秘密
僕らは、カフェを出てからしばらく歩いて公園に着いた。
「やっと着いたねノロノロ君ふふっ」
「その呼び名はやめてくれないか?」
「だって、歩くの遅いからノロノロ君」
「それは、ただ僕に体力がないだけであって、普段から遅いわけじゃないよ」
「ねえねえ、ブランコ乗らない?」
「まったく君は僕の話を聞かないね」
「こっちこっち」
「はぁ、まったく元気すぎるんだか幼稚なんだか」
「うわ〜ブランコ乗ったのっていつぶりだろう?」
「このブランコ僕たちには少し小さ過ぎやしないか?」
「君のその言葉、私の乙女心を傷つけました。だから、お詫びとして私の相談に乗りなさい」
「まぁ、相談くらいなら」
「じゃあね、君に二つお願いがあります」
「う、うん」
「先ず一つ目はもし、私がもうすぐ死ぬって言ったらどうする?」
「……そうだなぁ、まずは君がしたいことを死ぬまでにしたいことを手伝うかなぁ」
「まさか、君がそんな優しい言葉をかけてくれるなんて思ってなかったから…うれしい」
「まさか…泣いてるの?」
「うん、だって…ううん。なんでもない」
「それで二つ目の願い事って何?」
「二つ目のお願いはね…私と『莫逆の友』になって欲しいの」
「……」
「ダメ… かな?
「いや、そんなことでいいのかなって思っただけ」
「うん、私が頼んでるんだから良いんだよ」
「…わかった」
「でさ、君がもうすぐ死ぬって話本当?」
「本当だよ」
「……君は死ぬのが怖くないの?
「怖いよ? でも、しょうがないでしょ? 死ぬって決まってるんだから」
「それはそうかもしれないけど、普通の人は死ぬって知ったら、居ても立っても居られなくなるんじゃないかな?」
「確かに普通はそうかもしれないけど、本当にこればかりは、仕方のないことだから、もう私には人生を楽しむって選択しかないの」
「…そっか、君は強いんだね。僕には出来そうもないや」
「何言ってるの? 君だって私の願い事を叶えてくれようとしてるじゃん。それって、とっても勇気のいるすっごいことなんだよ」
「僕にはそうするしかないから」
「でも、私は嬉しかったな〜 君が引き受けてくれて」
「それくらいなら僕だってするさ」
「ありがとう。 じゃあ、もう暗くなってきたしそろそろ帰ろっか」
「…そうだね」
「じゃあね、私の願い事を叶えてくれるヒーロー君」
「…うん」(僕は君を救えるほど強くはないよ)
「じゃあ、また来週学校でね」
「うん、また来週」
僕は彼女が帰った後も一人公園に残り考えていた。僕にはなにができるだろうか、僕は彼女に何をしてあげれるだろうか。そんなことをずっと考えていた。いつしか僕は、他人のことを考えるようになっていた。そして、そんな自分自身に驚いていた。