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出逢い

あれは2年前の夏のことだった。今思えばあの時から、僕の運命の歯車は狂っていってしまったのかもしれない。これはそんな僕の奇妙で不思議な夏の思い出の話である。僕は今、東京の隅田川に来ていた。そこに一人学校で見覚えのある女子が居た。


彼女の名前は、夏菜という。なんとも夏が好きなのか春が好きなのかわからない名前だか、きっと彼女の両親が夏と春が好きなのだろう。彼女は、春なのに暗い表情をしていた。彼女は僕に気づいたのかこちらに近づいてきた。


「ねぇ、君って同じクラスの…君だよね?」


「うん、そうだけど何?」


「えっ?何って別になんでもないけど、知ってる人がいたら話しかけるでしょう?」


「そういうものなのか? 友達がいないから知らなかった。 教えてくれてありがとう」


「何それ? もう、君って本当に偏屈なんだね」


「偏屈で悪かったな、僕は君とは違って生まれてこのかた友達というものを知らないものでね」


「ふ〜ん 、じゃあ、私が友達第一号になってあげましょう!」


「誰も頼んでないのだが」


「君に拒否権はないのだよ 、うふふっ」


「なんとも強引な」


「君が何を言っても決まりなものは決まりなのです!」


「反論しても無駄なようだね、ところで君はなんでこんなところに一人でいるんだ?」


「別に、何でもないよただ隅田川が好きなだけだよ?」


「そっか」


「それよりさ、今から私とどこか行かない?」


「えっ、今から?」


「だめかな?」


「クラスメイトにでも見られたらどうするんだよ?」


「う〜ん、それはその時に考えるかな?」


「少しは僕のことも考えてくれないかな?」


「ごちゃごちゃ言ってないで行くよ!」


「はいはい」(面倒なことになったな)


僕らはしばらく歩いて、公園で急遽休息をとることにした。しばらくの間僕らには気まずい空気が流れたが、先に開口したのは、彼女だった。


「ねぇ、君にとって『生きる』ってどういうこと?」


「いきなり何?」


「いいから教えて」


「う〜ん、そうだなぁ。毎日同じように起きて同じように学校とかに行って同じように日々を過ごすってことかな?」


「そっか。 ……教えてくれてありがとう」


「いきなりそんなこと訊いてくるなんて何かあったの?」


「ううん。なんでもないから気にしないで、ただ訊いてみたかったの」


彼女は隠しているつもりだろうが、僕は彼女がなんらかの病気であることを僕は感づいてしまった。それに普通の人は、いきなり『生きるとは』などと訊いてこないであろう。


そして、隅田川の近くには病院があるのだが、僕は気付かないふりをした。

今思えば僕は彼女の重い『モノ』を背負う勇気がなかったのかもしれない。

僕らは、重くなってしまった空気を変えるために、また歩き出した。

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