第4話 マオ、洗礼を受けてみる
ご近所一帯を巻き込んだ騒ぎは、なんとか夜には落ち着いた。
マオの家でも今後の事は、日を改めて相談する事になり皆家に帰って行った。
マオの一家も、その日は軽い夕食をとり、就寝した。
翌日、朝食に起きると、珍しく父さんがいた。どうやらオレが起きるのを待っていたらしい。
「マオ、悪いが朝飯を食べたら、トトとモモと一緒に教会に行って欲しい。」
トトとモモはガオおじさんとこの双子で、オレの従兄妹だ。
「3歳になると教会で洗礼を受ける事になっているんだ。トトとモモも洗礼はまだだから、3人で行ってくるといい。」
「父さん、洗礼って何するの?」
前世は一応仏教だったし、洗礼なんてしたことない。
「なに、神父さんの話を聞いて、後はいわれる通りにしていればすぐ終わるさ。
その時に、もしかしたら洗礼職を授るかも知れない。」
「え!洗礼職?なにそれ?」
「神様の加護だな、まあ自分のやりたい事の参考になるから聞いて置いて損はない。」
いや、神様?異世界の神様からの神託って嫌な予感しかしないんだけど。
「異世界のよそ者め!帰れ!」とか言われたらどうしよう。
朝食を食べ終えたらすぐ、玄関から声がした。
「マーオー!教会行こー!」
「行こー!」
玄関にトトとモモが迎えに来ていた。
兄のトトは金髪でガオおじさんの息子とは思えないほど優しい顔をしている。
ユアさん似だね。
またマジックの天才で、手から水や火を出す技を見せて…ん?マジック…。
あー、あれ魔法だったんだ!
今、気づいたわ。それはそれでやっぱ天才だな。
妹のモモはなんというか、一言でいうと「強い!」ガオおじさんの遺伝子を全て受け継いでしまったようだ。
茶色い髪をオカッパにして、見た目は可愛い女の子なのに、繰り出すパンチは板を割るどころか、大木に穴を開けるほど。
3歳の女の子がだよ。
まあ、そのせいかどうか、普段はすごい面倒くさがり屋だ。
細かいところに気が廻るトトといいコンビだ。
支度をして出て行くと案の定、モモはまだオネムのようだった。
思いっきりトトに寄りかかっている。
「遅い。」
「モモ、ごめん。ごめん。」
「ん。」
喋るのも面倒くさそうだが、どうやら許してくれたみたい。
教会に向かいながらトトと話す。
「トトってさあ、魔法使えるの?」
「え?マオは使えないの?」
「うーん、やり方わかんないし。ねえ、どうやって水とかだすの?」
「それは、頭の中にお水がザバァーンって、くる感じで、手にシュワシュワって
飛ばすの。そしたら手から水がジュワって出るよ。」
ダメだ、コレ。天才野球選手N島さんの教え方だわコレ。
凡才には理解できないヤツ。
「モモもできる。体を硬くして岩とか割る。」
なるほど、モモは木に穴を開けるとき、体に強化魔法をかけてたんだ。
何気に木から岩に進化してるけどね。
僕にもできるかな。帰ったらマーサに教わろう。
そんな話をしていたら教会に着いた。
思ったより小さな建物だった。
中から白いローブを着た細身のお兄さんが現れる。
「いらっしゃい。ラオさんとガオさんところの子供達だね。待っていましたよー。さあ入って入って。さあさあ。あ、そこ段差あるから、気をつけてね。」
全身からいい人オーラがダダ漏れの人は、パレさん。
普段は畑を耕している兼業神父さんだ。
教会に入ると1番奥によくわからない人の像があった。
多分この世界の神様なんだろう。
なんだろ、申し訳ない気持ちが湧いてくる。
「え?」
銅像に気を取られたが、周りは知った人でいっぱいだった。
オレ達の両親と昨日家にいた号泣集団がワクワク顔でスタンバイしていた。
「父さん?」
「おお、マオ。普通洗礼は本人と親ぐらいしか参列できないのだが、親の許可があれば特別に参列出来るんだよ。」
許可だしすぎだろ、父さん。これ許可制じゃなくて申告制だろうな多分。
「みんなに祝福されて、母さん嬉しいわ。」
母さんにいたっては、親バカから親を取った発言で、トトとモモのお母さんであり、聖女のユアさんと頷きあっている。
僕の中の不安感メーターがマックスを振り切る中、洗礼の儀式が始まった。
僕達三人は神様を背にしたパレさんの前で膝まずく。
パレさんは目を瞑り小さな声で、何かを呟きながらまずトトの頭に手をかざす。
「この者 護りし者なり…」
「おおー。」辺りの観客?がざわつく
「やはり…」とか「さすが…」とかの声も聞こえてくるので、なんか良い神託なのだろう。
だが、神託はそれで終わらなかった。
一瞬トトの身体が黄色く点滅その後金色のヒカリがトトを包む。
「おー。」
なる程、この演出なら見にきたくもなるな。
だが、パレさんの口からでたのは、意外を通りこす、意味不明な言葉だった。
「この者 護りし者 メガ盛り なり。」
「ん?」「ナニ?」「メガなんと?」
ザワザワが止まらない中、パレさんが次にモモの頭に手をかざす。
モモの身体が黄色く点滅し、同じように金色に包まれて…。
「この者 護りし者 ギガ盛り なり。」
ナニそれ?街で話題の食堂のメニュー?
30分で完食するとお金貰えるやつ?
それと、黄色い点滅がなんか、凄い引っかかるわ。
廻りの観客?はもうシーンとしている。
何故なら次が神の子の僕だからだ。
パレさんの手がオレの頭の上にくる。
オレの身体が黄色じゃなくて赤く点滅する。黄色から赤って明らかにヤバイパターンのヤツ!
「ウィーン!ウィーン!ガガガッ!」
何処からか警告音みたいな音も聞こえてくる。
廻りの観客?の皆様は耳を押さえている。
その後オレの体から真っ白な激しい光が辺りを照らし、何も無かった様に静かになった。
「この者…えっ?なんすかっ?」
パレさん、今「なんすか?」って言ったよね!なんか誰かに聞き返したよね?
「この者 グジェンキャ? テラ盛り ネギ増しで…なり…」
だから何処の食堂だよ!
しかもテラ盛りネギ増しって、絶対食べ切れなくて店のオヤジさんに怒られるヤツだわ!
イヤ、それより、なんだよ「グジェンキャ?」って。この世界特有の何かなの?
あー、ツッコミ処ありすぎて、おなか一杯だ!
「パレさん、一体どうなって…パレさん!パレさん!」
パレさんが白目をむいて、固まっていた。
「あー、あれだね、パソコンエラーの時の再起動だね。」
僕は自分しかわからない一人言を言いながら辺りをみわたした。
シーンと静まり返る観客?の皆様方。
そして、やっぱり始まる大歓声。
「ウオーッ!」
「こんな洗礼初めて見たぞ!」
「さすがマオだ期待を裏切らねーな!」好き勝手な事を言ってる。
「奇跡じゃ!奇跡じゃ!」
なんか預言者みたいな爺さんが、拝みだしてる。
「この三人はともに覇道を歩むであろう。我が一族の復権はもはや確実なりぃ?!」
ガオおじさんはなんか聞きたくない裏設定を大声でネタバレしてるよ。
横を観るとトトとモモが鼻息も荒くやり切った感をだして胸を張って立っていた。
イヤ二人とも「メガ盛り」とか「ギガ盛り」とか言われて不安じゃないのか?
お、再起動が終わったパレさんが、父さんのとこにかけて行く。
「ラオ様、ガオ様!パレは…パレはやりましたぞ!洗礼の儀、やり切りましたぞ!」
アレで良いのか?パレさん、白目向いて気を失ってたよね!
「よくやったパレ、見事に役目をはたしたな!」
「見事なりパレよ、一族の期待を果たした姿、この目にしっかりと焼き付けたぞ」
父さんもガオおじさんも満足気だ。
「おお、マオ!」
父さんが近づいてくる。
「大丈夫か?よくやったな。」
「う、うん。(何もしてないけど)」
「ところでなあ、マオ。」
「はい、なんでしょうか。父さん。」
「グジェンキャとはなんだ?」
「……」
…こっちが知りたい。