第5話 マオの魔法っぽくないけど、それっぽいヤツ
この村は盛り上がって騒げば万事OKなのか、洗礼の騒ぎは収まったみたいだ。
帰りしな村のおじさんに
「また、やってくれよ。」と言われたが、イベントか!
とりあえず、まだ明るいけど、トトもモモも一旦帰ると言うので、オレも帰る事にする。
家に帰ってベッドの上でゴロゴロしてたら、マーサが掃除にやってきた。
「マーサ!魔法教えてよ!この前ロウソクに火つけたやつ!」
マーサはちょっと驚いて答える。
「坊ちゃん、火の魔法は危険です。坊ちゃんがもう少し大きくなってからです。」
「じゃ、水がでるヤツ教えてよ!」
「水でビショビショになって坊ちゃんが風邪をひいたら大変です。」
「じゃ、風がビューってヤツ!」
「小さな坊ちゃんが飛ばされて、怪我でもしようものなら、このマーサ、ラオ様に顔向けができません!」
「えー、じゃ魔法は覚えられないの?」
オレは目一杯悲しい顔をマーサに向ける。
「いえ、坊ちゃん焦ってはいけません。まずは基本的な光の魔法からです。光よ!」
マーサの立てたら人差し指の上に小さな光の玉が現れた!
「マーサ凄い、凄いよマーサ!どうやるの?マーサどうやるの?」
興奮のあまり、身体が勝手にぴょんぴょん飛び上がる。
「坊ちゃん、落ち着いて、まずは落ち着いて下さい。」
僕の喜びように、マーサも満更でもない様子だ。
「まずは身体の力を抜いて、徐々に気持ちを人差し指に向けていきます。指先に神経を集中させたら。」
「集中させたら?」
「あとはビャーってやって、ピカッてやります!」
あ、N島方式…マーサも天才肌なのね…。
とは言え、トトよりましなのでやってみる。
神経を指先に集中させて…ビャー…。
「できるかあー!」
「坊ちゃん、何事すぐに出来たら苦労しません。焦らず、じっくりと練習してくださいませ。坊ちゃんなら必ずできます。」
「マーサ。マーサも苦労して覚えたの?」
「いえ、私は一回でできましたけど。ふっ。」
マーサのドヤ顔初めて見たよ。
掃除を終えてマーサは出ていった。
練習も飽きて来て、集中力も落ちて来た。指先は全然光らない。
「待てよ。」ふと考える。
そもそも、オレはこの世界の人間じゃないんだから、同じように魔法が使えるとは限らないんじゃないか?
何せ魔法が無い世界から来たんだから…。
あー、そうか、あれだ、地球上で三分しか戦えないとか、特殊な鉱石に触るとフラフラになっちゃうとか、レベルがずっと1のままとか、やっぱ弱点が無きゃ物語にこう深みがね…。
読む方も飽きるというか…。なんというか…。
「ふぅ?」
久々の哀愁ため息がでる。
まじかー、魔法なしかー!やりたかったなー魔法!
でもこの世界で、魔法が使えないとこまらない?
火なんてマッチやライターが無い世界でどう付ければいいんだよ。オレだけ木の棒クルクル回して着けるサバイバル方式のアレか?
あー、ライターがあれば、こうシュッと
「ぼっ」
「エッ?」
オレの親指の上に小さな火が浮かんでいる。
「うわ!」驚いて手を振ると、火は消えた。
もう一度、今度はゆっくり、ライターをつける様に親指を人差し指に擦りつけてみる。
「ぼっ」
「でた!」
手を振って火を消す。
頭の中である仮説がうかんだ。
僕は頭の中に懐中電灯を思い浮かべる。手で懐中電灯を持ったつもりで、
指でスイッチを押す動作をする。
「カチッ」と音がして、持ったつもりの存在しない懐中電灯の先頭あたりから光がでた。
「あ、やっぱり。」
どうやら、自分にはこの世界でいう魔法は使えないようだ。
そのかわり、仕組みはわからないが、前の世界の物をこの世界に再現出来るようだ。
再現すると言っても、物そのものではなく、物を使った結果。
ライターなら火、懐中電灯なら光。
「扇風機。」オレは呟き、頭の中に扇風機を思い浮かべて指でスイッチを押す動作をしてみる。
「ぶーん」
音がして、弱い風が吹く。
その風にあたりながら思う。
凄いんだけど、「これじゃない」感が止まらない!
風を止めようとイメージでスイッチを押す。
風が強くなった。どうやら「強」のスイッチを押したらしい。
「変なところが、リアル!」
その後、魔法みたいなヤツをいろいろ試した、
鎌を再現させて家の周りの草を刈ってみたり、スコップを再現させて家のうらに穴ほってみたり。
ちょっと思ってたのと違うし、チートというには地味だけど、3歳児には十分な能力だね。
そんなこんなで数日がすぎた。