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第1話 ボクの名前はサイレント

6月10日、前書きを修正しました。

(本文は修正していません)



 俺の名前は、サイレント。


 攻撃力は剣士のように強く、防御力はガーディアンのように固い上に、素早さは風のごとく身軽に動くことができる、完全無欠のアサシンだ。


 今日も気配を消して、魔物を暗殺、暗殺!!


 おっと、いけない。

 興奮すると気が乱れて、魔物に居場所を悟られるかもしれない。


 まずは落ち着け。

 深呼吸だ、深呼吸。


 呼吸を整えながら、薄暗く湿っぽいダンジョンと自分の気配を一体化させるんだ。

 よし、気配は完全に消した。


 気配を消したところで、次は索敵だ。


 俺は目を閉じ、気配を探る。


 生き物の気配はない。

 よし、このフロアにはもうファイヤー・ウルフはいないな。


 はっはっはっ。

 俺の暗殺術に恐れをなしたな、Fランクのファイヤー・ウルフ共め。


 俺からしてみたら、お前らなんか、ワンコと大差ないぜ。

 さて、下へ続く道はどこだろう?


 俺は目を閉じたまま空気の流れを読む。

 む? 下から風が吹いているのか?

 俺は目を閉じたまま空気の流れのする方へと足を踏み出した。



 ムニュ。

 俺は何かを踏んでしまった。


 とても柔らかく、まるで何かの生き物のしっぽのようだ。

 いやいやいや、このフロアにモンスターの気配はなかったはずだ。



 先ほど確認したから間違いない。

 でも、今、何か生き物のしっぽのを踏んだような……



 俺は慌てて目を開け、目を凝らす。

 ダンジョン内は薄暗かったので、目を閉じていた俺はすぐに自分の足元を確認できた。


 これ、ファイヤー・ウルフのしっぽじゃねーかー!!


 なんで、こんなところにいるんだよ?

 気配はなかったんだぞ。


 あ、分かった。さては、これ、死骸だな?

 さっき確認した時、魔物の気配はしてなかったんだからな。


 そうだ、死骸に決まっている。

 空腹とか病気とかで死んでしまったのだろう。

 うん、そうに違いない。


 ラッキー。

 ファイヤーウルフの素材をいただいてしまおう……と思っていたら、俺は踏んでいた足裏から何かを感じ取った。


 トクン、トクン。

 これって……心臓の鼓動音!!

 こいつ、生きてる!


 叫び出しそうになったが、両手を口に当てて、必死に声をこらえてゆっくりとしっぽを踏んでいた右足をすぐさまあげる。


 何故、ファイヤー・ウルフが俺の探知にひっかからなかったんだ?

 俺が心を乱したせいで気配を読めなかったのだろうか?


 いやいや、心は乱していなかった。

 むしろ集中していたはずだ。

 心が原因は考えられない。

 あと、考えられることは……


 もしかして、瀕死状態だったからか?

 魔物が気絶をしていたり、瀕死状態で今にも死にそうだったりすると、俺の探知能力にひっかからないことがあったっけ。


 そういえば、ファイヤー・ウルフは、縄張り争いをする際、相手を気絶させるまで戦うと聞いたことがあるぞ。


 群れずに1匹だけなところをみると、きっと孤軍奮闘して、気絶したんだ……って、冷静に原因分析をしている場合じゃない。


 生きているということは、襲ってくる可能性が過分にあるということだ。


 おそるおそる、体型をみる。

 ボクはごくりと唾を飲んだ。

 でかい。

 一般的なファイヤー・ウルフの体型は大型犬くらいの大きさのはずだが、今、しっぽを踏んでいるファイヤー・ウルフはそれよりもかなり大きい。


 そして象くらいの体重がありそうだ。


 こんなに大きいファイヤーウルフとサシで勝負したら、無傷じゃすまないだろう。

 このまま寝ていてくれ。


 寝ていてさえくれれば、痛みを感じる間もなく、寝首をかいてあげるから。


 そう、いつもやっているように、こいつを暗殺してしまえばいい。


 ボクは衣擦れの音さえしないように、ゆっくりと慎重に首の方へと1歩ずつ足を進めた。


 そして、その道中、見たくない光景が目に入ってきた。

 ファイヤーウルフのお腹が動いていたのだ。

 ボクがしっぽを踏んだのがきっかけで、止まっていた血液が循環して、息を吹き返したってことか……


 でも、まだ呼吸をしているだけで、意識があるわけじゃない。

 気絶している間に暗殺してしまえばどうということはない相手だ。

 やることは変わらない。


 静かに近づいて暗殺をする……それだけに意識を集中するんだ。

 ボクは足を止めずに進める。


 よし、あともう一歩。

「グルル……」

 胴体と首をぶった切れるというところで、ファイヤー・ウルフのうめき声が聴こえた気がしたけど、気のせいだよな……


 うん、きっと気のせいだ。

 ボクがしっぽを踏んだだけで、ファイヤー・ウルフが目覚めるわけがない。


 眠っているだけで、寝言を言っているに違いない。

 ……っていうか、そうであってくれ……


 祈りながら、おそるおそる最後の一歩を踏み出し、ダガーで暗殺をする瞬間、


「ワオーン!!」


 ファイヤー・ウルフは遠吠えをしながら、その巨体を持ち上げ、ボクとの距離をとると、こちらを睨んできた。


 うん、これ、完全に起きていますね。

 ファイヤー・ウルフ様、おはようございます。


 三角の目になってますけど、それって寝起きが悪いだけですよね?


 まさか、このボクを威圧してじゃないですよね?

 そのまま二度寝とかして――

「ワオーーーン」

 ――くれませんよね……


 そうですよね。

 ボクは2度目の遠吠えを聞くや否や、ファイヤー・ウルフに背を向けて、一目散に駆け出した。


 このままだと食べられちゃうーー

 走れ、走れ、走れ!!



 ごめんなさい、ごめんなさい。

 ウソついていました。


 心の中では俺とか言っていましたが、そういうキャラじゃなくて、一人称は『ボク』なんです。

 そもそも、剣士のような攻撃力ないです。

 もちろん、ガーディアンのように固くもないです。

 ぺらぺらです。

 外見も中身もペラペラな人間なんです。



 痩せている上に身長もなくて、紙みたいにペラペラだから食べるところ少ないし、たとえFランクの魔物を狩る時でも、真正面からは決して戦わないという信条を持っているくらい味気のない人間なので、美味しくないんです。

 だから食べないでくださいーーー


忙しい人のためのまとめ話(第1話)

自分は強いと見栄を張ったサイレント、魔物狩りに失敗。

逃げる。


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