第6話 マオ、父の仕事場を見学する
朝、居間に行くと今日も父が僕を待っていた。
「マオ、おはよう。御飯を食べたら、お父さんの仕事場においで、お父さんが毎日何をしてるか見るといい。」
そう、僕は父が何の仕事をしてるか知らない。覚醒前の子供の時に聞いた答えは「いろいろ。」だった。
「うん、見たい!一緒に行く?」
「いや、父さんはもう出るから、後からトト達と石切場までおいで。」
「石切場?」
「ああ、マオは初めてか、場所はトトが知ってるから。」
何気に頼れる3歳児トト!
「わかった、後から行く。」
父さんが嬉しそうに「待ってるぞ。」と言って出て行った。
僕は急いで朝食を終えてガオおじさんの家に行く。
ガオおじさんの家は、ウチから近く、歩いて2、3分だ。
「トトーッ!モモーッ!」入り口で二人の名を呼ぶ。
扉が勢いよく開いてモモが飛び込んできた。人差し指をほの口にあて、「しっ!伏せて !」と頭を掴んで屈ませる。
一体どうしたんだろう。僕は戸惑いながらモモの言う通りかがんだ。
モモは真剣な表情で辺りを見回し、
「ん、大丈夫。」とだけ言って僕を立たせた。
「モモ、何かあったの?」
まだ辺りを警戒しているモモにオレは聞いた。
「ん、大丈夫。マオは私が守る。」
困惑していると、トトがやって来た。
「早速モモに守られてるね。マオ、おはよう!」
「トト、コレどうなってるの?」
「石切場に行くんだろ、歩きながら説明するよ。」
トトの喋り方、雰囲気が昨日と全然違う。
大人!しかも出来る大人!洗礼受けるとここまで変わるの。凄いな洗礼!
でも、見た目は3歳児、残念!
トトが言うには、昨日洗礼が終わってからガオおじさんといろいろ話したらしい。
護りし者とは大切な物や人を守るための力を持つ者で、得意な能力が超人的に発達するらしいと言う事や、守れば守るほど、守る対象が大きければ大きい程、能力は更に強くなっていくとか。
凄いな「護りし者」。
そしてガオおじさんはトトにこう言った。
「そうだな、トトはモモを全力で守ってみろ。」と。
いい人だなー、ガオおじさん。怖いけど。
すると、それを聴いていたモモが。
「モモは?モモは誰を守るの?」
普段あまり喋らないモモがあまりに真剣うに聞いてくるので、ガオおじさんはこう言ったらしい。
「モモは、そうだな…とりあえず、あのおおっちょろいマオでも守ってみるか?」
「わかった、モモはマオを守る。モモはマオを護りし者!」
そして、今朝につながる。
「モモ!マオにアレ見せてあげたら?」
トトがモモに言う。
「ん、わかった。」
モモはおもむろにパンチを繰り出す。
何度も、何度も。
徐々にスピードが上がっていき、
「シュッ、シュッ」と音がなりだす。
更にスピードが上がり…。
「え、ウソ…。」
モモの腕が何本も見え始めた。
「残像?」
「ビシッ、ビシッ」
音もなんか変わってきた。
「スパーン!」
モモが最後のパンチを繰り出すと、ブアッと風が舞い上がった。
「凄いよモモかっこいい!」
モモがドヤ顔でコッチを向く。
「ん、必殺たくさんパンチ!」
ああ、戦闘力以外は3歳児だね、なんかほっとした。
石切場は村の北側にある切り立った山のふもとにある。村からだとちょっと高い場所にあるからそこまでは緩やかな坂道が続く。因みにその切り立った山の名前は「キリヤマ」と言うらしい。
トトが教えてくれた。
「まさかモモが名付けたんじゃないよね。」
「はは、違うよ、前からだよー。」
冗談までわかるとは、頼もしい3歳児だ。
そんな、たわいもない話をしているうちに石切場に着いた。
石切場は結構広かった。
入り口から中にに一周400メートルのグランド2個分位のスペースが広がり、切り出されたばかりの岩があちこちに転がっている。
山側の斜面には大小の穴が開いており、中央には洞窟と言えるような特大の穴が開いていた。
その穴の横に父さんがいた。
「とおさーん!」呼びかけるとラオはこちらに走って来た。
「おお、マオ良くきたな、待ってたぞ。」
おお、もう近くに。結構な距離あったと思うが、もう目の前にいる。地味に驚いた。
「父さんはまだやる事があるから、マオ達はそこの休憩所で、みんなの仕事を見てるといい。」
入り口の横に座るのに丁度いい大きさの岩が何個かあり、真ん中に雑な作りの長テーブルが置いてあった。
「わかった、見てるよ、父さん頑張ってね。」
父さんの顔が真っ赤になる。
「おう。じゃ行ってくる。」
照れ隠しか、猛スピードで洞窟の方に走って行った。やっぱり凄いスピードだ。
多分洗礼の時「走る者」とか言われてるな。「走る者」うん、弱そうだ。
しばらく、休憩所から皆の働く姿をみる。全員筋骨隆々のマッチョマンだらけ。そんな大人がハンマーやツルハシで硬い岩を…あら?まるで軽石でも割るように岩は砕け散ってるし、ツルハシは土を掘るようにサクサク岩盤に穴を開けて行く。
そこは普通に苦労してるところに、
「ちょっと貸して」って、僕登場。
いとも簡単にサクサク岩を切り出して、
「マオ、すげ?」のお祭り騒ぎの流れじゃないの?この世界の常識がわからん。
「もう少し、石灰岩が欲しいところだ。」
父さんが男の人とはなしている。
「この辺はクズ水晶ばかりだ、石灰岩ならもう少し山側になるね。」
「ありがとう、そっちに行ってみる。皆手伝ってくれ!」
父さんは男達と奥に行ってしまった。
辺りに人が居なくなっちゃった。
「あ、お馬さんだ!」
突然モモが嬉しそうにかけだした。
岩の運搬用かな、駆け出したモモの先には…巨大な生物がいた。しかも2匹。
その生物の見た目は確かに馬、しかもポニー。ただし大きさは普通の馬の倍。足も太いし超強そう。なのに顔はポニーそのもので可愛い黒目に長いまつげ。
「トト、あ、あれ馬なの?」オレは聞いた。
「マオは馬見るの初めて?あれはデカポニー、力が強いから荷車ひくのにもってこいの馬だよ。モモ、危ないよ!」
トトがモモを追って駆けて行く。
オレも後を追うがモモの身体能力はずば抜けている為、もう馬の前に着いている。
すると馬は体を伏せてモモの前に座る体勢になった。まるで「なでていいよ」と言わんばかりに。
ああ、馬のヤツ野生の勘でモモの強さに気付いたんだな。
馬を撫で始めるモモ。
「モモ、危ないよ!こっちに戻って!」
トトがちょっと離れた所から声をかける。
「大丈夫、馬さん優しい、トトも撫でる。」
「えー、本当にー?」
トト、好奇心に勝てず!そこはやっぱり子供だね。一緒に撫で始めたよ、後ろから二人を見てるとほっこりしちゃうよ。
馬が「で、アンタはどうすんの?」って顔でコッチを見てる。
「手を暖ったかくしてなでると、馬さん喜ぶ。」
モモが自慢げに言った。
ここで、ちょっとしたアイデアが浮かぶ。
「トト。風魔法で弱目の風だせる。」
「できるよー。」トトよ、口調が子供に戻ってるよ。
「よし、じゃみんなで馬さんを喜ばせよう。」
オレはペット用ブラシを手に再現させて馬を撫でる。
馬は最初「何この感触?」とこっちを見たがすぐその気持ち良さに目を閉じ、撫でられるに身をまかせる。
モモが暖かい手でリラックスさせて、オレがブラシでマッサージしながら汚れを浮かせ、トトが風魔法で汚れを飛ばす。
石鹸があれば、完璧だったが、さすがにそこまで今はできない。
馬は気持ち良さそうに目を閉じていたが、だんだん鼻息が荒くなってきた。
構わずマッサージを続けると。
「ぼ、ぼぇ?っ!」と変な鳴き声を出して静かになった。
すると、もう一頭がおもむろに近づいてきて、伏せた。
完全に、「私にもプリーズ」って顔だ。
三人は無言で頷き合い、巨大な敵に立ち向かう。
数分後…「ぼ、ぼぇ?っ!」二匹目の鳴き声が響き渡る。
僕r達は勝った、確かに何かをやり遂げた。
三人は右手をかかげ…。
「お前ら何やってんだ?」
目の前にガオおじさんの顔があった。
「うおっぷ!」
オレは叫ぶのをなんとか、抑えて我にかえった。
「デカポニーが変な鳴き方したから、来てみたら、滅多に人に懐かないのに、伏せたまま気持ち良さそうに寝てるし
おまけに見た事が無いくらい、毛並みがツヤツヤになってやがる。」
「マオ、いったいどうしたら、こうなるんだい?」
いつの間にか、父もやって来てた。
「ただ、いっぱい撫でただけ。」
モモが答えたが、モモ、その言い方だと…。
「さすがは、神の子と守護者だ!ただ撫でるだけで気性の荒いデカポニーを寝かし付け、それだけでなく、美しくうまれかわらせるとは!」
ほら、始まった。
「奇跡じゃ!奇跡じゃ!」
お約束のように、何処からか預言者風の爺さんも現れたよ。
「これで我等一族の…」
「マオ、話は後で聴くから、ちゃんと休憩所で待っててくれないか、休憩所でね。さあ、皆仕事に戻ろう。」
父ナイス!流れを止めてくれてありがとう。
後ろでガオおじさんがちょっと寂しそうだ。
僕達は仕方なしに休憩所に戻った。
岩の一つに腰掛けて、ボーッと皆が働くのを見ていたが、ゴツゴツした岩肌は子供のお尻にはちょっと痛い。
オレは手にヤスリを再現させて、岩を削ってみたが、今一つ効率が悪い。
辺りにトトとモモしかいないのを確認して、ヤスリを消して、グラインダーをイメージ、再現させる。円盤の回転を感じる。
オレはその手を座っていた岩に近づける。
「チュイーーン!」と言う音がして、岩から火花が出た。
「マオ、何?」
「マオ、何したの?」
トトとモモが来て覗き込む。
「うん、岩を削る魔法。」
「どうやるの?」モモは目を輝かせている。
「んー、モモには無理かも。」
「モモ、やりたい。」
ジッと目を見つめられる。モモはマジだ!
「それじゃ、モモはモモのやり方でやろう。」
「ん、やる!」
「いいかい、手を手刀の形にして、剣より鋭くて硬いイメージをして。」
「ん、した。」
「じゃ、そのまま岩を手で削ってみて。」
「ん。」
モモが岩に手を当ててゆっくりと動かすと、皮を剥ぐように岩が削れていく。
「削れた。」
簡単にできたね、うん、知ってた。釈然としないけど。
「マオ、ありがと。必殺技できた。」
「必殺技?」
「ん、名付けて、削りチョップ!」
「おお、よかったね。人に使わないでね。」
そんな二人の隣でトトが土魔法で、岩をあっさり削っていた。
三人三様に岩を削っては、座り心地を確かめて、また削るを繰り返す。
作業になれてくると、ゴツゴツの岩の外見も気になり始めた。
子供が一つの事に熱中すると、もう止まらない。
なにより、この石削りが…なぜか…めっちゃ楽しい!
オレ達は馬のマッサージ師から、石家具職人に転職し、一心不乱に椅子を作り始めた。
「…マオ?」
気がつくと休憩所の岩は全て、ツルツルで、いろんな形の椅子が出来上がっていた。
周りには、父とガオおじさんを中心にいつものメンバーが目を丸くしてスタンバイしてる。
「やれやれ、マオといると退屈しないなー。さて、みんな。これが俺とガオの子供達だ。もう慣れてくれたかな?」
「お?おお。」
「これから、もっと色々な事が起こるだろう。これからも暖かく見守ってくれないか。よろしく頼む。」
「おお。」
「まかせな」
「こっちこそ、よろしくな」
「一族の復興も、頼むぜ」
父さんが大人らしい挨拶をしてくれたおかげで、なんとなくその場が収まる。
不完全燃焼気味かも知れないが、素直なマッチョマン達に幸あれ。