河童の川流れ
永遠の文化部なので運動部の事わかんないっす
今日は家に帰りたくなかった。
高校の帰り道、部活があったという言い訳を盾に公園のベンチでボーッとする。時刻は午後六時、八月の部活はあと三十分もすれば終わる。下校時間も考えればここにいられるのは残りは四十分程度か。
「はあ…」
心なしか、今日はため息が多い。おそらアレのせいだろう。ほんと、嫌になっちゃう。
突然、缶ジュースが目の前に差し出された。見た事ないラベルのオレンジジュースだ。差出し主を確認する。丁度同じくらいの男子高校生だった。制服が違うため、他校の生徒か。
「なに?」
睨みをきかせて関わって欲しくないと拒絶する。
「飲むか?」
何事もなかったかのように尋ねてきた。なんだこいつとは思ったものの、喉は渇きを訴えていた。無言で缶ジュースを受け取る。
男子高校生は何食わぬ顔でベンチの横に立ち、二つ目の缶ジュースを開けて一口飲んだ。私もプルタブを開け、ちびちびと飲む。甘く、酸味の効いたオレンジジュースが喉を潤した。
「ちょっと、愚痴を聞いてもらって良いか?」
男子高校生は明後日の方角を向きながら呟いた。私は無言を返す。
それをイエスと受け取ったのか、彼は語り始めた。内容は、サッカー部でエースだった彼が、一つのミスでチーム全体からバッシングを受けた事。私が不満に感じていた事柄と酷似していた。私の所属は吹部なのだが、全く同じ事があったのだ。
それに不思議だった。彼の愚痴を聞いていると、まるで自分が愚痴を言っているかのように気持ちが楽になった。
「愚痴に付き合ってくれてありがとな」
彼はそうとだけ残して去っていく。連絡先でも聞いておけば良かったな。
「あら、あの子誰と話してるのかしら…?」
買い物帰りの主婦が見たのは、公園のベンチで一人喋り続ける高校生だった。
ありがとー