ある男の子の話
―――小さいときから、少し変な子だと思っていた。
変だとはいっても、悪い意味ではなく、むしろよい意味で。
彼は―自己犠牲ではないけれど、自分の危険や不利に働くことを顧みずに周りを助けようとする…人格?のようなものがあった。
いじめられている子がいれば間に入って助ける、なくし物を探していたら一緒に探す、おやつをもらってもみんなに分ける。全く初対面の子を助けることも少なくなかった。
そして助けてもらったりした彼らが感謝をすると、その子は決まって笑顔で、私に向かってこう言うのだ。
―――たのしい
と。
この際だからはっきり言ってしまおう。私はあの子が…怖かった。小さいときはあの子の賢さ、慈愛に驚き、感心したものだ。しかし彼の人助けは、彼が育って行くにつれてだんだんとエスカレートしてきた。中学に入って二ヶ月くらいがした頃だろうか、彼が傷つくのを見るのが少なくなくなっていた。あとであの子のクラスメイトに聞いた話だが、彼は同級生をいじめていた上級生のグループに一人で立ち向かっていったらしい。
なんて無謀な、と思ったのは私だけではなかったようだ。案の定、彼はぼこぼこにされてしまった。しかし彼は何度も何度も彼らに詰め寄り、ついに彼らをあきらめさせた。
私はその話を聞いて半ばあきれた。なんでそんなことをしているんだ、確かに人助けを悪いことだとは思わないが、いくら何でも限度があるだろうと。しかしあの子はそんなことも気にかけちゃい無い。あんなことがあったというのに、まだ彼は人助けを続けている。しかもやましい気持ちは一切無しの、善意100パーセントで。
だからなんとなく私はいつかこうなってしまうんだろうな、そして今日がその日だったんだろうな、と呆然としている心のどこかでそんなことを考えていた。
他の人が何かを私にささやいている――
もう、今は何も聞こえない。
もう、今は何も聞きたくない。
こんなことで命を終わらせたくない。
┼┼┼
この日、男の子が英雄となった。車に惹かれそうになった子供を助けたのだ。
―――自分の命の灯火と引き替えに。
???「さあ、この優しい彼の話は終わったわけではない。むしろ――
今始まったばかりさ。」
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