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第48話 サイレント、カマテの埋葬を手伝おうとする

前回のあらすじ


 サイレントとアリア、カマテの死について責任を取り合う。

 サイレント、カマテの埋葬を手伝おうとする。




 



 宿屋に到着すると、ちょうど、副村長がいた。


「この度はご愁傷様でしたな……」

 うやうやしく頭を下げる副村長。


「わざわざお越しいただき、恐縮です」

 おかみさんも深々と頭を下げた。


「既に墓守を用意しておりますな。ムー、ジュン、頼みましたな」

「僕が棺をお墓まで運ぶよ」「僕が棺をお墓まで運ぶね」

 呼ばれたムーとジュンは手際よくカマテの棺を持つ。


「お願いします」

 もう一度おかみさんは深々と頭を下げる。


「サイレントさんも副村長を呼んできていただきありがとうございました」

「えっと、実は、副村長を呼びに行ったら、既に副村長さんは宿屋に来ているということで……いわゆる、行き違いってやつですね」


「え? 副村長さんの家と、この宿屋はほぼほぼ一本道なのに、行き違ったんですか?」

 まずい。

 副村長の家が分からずに、道に迷ったとはいいだせないぞ。

 そんなことを言ったら、バカにされてしまうじゃないか。


「すみませんデス。途中でアリアを迎えに来てから副村長さんの家に行ったからデス」

 あわわ、そんなこと言ったら、


「わざわざすみません。棺を持つ人数は多い方がいいと思われたんですよね」

 おかみさんはまた頭を下げる。


「え? あ、そうなんですよ。棺を持つのは多い方がいいと思って、人数を集めようと思いましてね」

「さすが師匠デス。こうなることを見越していたんデスね」


「もちろん」

 見越していないよ。

 ただただ、バカだと思われないためにとりつくろっているだけだよ。


「さて、棺をムーとジュンだけに持たせるわけにはいかないな。ボクも手伝うよ」


「これは僕達の仕事だからやらなくていいよ」「そうそう、やらなくていいんだね」

 ムーとジュンは強く否定したが、言い出した手前引っ込みがつかない。


「いいから、いいから……って、この棺、なんか湿ってる!!」


 何かぬるっとしたものが手についた。

 返り血がどこかから漏れ出しているのだろうか……


 すぐさま右手を見るが、特になにかついているわけでもない。

 ボクは棺の下をのぞき込むが、特段何か濡れているようにはみえなかった。


 気のせいだったのかな……


「お兄さん、そのまま、棺から少し離れてくれると助かるんだよ」「お兄さん、そのまま、棺から少し離れてくれると助かるんだね」

 ムーとジュンの語尾はとても強い口調だった。


「え? でも、大変でしょ?」

「お兄さん、ありがた迷惑だよ」「お兄さん、ありがた迷惑だね」


「ホバッカ村の埋葬のしきたりも知らない方は、参加するのは遠慮してほしいですな」

 副村長までも加勢をしてきた。


「はい、すみません」

 ボクは棺から距離をとる。


 ボクが護衛をしなかったせいでカマテは亡くなったようなものだから、本当は棺を持ちたかったんだけどな……


 でも、ありがた迷惑だと言われてしまったなら仕方ない。

 せめてカマテの死体を最後まで見送ろう。


 副村長は手にしていた金属製の鐘をカーンと鳴らしながら、墓場へと向かう。


 副村長の後を宿屋のおかみさんがついて行き、棺を持ったムーとジュンはその後に続いた。


「タナトス教団に入っていないから、こんなことになるのです、はい」


 宿屋を出て、少しすると、ネークラが塩を片手にこれ見よがしに大きな声で叫ぶ。

 あれ? 後ろからついてくる信者数が多くなってないか?


「俺は入るぞ、タナトス教団に!!」「オラも入りたいべ」「私も」


 ネークラに殺到する村人たち。

 被害者が二人目で、しかもその被害者が無残に殺されているのを見てしまったら、教団に入りたくなる気持ちはわかる……分かるけど、今じゃなくてもいいじゃないか!

 息子の死を悼んでいるおかみさんの気持ちも考えろよ!!


 カーン。

 その声をかき消すかのように大きな鐘を副村長が響かせたので、辺りが静まり返った。


「それでは、これより、葬儀の議を執り行う。時間があるものは皆、私の後についてくるように」


 副村長の一声で、ネークラに群がっていた人々は、何事もなかったかのように行列へと加わった。


 墓場に着くと、ムーとジュンは手際よくスコップで穴を掘る。

 その間も副村長は一定の間隔で『カーン』と鐘を鳴らし続けた。


 穴を掘り終えると、その中に棺を入れ、スコップで土をかぶせるムーとジュン。


「これにて、葬儀の儀を終えます。皆様、ありがとうございました」

 締めくくりの言葉で、村の人たちは解散をしていく。


 カマテ、君の無念はボクが絶対に晴らすからね。


「よし、捜査を再開するか」

「そうデスね、今日中に人狼を特定しないと、アリア達は煮られるか焼かれるかしてしまうデスからね」


「そうそう、今日中に人狼を特定しないといけないからね……って、今日!?」

 ボクは大声をあげてしまう。

「そうデスよ、師匠」


「おい、みんな! いたぞ!! バカ面した男の冒険者!!」

 明らかにボク達……というより、ボクを指差して村人が集まってきた。

 全員目は三角だ。


「逃げよう、アリア」

「え? どうしてデスか?」


「いいから、逃げるんだよ、アリア」

 ボクは直感的に走り出す。

「逃げたぞ、追え!!」


「どうして、ボクを追うんですか?」

 ボクは逃げながら尋ねる。


「何をとぼけてやがる!!」「食い逃げしただろうが!!」「そうだ、そうだ、とりあえず、無銭飲食分を耳揃えて出しやがれ!!」


「師匠、アリアと別行動した時に、食い逃げしていたんデスか?」

「そんなことしてないよ。みなさん、ボクは食い逃げなんかしてないですからね」


 ボクはアリアに食い逃げを否定してから、追いかけてくる村人たちにも聞こえるように、大声で否定する。


「ふざけんな。たった今、逃げているじゃないか」

「それは皆さんがボクを追いかけるからですよ」


「追いかけなかったら捕まえられないだろうが!!」

 それもそうだ……

 って、違うから。

 ボク、食い逃げなんかしていないから。


「ボクは無実だ!!」

 絶対にボクはやっていない。


「それなら、戦うデスか?」

 アリアは大鎌を取りだした。


 そうそう、みんなに追われたから、これは戦うしかない……って、これじゃあ、カバッカ町の時と同じじゃないか。


「いや、ボク達の方が圧倒的に速いから、逃げ切ろう」

「分かったデス」


忙しい人のためのまとめ話


 サイレント、カマテの埋葬を手伝おうとするが断られる。

 サイレント、食い逃げしたと疑われる。

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