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☆11 嘘でしょ!?

 私達は再び馬車に乗り、まずはリーナ達がどこに住んでいるのか聞いてみた。


「まどろみのふくろうてーというところでおせわになっているのです」

「それってもしかして宿屋のこと?」

「はいです」

「じゃあ、リーナは王都に家を持っていないのね?」


 リーナはこくりと頷く。


「おかーさんはよくおひっこしをするので……。リーナはうまれてからおうとからでたことはないですけど、おかーさんはあちこちいっていたみたいです」


 という話から泊まっているという商店街にほど近いところにある宿屋に行った。部屋にはたくさんのお菓子とぬいぐるみが置かれていてある種、異様な光景だった。


「おかーさんが、かってくれました。これでひとりでおるすばん、できるよねって」

「そう……」


 色々、思うところがありつつも部屋を調べる。

 だが、母親が戻ってきた形跡はなく従業員も見ていないという。それにしてもかなり無愛想な従業員だった。宿の雰囲気も暗くてあまり長居をしたくないところだ。


 しかたがないので宿を出て次に商店街へやって来た。ここがリーナとお母さんがはぐれた場所らしい。

 辿り着いたお昼頃の商店街は買い物客で大いに賑わっていた。

 リーナの案内で、彼女が母親と別れたという果物屋の前まで来た私達はさっそく聞き込みを開始しようとしたのだが……。


「この人相書きじゃ、ぜんぜんわからないわよね……」

「そうだな……」

「そうですか? にているとおもうのですが……」


 リーナは自分の絵に自信があるのか、可愛く首を傾げている。だが、私達にはただのまるかいてちょん。性別も分からなければ、どこがどのパーツなのかも不明である。これが猫ですといわれたらへーっと言ってしまう具合だ。


「ねえ、リーナ。お母さんの特徴とかないかな? 私、ちょっと描いてみる」

「はいです。……えーっとまず、かみのいろはリーナとおなじきんいろで……」

「あー、ちょっと待って待って」


 急いで私は近くに合った文具店で適当に紙と色鉛筆を買うと、リーナが証言した通りに紙に色鉛筆を走らせていく。

 しばらく聞いて、区切りがついたところで私はふーっと手を止めた。


「うん、かなり難しかったけどなかなかの出来栄え」

「へー、シアは絵心があったのか。どれどれ、見せてみろよ」

「ふっふっふ。じゃーん」


 紙を大きく広げ二人に見せた。

 二人とも私の絵をしっかり見ようと顔を近づけて……。

 なぜか目を細めた。


「みゅ……?」

「…………えー」


 大天使が可愛い声をもらし、ルークが残念な声を上げる。


「? なにかしら、その反応は」

「いや……、シア……お前、これ――リーナの絵と大差ないぞ?」

「嘘でしょ!?」


 ばっと自分の絵を見た。

 ここが髪、ここが目、ここが口。

 うん、分かる分かる。少なくともリーナの絵よりは各種パーツが整っているはずなのだが。


「それ、自分で描いたから分かるだけで、他人の目から見たらぜんぜん分かんねぇーから」


 ルークにびしっと指摘され、がっくりと肩が落ちた。

 そんな……自信あったのに。


「仕方ない。俺が描くか。リーナ、ごめんなもう一回、お母さんの特徴教えてくれるか?」

「はいです!」


 今度はルークが挑戦するらしい。

 ふん、どれくらい上手か見てやろうではないか。

 またしばらくお絵かき時間となりルークが描き終わるまで待つ。

 そしてリーナが話終わり、ルークの手が止まると彼は顔を上げて頷いた。


「まあ、こんなもんか。俺も絵を習ったわけじゃねぇーから自信はないが」


 そう言い訳しながら見せられたその絵は……。


「わー、おにーさんじょーずです。おかーさんです!」

「えー……」

「シア、なんでお前そんな残念そうな声出すんだよ」


 みんなで絵心びみょー仲間を期待していたので。

 ルークの絵は、しっかり人間になっていた。とても写実的な絵で、きっちり影や輪郭、髪の細い部分、睫毛、ほくろまできちんとリーナの言葉通り書き込まれていた。

 本当に絵を習ったことがないのか疑わしいくらいだ。


「べっつにー、悔しくなんてありませんー。でもこれでお母さん探しが出来るわ。さっそくこれもって聞き込み開始といきましょう」

『おー!』


 とりあえず目の前の果物屋さんで彼女が戻って来ていなかったか確認してみた。


「ああ、この人かい。美人さんだよねー、その女の子と一緒にいたのを見たよ。え? その後? さあ、どうだろう。俺は見なかったけど。美人さんだから見たら記憶に残ると思うんだけどねー」


 一応真向いの文具店にも聞いてみた。


「あーこの人ね。時々見るよ。すごい美人だから色んな男の人と歩いてるんだよな。え? この子のお母さんなの? あの人、子供いたんだ。連れてるところ見たことなかったからさ。あ、でも昨日は一緒にいたよね? その後? いや、そういや今日は見てないな」


 どうやら別れた現場には戻ってきていないようだ。

 そこから徐々に範囲を広げて聞き込みをしていく。中にはこういうのは騎士団に任せた方がいいんじゃないかと渋い顔をする人もいたが、ここは私の話術と、リーナの大天使のうるうる攻撃で撃沈させる。

 ルークが女は怖いと呟いていたが、無視ですね!


 だが、私達が長いこと聞き込みをしているとやはり王都であるが為に巡回の騎士に見つかることになってしまった。一応、騎士が巡回に来るたびに隠れてやり過ごしてはいたのだけど……今日に限ってなんだか巡回が多い気がする。


「その子の母親を探しているようだな。これはギルドの仕事ではないのではないか?」

「あー、えっと……」


 どうしよう。真面目そうな騎士だ。リーナの事情も話せないし、どう切り抜けるべきか。頭を高速回転させて考えていると。ちらりと視界の端に派手な……でも騎士隊服を着ている銀髪の背の高い青年を見つけて、咄嗟に声を上げた。


「あ! ベルナール様!」


 大声を張り上げて手を振ると、運のいいことにこの人混みの中、彼は気が付いてくれた。にこやかに笑って手を振り返してくれた上に、もくろみ通りこっちに来てくれた。


「やあ、シアじゃないか。久しぶりだな」

「ベルナール隊長? お知り合いですか?」


 親しげな私達に騎士の男が怪訝な顔をする。


「ああ、ちょっとな。変な関係じゃないぞ? ただ、少し色々世話になったことがあるだけだ。君、ここは俺が持つから巡回に戻ってくれ」

「え? でも、その子供が母親を」

「母親?」


 目が合ったベルナールに目くばせすると、彼は頷き。


「俺の用事は終わっているからな。事情があるなら聞こう。君は巡回の途中だろ?」

「はあ……そうですね。ではお任せいたします隊長」


 騎士の男が去っていくと、私達はほっと息を吐いた。

 その様子をベルナールが不思議そうに見て。


「ふむ? やはりなにかありそうだな。よかったら話してくれないか?」


 親切心で言ってくれているのは分かっている。

 だけど私は首を振った。

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