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転生したらマオでした。  作者: 小椋犬生
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第1話 三歳児マオ異世界に再誕

頭がだんだんハッキリしてきた。息を大きく吸ってマオは目を開く。

いつもの天井、いつもの部屋。

「やっぱり、異世界ってやつだよね。ここ。」

三歳とは思えないハッキリした口調に、やはり三歳とは思えない大人びた表情。

いや、見方によっては哀愁さえ感じられるもの。

「はあー。」マオは深いため息した。


時は3日前に遡る。その日はマオの三歳の誕生日。


いつもの様に朝は日の出に起きて、前の日の残り物が申し訳程度に入った豆のスープ。

夜は日暮れに、運が良ければ少量の肉と、蒸した芋と、やはり豆のスープ。

暗くなれば寝る。

小さな頃からのそれが普通だったので、

常時空腹である事を除けば、苦ではなかった。

ただ、マオの家には何故か家政婦がいた。

昼間は両親とも働きに出ているので、マオはほとんどマーサと言う壮年家政婦に育てられた。


マーサはマオの事を「坊ちゃま」と呼び、ごくごくたまーに優しく、まあ、ほとんど厳しく育てられた。


そのマーサがその日は朝からご機嫌で「今日は坊ちゃまの3歳の誕生日ですから。」

と聞いてもいないのに、顔を合わせる度に何回も言ってきた。


「誕生日」と言われる度に、何かキラキラしたイメージが頭の中に浮かんだが、それが何か分からなかった。

でも普段厳しいマーサがニコニコしているので、なんとなく楽しい気分だった。


「マオ!晩御飯よ。」母に呼ばれたのは、普段より遅い時間。

辺りはすっかり暗くなり、家のなかも暗い。窓から入る月灯りを頼りに食卓に着く。


暗くても、そこに並べられた料理が見たこともない、豪華な物だと言う事がわかる。

「マオ、誕生日おめでとう。」

父が祝いの言葉をくれたが、何か雰囲気が違う。

普段の優しい父ではなくて、何かとても怖い、言葉とは裏腹に怒っているのかな。

なんとか「あ、ありがとうございましゅ。」とだけ言えた。

辺りは真っ暗、目の前の御馳走に刺激されていつもより三倍マシの空腹、父の変わり様で、「今日、なんか悪いことしたっけ」とドキドキしている。


「マーサ、灯りを。」

しばらくの沈黙の後、じっと僕の顔をみていた父がまだちょっと怖い顔で言う。

マーサが人差し指で、滅多に見ないロウソクを指差して小声で何かを囁く。

ロウソクに灯りがともる。

パニックになっている頭の中に、さらなる衝撃が走る。

『あれ、マッチもライターも使わないで、火がついた?魔法?、いや魔法って何?マッチ?ライター?なんだそれ』

頭のなかに小さな棒が沢山入った小さな箱の絵が浮かぶ、その横に四角い鉄の小さな箱。

『マッチ…、ライター…。知ってる、後…』

次から次に沢山の見た事がない動く絵や、音、感覚が浮かんでは消える。

そして、それは全て…知ってる物だった。


「あ、あ、あ、あ、あ…。」

いつまでたってもおわらないそのイメージの再生にもう頭がついていかない。

「やめて、止めて!あ、あ、…」

家族が驚くなか1番近くにいたマーサが僕に軽くふれる。

僕の目の前が暗くなって、僕は意識を失った。




で、今なわけです。

映像のフラッシュバックも終わり、ここに居るのは、ぼく、前世の記憶を持つ3歳児マオ。

現世と前世の記憶がやっとまとまった。

うん、沢山の点が繋がってどうして自分がこの世界に居るのか、何故前世の記憶を持っているのかが、理解できた。

まさか、死んだ後の記憶まで持ってるなんて思ってもみなかったけどね。


それと同時にこの世界、そして自分の家族に感する疑問も沢山出てきた。

あの誕生日の儀式的な雰囲気とか、両親の仕事とか、何故貧乏なのに家政婦を雇えるのかとか。


あとは…1番は魔法ね。

見たのはロウソクに火を付ける魔法だけなので、もしかしたらマジック的な何かだろうかとか思い始めているのだけど。

なんせ、この世界の記憶は1歳から3歳児までのあやふやな物しかないし。

この世界については何も知らない事がわかった。

「ふぅー。」

あ、ため息にも3歳児とは思えない哀愁が。


「…ぼっちゃま、起きられました?」

マーサがベッドの近くに来ていた。

哀愁のため息を慌てて止めて、僕はマーサに訪ねた。

「マーサ、俺どのくらい寝てたかな?」

言った瞬間失敗したと気づく。

3歳児の物言いじゃない!

しかもマーサは、言葉使いに超うるさい。

「なっ!これは…」

案の定マーサは目を丸くして絶句して僕を凝視している!

コレはお説教確定だ!

「いや、マーサ、コレは…」

言い訳しようとして、モゴモゴしてると

マーサがベッドに飛び込んできた。

「ああ、マオ様、マーサは…マーサは信じておりましたー!」

僕にしがみつき号泣するマーサ。

そんなマーサの大声に家族が集まってくる。

「マーサどうした、おお、マオ!目が覚めたか、気分はどう……だ?」

「父上、心配をかけました、マオは大丈夫です。」

僕はなるべく丁寧に言葉を選んで返事をした。

「旦那さまっ!」

マーサが「今の聞きました?」とばかりに、視線を父、母に向ける。

「おお、マオ。お前は…お前は…。この父を…。」

あら、なんか間違えた、また失礼な事言ったかな?

「父を…許してくれ!」

「こんな母も、母も許して!」

母さんもなんか来た!

あれ、なんか普段家で見ない親族、名前もおぼつかない近所の皆さんもこの小さな家にいつの間にかいらっしゃってるよ!

みんな泣いてるし、互いに抱き合ってるし。

ちょ、ちょっと、哀愁のため息から怒涛の展開。

お願い、みんな一旦。一旦落ち着こうよ!



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