証明の儀式
ゆうしゃをしょうかんしたあとも、ひとびとはかれがほんもののゆうしゃかどうかをうたがっていました。そこでおうさまたちはゆうしゃがほんものかをしょうめいするために、おうこくにだいだいつたわるほうせきをつかいました。ゆうしゃがほうせきにふれると、ほうせきはあたりいちめんにこのよのものとはおもえないひかりをはなちました。
その後グレイトさんとリリーさんと別れたボクは、メイドさんのような格好をした…たぶん本物のメイドさんに案内されるままについて行った。
「こちらがレン様のお部屋となっております。」
メイドさんは大きなお城の中の個室に案内してくれた。ボクはメイドさんに一言ありがとう、といって部屋の中に入っていった。…やっぱりボクの名前はレンと覚えているようだ。
「失礼しまーす」
挨拶をして部屋に入る。もちろん誰からも返事が返ってくることはなかった。ボクは部屋の中を見回す。とてもきれいに掃除がしてあって、清潔な状態が保たれているようだ。…少し暗いけど。
部屋の中には一つのベッドと、小さな宝箱。そして、何かを立てかけておくための箱が一つあった。
「ううん…」
特に何もすることが無かったので、ベッドに体をゆだねていると、唐突に眠気が襲ってきた。外を見てみると、もう辺りは真っ暗だった。そのまま眠気に抵抗することなく、ボクは夢の世界へと沈んでいった…
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「起きてください、レン様。」
女の人の声とともに、体を軽く揺さぶられる。自分には関係の無いこと、と寝ぼけていたが、それが自分に向けて言われたとわかると、慌てて体を起こす。…やっぱり様付けで呼ばれるのはなれないな。
「グレイト様がお呼びです。着替え終わったら私についてきてください。」
メイドさんはこちらが起きたのを確認すると、一式の服装をボクに渡して、ドアから出て行った。
…日本ではあまり見ないような感じの服だ。かなりごわごわしている。まあ何はともあれ着替え終わった。…脱いだ服はどうしよう?とりあえずベッドにおいておくか。
「こちらです。」
メイドさん―名前をフローレンスというらしい―につれられてきたのは大きな広間のような場所であった。
「おお、待っておったぞ!」
「お待ちしていましたわ!」
そこで待っていたのは、グレイトさんとリリーさん…とこちらを見ているたくさんの人たち。
「えっと…これは?」
「今から玲宮様を勇者として証明する儀式を始めるのですよ。」
ユウシャトシテノショウメイノギシキ?
え?なに?ボク本当に勇者だと思われているの?
「静まれぇい!」
王様の一声で、今までざわついていたみんなが一瞬で静かになった。
「これより、勇者レイの証明の儀式を始める!…勇者レイよ、前に。」
王様に言われるがままに前に出る。
「さあ、この玉を手にするがいい。」
そう王様がいうと、フローレンスさんではない別のメイドさんが二人がかりで一つの大切そうに保管されている一つの水晶玉のような見た目の宝石をボクに向かって差し出していた。先ほどグレイトさんに言われたとおりに、水晶玉を手に持つ。
…変化が起きたのはそのときだった。透き通るような色だった水晶玉が、まず炎のように赤く染まり、つぎに空のように青くなり、木のような緑色が映し出され、最後に今までに無いくらい光を放った後、また、元の色に戻った。
突然のことに、呆然としていたのはボクだけではなかった。グレイトさんも、リリーさんも、フローレンスさんも、水晶玉を持ってきたメイドさんたちも、ほかのみんなも呆然としていた…のはおそらく3秒程度だったんだろう。突如として、耳をつんざくようなすごい音が鳴った。それをみんなが上げた歓声だと気がつくのに、ボクには少し時間が必要だった。そしてそれが歓声だとわかった今でも、ボクはなぜみんなが歓声を上げているのかがわからなかった。
「ど、どうしてみんなはこんなに喜んでいるの?」
「それは…貴方が本物の勇者だったからですよ、玲宮様。」
リリーさんは、まるで ね、言ったとおりだったでしょうといわんばかりの笑みをこちらに浮かべていた。
「次に鑑定だ。お前たち、鑑定士を。」
王様がそう命令するとメイドが奥からローブを身につけたおじいさんを連れてきた。
…ボク、どうなってるんだろう。