難しそうだ。


「時計なんか必要ないデス。タイミングは合わせなくても良かったんデスから」

「合わせなくても良かったとは、どういうことですかな?」


「昨夜、村長さんを見た村人は全員、恐怖に震えたはずデス」

「うむ、その通りですな。なんせ、死人が徘徊しているのですからな」


「その恐怖を糧にして、人狼は蘇ったのデス」

「つまり、人狼は時間を合わせて復活したのではなく、本物の村長が蘇ったと勘違いして怯えた村人のエネルギーを吸って、復活したということですかな?」


「その通りデス」

 アリアはこくりとうなずいた。


「確かに、この方法なら、示し合わすことなく、みんなの前に現れたタイミングで復活できますな」


「そして、恐怖を糧に蘇った人狼が、力ずくで、かぶさっていた土をどけたのデス」


「なるほど、それなら、墓守であるムーとジュンが見張っていたにも関わらず、気づけなかったのもうなずけますな」

「そうデス。そもそも、第三者が墓荒らしをしたわけではないんデスから」

 なんてこった。

 村長の墓を掘り起こしたのは、村長に化けていた人狼本人だったのか……


「その後、復活した人狼はムーとジュンから見事に逃げたということですかな?」

「その通りデス」


「村長の件は納得しました。それでは、カマテの事件はどうなのですかな?」

「それは村長の時と同じデス。人狼はカマテを誘拐した後、カマテは死んだと思い込ませるために、人狼はカマテに変身してから、ナイフを自分のお腹に刺したんデス」


「「「「「「なんだって」」」」」」


「何ということだ……ということは、我々は2度も死体に化けた人狼を土に埋めたということですかな?」


「そういうことデス。人狼は今、宿屋の少年に化けて、土の下の棺の中にいるはずデス!! さあ、おとなしくお縄をちょうだいするデス!!」


 アリアはびしっと死体の上の土を指さした。

 もちろん、犯人であり、カマテに変身した人狼でもある死体は出てこない。

 それどころか、あたりは、しーんと静まり返った。


「アリア、アリアの声がカマテの死体に届いてないんじゃないかな?」

 人狼は土の中にいるからね。


忙しい人のためのまとめ話

 

 アリア、人狼は村長とカマテに化けて、自殺していたと推理を披露する。

 人狼は今、カマテの死体に化けているはずだと言う。



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