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第10話 サイレント、お姫様をバカにする

前回のあらすじ

サイレント、明後日に町で祭りがおこなわれることを知る。

サイレント、お姫様がテイマーだと知る。

「ところで、お姫様が騎士団長のテイムを失敗すると、なんで秘密がばれるの?」


「おいおい、分かるだろサイレント。おっちゃんの話をきちんと聞いてたか?」

「うん、聞いていたけど、全然分からない。だって、騎士団長をテイムしようとしただけなら、騎士団長に秘密にしておいて……ってお願いすればいいだけでしょ?」


「いいか、サイレント、騎士団長をテイムできたかどうかは問題じゃなくてだな、騎士団員達の目の前でテイムをしようとしたことが問題だったんだ」

「どこが問題なの?」


「問題だろうが!! 騎士団員の目の前でテイムをしよういとしたら、お姫様にはテイマーの適性があるってバレるだろうが」

「あっ、そっか」

 そもそも適性が無ければ、テイムできないんだから、騎士団長をテイムしようなんて考えないか。


「もちろん、王様と王妃様はお姫様のテイマーの適性を秘密にするための緘口令(かんこうれい)をしいたが、すぐに噂になっちまった。この門番を任されているおっちゃんの耳に届くくらいにな」

「もしかして、お姫様ってボクよりバカなの?」


「おい、サイレント。不敬なことを言うもんじゃないぞ」

「何でさ?」

「おっちゃんだから良かったものの、他の奴の前でそんなこと言ったら、不敬罪で牢屋送りにされるか、脅迫されて金品を要求されるぞ!!」

「あ、そっか」

 ボクは慌てて口を塞いで、きょろきょろと辺りを見回す。


「大丈夫だ、サイレント。ここはテントの中でおっちゃん以外、だれもいないから安心しろ」

「良かった」


「ああ、本当に良かったな、サイレント。おっちゃん一人だから、金貨10枚でいいぞ」

「ボクを脅迫する気満々じゃないか!!」

「おいおい、サイレント、これは脅しじゃなくて、交渉だ」

「交渉という名の脅迫じゃないか。それなら、こちらも冒険者ギルドに相談させてもらうよ」

「ははは、もちろん冗談だ、サイレント」


「冗談を言っているようには聞こえなかったんだよな」

「当然だ。お前から金貨をもらう気なんか、これっぽちしかなかったんだからな」

「あったよね、これっぽっちは金貨を脅し取る気があったよね?」


「違うぞ。サイレント。おっちゃんは軽々しく不敬なことを言ってはいけないということを伝えたかっただけなんだ。お姫様のようにみんなの前でやればすぐに噂になるってことを伝えたかっただけなんだ」

「本当かな?」


「本当だ。でもおっちゃんは言わないから、安心しろ。男と男の約束だ」

「絶対に言わないでよ、ボクがお姫様をバカにしていたこと」


「おお、まるで緘口令を出す王様と王妃のようだな。任せろ、おっちゃんは絶対に言わないから」

 何か信用ならないんだよな、サンザールのおっちゃんの言葉は。



「それにしても、お姫様はなんで騎士団長をみんなの前でテイムしようとしたんだろう」

 ボクは素朴な疑問をぶつける。


「自分は世界最強だから騎士団長もテイムできると本気で思っていたんじゃないか?」

「普通そんなこと思う?」

 お姫様だよ?


「普通じゃ思わないだろうな。だが、王族の中だけで育ったんならあり得るぞ」

「何で王族の中ならあり得るのさ?」


「王族の中っていうのは、周りはイエスマンばかりだからな。大方、そのイエスマン達が、『頭良い』だの、『天才』だの、『最強』だのと、もてはやして育ててしまったから、お姫様もその気になったんだろう」

「なるほどね」

 孤児院で育ったボクには想像もつかない世界の話だ。


「ま、結果的には、騎士団長をテイムしようとして失敗した挙句、国民のほぼ全員に知れ渡るような赤っ恥をかいたわけだがな」

「うわー、そんな赤っ恥をかいたら、ボクなら間違いなくひきこもるね」

 想像しただけでも身の毛がよだつ。


「お姫様もサイレントと同じような気持ちになって、ひきこもってくれさえいれば、おっちゃんは現在進行形でこんなに苦労してないわけだがな」

「精神もだいぶタフなんだね、お姫様」

 ひきこもらずに、お城を抜け出しているんだから、だいぶ心は強いのだろう。


「少なくとも心臓に毛が生えてるんじゃないかってくらいにタフだろうよ。なんせ、騎士団長をテイムすることを諦めたその翌日に、城を抜け出してドラゴンをテイムしようとしたらしいからな」

 ドラゴン?

 ドラゴンという魔物は聞いたことないけど、バカだと思われないために、ドラゴンについては話を触れずに、知っている体で話を進めよう。


「それは成功したの?」

「ドラゴンといえば、5本の指に入る強さの魔物だぞ! 一介のお姫様に屈服するわけないだろ!!」


「そうだよね、屈服するわけないよね。ドラゴンといえば、5本の指に入る強さのだもんね。全く何を考えているんだろう、お姫様は。あはは……」

 5本の指ってどういう意味か分からないけど、とりあえず愛想笑いをしておこう。

 これ以上バカにされたくないし。


「失敗して逆に、ドラゴンに屈服してテイムされたなんて噂もあるくらいだ」

「えー!? お姫様ドラゴンに屈服してテイムされたの?」

 お姫様がドラゴンに命令しているのではなく、お姫様がドラゴンの命令を聞いてるってこと?


「あくまで噂だ、噂! 本当にお姫様がドラゴンにテイムされていたら、国家を揺るがす一大事だろ!!」

「確かに、国家を揺るがす一大事だ!! そんなこと、この国では起こり得ないよ!!」

「今まさに、お姫様が行方不明っていう、国家を揺るがす一大事が起こっているんだけどな」


忙しい人のまとめ話

サイレント。お姫様をバカにする。

お姫様、騎士団長やドラゴンをテイムしようとする。


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