暇つぶし1
アリアが切った紙に数字とマークを書いていく。
赤と黒のインクで、間違えないように丁寧に。
ジョーカーの2枚は青と緑で書こう。
アリアに形の違いが出ないように切ってほしいと言ったので慎重に切ってくれている。
部屋には私の書く音とアリアの紙を切る音だけ。
クローバーやスペードを何度も描くのはめんどくさいが、〇や✕で代用するなどの妥協はしたくない。
ふっと集中が切れアリアを見ると真剣な表情で紙を切っている。いつも真面目なアリアがトランプ作りに本気な様子がかわいくて頬が緩む。
よし、頑張ろう。
2時間くらいでトランプが完成した。
時間はかかったがクオリティは私が作ってきた中でも最高ランクだ。厚めの紙のおかげで裏写りもなくいい感じにできた。特にアリアと描いたジャックからジョーカーまでの絵が良い。
インクが完全に乾いたのを確認して54枚をとんとんと揃える。紙の大きさも完璧に揃っている。
「できたー!!」
「できましたね、お嬢様!とらんぷとはこうやって遊ぶものなのですか...。とても楽しかったです!!」
どうやら紙を切り絵を描くのがトランプだと思っているようだ。ゲームがないと楽しさの基準がここまで下がるものなのか。
何ともかわいそうなアリアにトランプ、いや遊戯の楽しさ教えるために、キリッとした表情で言う。
「アリア、それは違うわ。遊戯というはこんなにせせこましいものではないの!今からこのトランプの素晴らしさを教えるわ!実際にトランプを使って一緒に遊びましょう。」
「はい!!」
まずはド定番、ババ抜きをしようとおもう。
前世ではジョーカーを1枚抜いて遊ぶことが多かったが、ここではクイーンを1枚抜いて最後に嫁ぎ遅れた女性を意味するババが残るというルールのほうで遊ぼうと思う。
この世界ではこちらのほうがわかりやすいだろう。
2人では物足りないので手が空いている使用人を何人か呼んできてもらおう。
「まずはトランプをもっと楽しむために手が空いている者を2人ほど呼んできてもらえる?あと椅子も人数分お願い!」
「かしこまりました!」
しばらくするとメイドのアンとリタ、そしてお兄様がきた。
「シリル兄様!」
「みんなが楽しそうな話をしてたから。どんなものか見てみたくて来ちゃった。」
これまで私は照れ笑いをするお兄様ほど尊いものは見たことがない。普段大人びているお兄様のこういう表情はあまり見ない。
今すぐに写真に収めるべきなのだがいかんせんこの世界にはカメラがない。...作るべきか?
考えながら上がっていく口角を表情筋で押さえつける。
「嬉しい!私シリル兄様と一緒に遊びたいわ!今からするババ抜きは5人でもできるの。」
「ババ抜き...。初めて聞いたな。」
テーブルを囲うようにして椅子を6脚円状に並べ、座らせる。
脂肪のついた手でカードを切るのは難しかったから机の上に広げてかき混ぜる。クイーンを1枚抜くのを忘れずに。
「今からみんなにカードを配っていくから、自分だけ見て他の人に見えないようにしてね。」
「わかった。」
みんなが神妙な顔で頷くのが可笑しくて笑ってしまったが自分に配られたカードに夢中で誰も気づいていないようだった。