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第50話 サイレント、人狼を特定しようとしているアリアにヒントを言う!?

前回のあらすじ


 サイレント、食い逃げをしたと言い張る村人から逃げ切る。

 サイレント、格好つけようとしたら失敗して、アリアを疑うことになる。





 

「アリアは誰が人狼だと思う?」

 ボクは警戒をしながらアリアに尋ねる。


「うーん、誰デスかね……分からないデス。デスが、ずっと二人で行動していると言っていたムーとジュンは外してもよさそうデス」


 そりゃあそうだ。

 ムーとジュンはボクに直接触っていないしね。


「容疑者全員が犯人って可能性はあるかな?」

「人狼は1人なので、全員はないと思うデス」


「いやいや、もしかしたら時間ごとに1人ずつ、他の人に代わっているかもしれないよ。朝は宿屋のおかみさんに化けて、昼は嘘発見調査官に化けて、夜はネークラに化けて……とかさ」

 そもそもパーフェクト・コピーできるのは一人だけじゃないんだから、色々な人に化ければいいだけの話だ。


「色々な人に化けるのはリスクが高すぎるデス」

「リスクって、何のリスク?」


「どこかで人狼がどこかで本人にあうかもしれないというリスクデス」

「本人にあうと何がまずいのさ?」


「もしも、本人が人狼に合えば、同じ人が二人いることになるデス。そんなことになったら、村中大騒ぎデス。デスが、実際にそんなことになってないデス」

「そっか。全員に化けたという可能性はないね」


「そうデスね。賢い人狼が村の中で無闇にパーフェクトコピーを使うことは考えづらいデス」


「それならさ、誰かと共犯になってる可能性はないかな?」

「共犯デスか?」


「そう、共犯。人狼が言葉巧みに村人をそそのかすか、脅すかして、人間を自分側につかせた可能性もあるんじゃないかな……って、ボクは思うんだ」


「ああ、なるほど。村の中に協力者がいるかもしれないってことデスね……その考えはなかったデス」

「アリア、あらゆる観点からみないといけないんだよ。そう、根底をひっくり返すくらいの発想をしないといけないんだ」

 ボクは先輩面をしてアリアにそれっぽいアドバイスをする。


「師匠、もしかして、人狼が誰か分かってるデスか?」

 うん、分かってないよ。


 でも、そのまま『分かってないよ』……なんて返答したらバカだと思われるかもしれない。

 それだけはなんとか阻止しないといけないな。


「なんとなく……ね」

 口から出てきたのは、出まかせだった。

 また、やっっちゃった、ボク。

 バカだと思われないためとはいえ、なんで、ボクはいつもこうなんだろう……


「誰デスか?」

「えっとね、ムーとジュンかな……」


「ムーとジュンは人狼の可能性がないとさっき言ったはずデスが、もしかして、何かあるんデスか?」


 しまった。

 焦り過ぎて、一番人狼から遠い人を言っちゃった。


 自分でも犯人じゃないと思っていたのに、言っちゃった。

 ここはうまくごまかさないといけないぞ。


「あ、いや、ムーとジュンが人狼とかじゃなくて、ムーとジュンの最強の矛と最強の盾のように、矛盾しそうなことでも、よくよく考えると矛盾しないことってあるじゃない? それがヒントだよ」


『それがヒントだよ』って、何だよ。

 自分で言っていて意味が分からないよ。

 我ながら苦し紛れだな。


「ヒントを授けてくださったということはまずは考えてみろ……ということデスか?」

「その通りさ、アリア」

 ボクは食い気味で返事をした。


「さすが師匠デス。アリアに手柄を譲るためにヒントまで授けてくださるとは……期待に応えてみせるデス」

「うん、頑張ってね」

 本当はヒントですらないけどね。


「うーん、共犯で、矛盾しないようにデスか……」

 まずい、共犯かどうかさえもわからないのに……

 もしも単独犯だったなら、アリアを混乱させるだけじゃないか……


「あ、アリア、共犯じゃないかもしれないよ。ほら、カマテの死体も、ナイフらしき刃物が刺さっていただけだから、単独でも犯行可能だったしね」

 ボクは静かに切り出す。


「ちょっと待ってくださいデス、師匠。カマテの死体には刃物が刺さっていたんデスか? 人狼の爪や牙の痕じゃなくて」

「え? あ、うん、そうだよ」

 カマテの服からみるに、獣に襲われたような形跡はなかった。


「それなら、カマテは自決した可能性もあるということデスか?」

「刃物はお腹に刺さっていたから、自分で刺すことはできるけど、でも、カマテは狼姿の人狼に連れ去られたんだから、人狼に襲われたんじゃないの?」


「カマテは師匠の護衛の申し出を断って、最初から人狼にさらわれるつもりだったデス。可能性の一つとして、自決した可能性も考慮しないといけないデス」

 そんなもんなのかな……


「いやいや、でもさ、自決だったとしたら、人狼にメリットがないんじゃない?」

 ボクがアリアに訊き返す。


「……とすると……あれがこうなるデスから……あれ? でもそうなると……あれがこうなるデス。あれ? でも、そうすると……あれがこうなるデス。そうなると共犯の可能性がなくなるデスし……」

 ボクの質問には答えずに、小声で独り言をつぶやくアリア。


 どうやら、自分の世界に入り込んでいるようだ。


「アリア、共犯のことは忘れても良いんだよ」

 ボクはアリアに話しかけるが、考え事をしているアリアにボクの言葉は届かなかった。


 まずい、まずいよ、これは。


 ボクが共犯なんて適当なヒントを言ったばっかりに、アリアが思考の迷宮にさまよいこんでしまっちゃたじゃないか。


 何をやってるんだ、ボクは。

 こんなんじゃ、一生人狼を特定できないよ……

 あーあ、これから煮るか焼かれるかするのか、ボク。

 くだらない人生だったな。


「おそらくデスが、人狼が今どこにいるか分かったデス!!」

「そりゃあそうだよ。こんなに少ない手掛かりで、人狼が今どこにいるかなんて分かるわけない……って、分かったの?」


「そうデス。分かったデス」

「すごいじゃないか、アリア」


「師匠のヒントがあったからデス。さすが師匠、アリアに手柄を渡すためにわざとヒントを教えてくれていたんデスね?」

「まあね……」

 本当はボクにはさっぱり分からなかったから、適当なことを言っただけだけどね。


「アリア、人狼を特定するので、さっき師匠が怪しいと言っていた方を墓場に集めてくださいデス」

「うん、分かったよ」

 ボクは副村長に事情を説明して、全員を墓場に集めた。


忙しい人のためのまとめ話

 

 サイレント、アリアにヒントを言う。

 アリア、人狼を特定する。

 




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