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第49話 サイレント、人狼候補を絞り込む!?

前回のあらすじ


 サイレント、カマテの埋葬を手伝おうとするが断られる。

 サイレント、食い逃げしたと疑われる。




 

「はぁはぁ、何とかまいたみたいだね」

 人の気配がないのを確認したあと、ボクは脚を止めた。


「そうデスね。はぁはぁ」

 アリアもだいぶ息切れをしているみたいだ。


「でも、なんであの人たち、ボクに無罪の罪をなすりつけようとしたんだろう……」

 ボク、この村で食い逃げなんかしたことないのに。


「師匠、もしかしたら、人狼の仕業かもしれないデス」

 人狼の仕業?


「いやいやボク、人狼を見たことはあるけれど、触ったことはないよ」

「パーフェクト・コピーで変身した人狼に触ったんデス」

 パーフェクトコピーで変身した人狼?


「そういうことか。変身して村に潜入していた人狼がボクに触れたんだ、きっと」

「師匠、この村に入って、触った人を思い出すデス」


「えっとね……」

 うん、全然思い出せない。


「確か、嘘発見調査官は師匠のほっぺをつねっていたデス。あとは、教祖のネークラデス。あの女、師匠の手を握ってきたデス。それに、憎き客引きの女。そして極めつけは、師匠に刃を向けたムーとジュンデス」

 親の仇みたいに次々と名前を出してくるアリア。


 いや、怖いよ。

 ボクは誰一人として全然思い出せなかったのに。

 どれだけボクのことを見ていたのさ。


 ……というか、ムーとジュンに至っては、冤罪じゃないかな?

 ダガーで攻撃をいなしただけで、直接肌には触れていないはずだしね。


「そ……そうだね」

 もちろん、ボクの心の声を伝えるわけにもいかないので、ボクはなんとかうなずいた。


「他にも師匠が一人行動をしている時に触った人間がいるかもしれないデス」

「あ、そういえば、おかみさんが倒れた時、おかみさんにも触ったっけ」

 お姫様だっこしたんだ。


「アリアの知らないところで女の人に触るとは、師匠、相当の女たらしデスね」

「いやいや、人狼の香りで眠らされた人を親切で介抱しただけだよ。それのどこが女たらしなのさ?」


「師匠に触った人、全員が女性デスから」

「たまたまだよ。たまたま」


「師匠、一番怪しいのは誰デスか?」

 全員怪しいです……と心の中で思うのだが、それを伝えたら、無能のバカだとバレてしまう。

 それだけは阻止しなければ。


 何とか、ボクが賢いアピールをしなければ。


「おいおいアリア、一番怪しいのは誰かって? それを決める前に、もう一人怪しい人物を忘れているよ」

 ボクは推理をするかのようにあごに手を当ててポーズをとって、考えなしでそれっぽいことを言う。


「誰デスか?」

 固唾を飲み、ボクの言葉を待つアリア。

 今更、バカと思われないために格好つけたなんてこと言えない。


「それはね、アリア……」

 どうしよう、言葉に詰まってしまった。


「なるほど、アリアデスね?」

「え? どういうこと?」

 ボクは聞き返してしまった。


「師匠は、アリアが人狼じゃないかと疑っているんデスよね?」

「その通りさ、アリア」


「さすが師匠。確かにアリアも師匠に触っているデスからね」

「まあね」


 ……と口では言ってはいるものの、全身冷や汗ダラダラで全然思考が追い付かない。


 つまり、アリアが人狼の可能性があるってこと?


 ……いや、待て待て。

 アリアとはこの村に入る前からずっと一緒に行動していたじゃないか。


 そうだよ、カマテと人狼が居るところをアリアと一緒に見たんだから、アリアは人狼のはずがないよ。

 うん、その後もずっと一緒だったし、人狼と入れ替わる機会なんてあるわけが……って、あるじゃないか!!


 カマテの無残な死体があった時!!

 カマテの無残な死体を見せたくなかったとはいえ、なんでボク、アリアと離れて1人にしてしまったんだろう……


 ものすごく後悔。


 いや、待て待て。


 それ以前に、アリアとは常に一緒というわけではなかったか……

 トイレとか、お風呂とか。


 その時に入れ替わっていたら気づけない。


 ああ、どうしよう……

 アリアが人狼の可能性も出てきた。


 よし、ここは、自然に聞いてみよう。

 そう、あくまで自然に。


 自然の力は人間の力は偉大だって、冒険者ギルドでも習ったし。

 自然に聞けば、アリアに化けた人狼が、ぽろっと本音を漏らしちゃうかもしれないしね。



「あ、あのさ、アリア」

「何デスか、師匠? 声が震えているデスが……」


 平常心、平常心。

 つとめて冷静に自然を装って、それとなく聞くんだ。


「つかぬことをうかがいますが、アリアって、人狼?」


 やっちまったー。

 ストレートに聞いてしまった。

 全然自然じゃない。

 何をやっているんだ、ボクは。


「違うデス」

「そうだよね」

 全然信用できないぞ。


「師匠、顔と言葉が一致していないデス。全然納得いっていない顔デス」

「そりゃあね」


 もしアリアが人狼だったとしても、疑われたくないなら『違うデス』の一択しかないじゃないか。

 頭の悪い『変な人狼』でもない限り、自ら正直に『そうデス、私が人狼デス』とは言わないだろう。


「この村で人狼を見分けることができる方法を知っているのは、アリアと師匠だけなんデスから師匠が油断した瞬間を狙って襲うはずデス」

「あ、それもそうか」


 もし、アリアが人狼だったら、今までの出来事を全部知っていることになる。

 人狼はできるだけはやくボクたちを殺す必要があるはずだ。


 ボクが油断した時は山ほどあった。

 ボクが油断した時点で、既に夢の中。

 あるいは、気づいたらあの世にいたなんてこともあるかもしれない。


「……って、ちょっと待ってよ。ボク、人狼の甘い香りで眠らなかったじゃないか」

「そうデスね。アリアから甘い香りはするデスか?」


「そう言って、近づいた瞬間にスキをついてボクを亡き者にする気だね?」

「そう思うのであれば、人狼の香りが効かないの師匠は、アリアと距離をとって、スキを作らなければいいだけデスよね?」

「あ、そっか」

 ボクはポンと手をうて、アリアと対局の端っこでダガーを構えた。


 ……って、ここまでさせてくれるなら、アリアを疑う必要ないじゃないか!!

 うん、アリアは人狼じゃないよ。

 絶対に。


 でも、一応、警戒はしておこう。

 何のために?

 念のために。


忙しい人のためのまとめ話

 

 サイレント、食い逃げをしたと言い張る村人から逃げ切る。

 サイレント、格好つけようとしたら失敗して、アリアを疑うことになる。




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