第8話 マオこの国を知る
唐突に語り出した父さんだが、ガオおじさんやユアさん、母を見ると、最初からその予定だったみたいで、皆、さっきまでとは別人のような厳しい顔をしている。
「まず、簡単にこの村がある大陸の話をしよう。」
父は皮に書かれた地図をテーブルの上に広げた。
「これは、この村がある「レムラリア大陸」の地図だ。」
皮の地図の真ん中に、前世のオーストラリアに近い形の大陸が書かれている。
「この大陸の中央から三方に延びる山山、ナルバス山脈により、3つの国に分かれている。
それぞれ「ガガガ王国」、「ラララ神国」、「ザザザ帝国」という。私達の村は「ガガガ王国」にある。この地図でいうとここだ。」
多分、国の名前についてはあえて突っ込まない方がいいんだろう。
父は「ラララ神国」に近い「ナルバス山脈」の麓を指さす。
「そしてザザザ王国の王都「ガルフ」はここだ。」ガガガ王国のほぼ中央に王冠を象った印があり、そこを指す。
村からかなり離れているう。
「父も、ガオ兄もそこの王族であったのだ。」
うん、なんかそんな感じだと思ってたけどトトはめっちゃ驚いている。
ちなみにモモは…寝てた。
「5年ほど前、王都で反乱があった、王位継承権第3位の私達の…弟が…」
「アイツはもはや弟などではない!」
ガオおじさんが堪えきれず大きな声をだす。
妻のアヤさんがガオおじさんの肩に手を添えて、宥める。父さんが続ける。
「そうだな。その男が反乱を起こし、新しい王となった。
そして、他の王族、一族郎党まで粛正の名のもとに皆殺しにしようとした。
我々は囚われる前に近しく、信頼できる少数のものだけで、王都を脱出し、追手を振り切りこの地にたどり着いた。もちろんそのあいだに犠牲となった者もいた。」
父とガオおじさんが顔を伏せる。
その人達を思いだしているのだろう、
こんな悲しそうな二人は初めてみる。
考えてみると、この村の人達は全員不思議なくらい、いい人だった。ならず者や嫌われてる人は見た事がなかった。皆が勤勉で、誠実そして等しく貧しかったが明るく楽しい人達だった。
「この5年間で、何とか村は形となり、そして…お前たちが現れた!」
「お前達は家族だけでなく、この村の希望なのだ。お前達の力をこの村に貸してくれ。」
父さんとガオおじさんが、俺とトトを見つめる。
大人の皆さんはモモの事を一旦、忘れる事にしたらしい。まだ、寝てるし。
「父さん、おじさんも、あたり前じゃないですか、ここは僕達の村なんだし。」
続いてトトも
「僕、一生懸命がんばるよ!村の為に!」
父は嬉しそうに笑う。
「そうか、やってくれるか!…みんな、そう言うことだ!」
父さんの視線が、僕達の後へうつる。
「?」
イヤな予感とともに、オレは振り向く。
いつのまにか、村の人達が集まっている。
父の熱い語りに油断していた。
「ウォーー!」
まあ、そうなるよね。
あ、モモが起きた…。
「マオ、お前からも村のみんなに一言、言ってやれ、みんなお前の話が聞きたいみたいだ。」
父が、とんでもない、無茶振りをしてきた。
3歳児が大人に一体何を言えばいいのか?
でも、オレはみんなの事が好きだし、この村の事情を知って。益々好きになった。
この村の為に何かしたい。その気持ちに偽りはない。正直にその気持ちを伝えようと思う。
おれは拡声器を再現する。
「村の皆さん!」突然の大きな声に皆ビックリして辺りが静かになる。皆んな耳に手を当てている。
「ラオの息子のマオです!今父からこの村の事をききました。正直、難しい事はわかりません。ただ自分が神様より頂いたこの力は、多分この村の為に、この国の為に、この大陸の為に、そしてこの世界の為に使う為にあるのだと思います。
でも、僕はまだ子供です。誤った事をするかもしれません。
その時は、どうか叱ってください。
今まで、皆さんが僕達を見守ってくれたように、どうかこれからも僕達を見守ってください。お願いします。
今日はどうもありがとうございました!」
言い終わった瞬間、頭の中に声が響く。
『うむ、よく言った。お前がこの世界に害をなさぬなら、お主の紐をまた繋げてしんぜよう。』
「はう!」
体のちょうど尾てい骨あたりに一瞬激痛が走る。
「大丈夫かマオ」
よろめいた体を父さんが支えてくれた。
「ありがとう、父さん。こんな感じで良かったかな。」
父さんはいい笑顔で言った。
「そうだな、マオ…。ちょっと、声が大き過ぎたかな。」
ほとんどの村人達は耳を押さえて、倒れていた。
こうしてマオの最初の演説は虚しく空に消えていった。
ところで、あの声はなんだったのだろう?
あの体の痛みは?