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0.プロローグ
舞い散るのは、雪か桜か。
無機質な白い空間。。その窓から見える景色は、私の目に朧に映る。
窓に伸ばした自分の右手は、自分が思う以上に重く、重力に抗えず、シーツの上にボトリと落ちた。
あぁ。終の時間か。
乾いた唇を、動かす。
その音は、自分の耳には届かない。
瞼を持ち上げるのも億劫で、夢の中に沈んで落ちていくような感覚は、懐かしい記憶と重なる。
『ーーーー』
あの時も、呼んだ名前は、伸ばした手は、届くことはなく……。
それでも、と。願いを込めた。
弱虫で、惨めったらしい、私の最期の願いは、カミサマとやらに届くのだろうか。。
そこで、意識は途切れ、私の物語は幕を閉じる。
無機質な白い空間に、どこからか入り込んだ風が私の書いた手紙をすくい上げて運んでいく。
それがどこに行くのかを、私が認識ことはなかった。