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最大の課題は店長と会う事

 タマムコガネシティ中央区の一角、その通り道にある一つの執事喫茶がある。

 執事喫茶とは、ぶっちゃけちゃえば店員がお屋敷の執事役で御客が屋敷の主人と言うロールプレイを行いながら接客をする店である。そんな店の店長と言うかオーナーが事務所である3人の魔導師と対面している。


「あぁらん数貴ちゃん、またバイトォ? 良いわよぉん、ライセンス頂戴ね」


 オーナーは筋肉粒々で青髭の目立つ、野太い声からお姉言葉を発している。端的に言おう、生理的に受け付けないくらいには気持が悪い。しかし数貴と呼ばれた如何にも冒険者やってる魔導師と言う感じの水色短髪青年は一切動じていない。

 此処だけの話だが、彼はこの気持ちの悪さを中学生時代には克服していたのである。更に彼はこの店で働いてはやめるを繰り返しているのだ。

 何故そんな人間が雇われるのか、信頼があるのか、それは彼が冒険者だからであり、彼の身元はライセンスが証明している。何より、こういう仕事は冒険者たちは数カ月から数週間に渡って何度も入ってはやめていくのだ。ある意味、そう言う世界の文化だからとしか言いようがない。

 しかし、数貴の隣に立つ二人の少年は吐きそうな表情で筋肉オカマのねっとりとした視線を受け止めていた。

 片方は水純、美少女と見間違えても仕方ない16歳の少年で数貴の教え子だ。

 片方は草叉、少女でも通る様な緑髪ショートの19歳の少年で数貴の十年来の親友だ。

 二人の共通点は、性別を間違えた人間は別なく尻の穴から口と耳の穴まで何かを通す事だ。絶対にである、これは予言ではなく決定事項だ。

 そんな二人に筋肉オカマのねっとりとした視線と舌なめずりの音が響き。


「所で数貴ちゃん、そこのかわいこちゃんは」

「店長へのお土産です」

「数貴死にたいのかそうか分かった後で薔薇の肥料にしてやる」

「溺死希望ですね了解です鮫の餌にして完全犯罪をこなして見せましょう」


 二人の囁く殺人宣言を軽く流しつつも数貴は目の前の筋肉オカマがくねくねさせるのを見ると同時に忘却しながら。


「んもう、数貴ちゃんったらぁ。アタシは、美少年を視姦するのが趣味なのよ? ショタはノータッチを貫く紳士、アタシはどっちかと言うとマゾなのしってるでしょぉ?」

「いえ知らないです知りたくないです知りたくもなかったです、まあ冗談ですよ。こいつらは丁度良いので連れてきました。雇って貰えませんか?」

「んふ、良いわよぉん。うちにもこういうショタ枠はいつか揃えたかったしぃ、じゃライセンス」


 オカマの要求に応えて二人は我先にとライセンスを渡してオーナーからの雇われ印を貰うと3人は颯爽とロッカールームに入って丹念に鍵を閉めた。入念に、入念に。


「そこまで気にすんな、あの店長はド変態のオカマだが人の着替えは覗いてこない。寧ろ自分の肉体を覗かれたくて服の下は全裸で時折此処でストリップショーを披露しているような人だから安心しろ」

「何処に安心要素があるんですか!? それつまり此処で着替えようと思ったら地雷があるって事じゃないですか!?」

「おい数貴、俺外で着替えていいか?」

「止めろ阿呆」


 草叉はロッカールームの窓から出て行こうとしていたので魔法で生み出した粘液で足を止める。彼は溜息交じりに此処までの事を振り返るのだった。

 そもそもの始まりは、数貴が銀行を覗いた時の一言。


「やべ金がない」


 冒険者である数貴だが、その資金は基本湯水のように溶かしていく。そのため彼は定期的に依頼をこなしているのだが、今回に限ってはそろそろ頃合いかと思い、情報収集の為に喫茶店でのバイトをすることを決めたのだ。

 取り合えず社会勉強でもさせるかと思い、16歳の教え子である水純と人見知りどころか人間嫌いの社会不適合者の親友である草叉を挑発して此処まで連れて来たのだ。その時のやり取りが。


「おい草叉、手前前に貸した球根代返してもらおうか」

「ああ、分かった。ちょっと実家の農園で食糧取って来るから」

「いや働けよ手前」

「俺に出来ると思うのか?」


 即答に続く即答、草叉は自分が人間社会に混ざれないのを自覚しているので強気に働く気はないと言い切っているのだ。確かに彼は植物の世話が大好きだ、ベジタリアンであり働かずとも畑を作り農園を作って自主的に生活は出来る。

 だが、それとこれとは違うのだ。そもそもこの男は根本的に人間が嫌いであり、打算的な大人が嫌いであり、つまり今後の生活を考えると自分一人で社会にある程度妥協して混ざれるようになっていなければならない。

 そう、言い訳したただの数貴の押し付けた優しさであり、本人も反吐が出るほどの偽善だ。


「まあそうだな、お前みたいな底辺の屑が出来る訳もないか。悪かったよ、働く根性も無いカスに何言っても無駄だったな」

「ああ? 上等だ、手前みたいな嘘吐きに出来て俺に出来ないわけがないだろうが」


 数貴は単純な奴だと思った。草叉は素直じゃないなと思った。

 そんなハートフルなやり取りで三人はいきなり執事喫茶で働く羽目になったのだが。


「数貴、一つ聞きたい」

「何だ?」

「執事って何だ?」

「台本。これ読め」


 そもそも執事と言うもの事態を知らない親友に執事喫茶と言う文名を教える事から始まりだった。


「あっはは、この人執事も知らずによく生きてこれましたねぇ」

「数貴、お前の弟子凄いな。ナチュラルに煽って来る、師匠そっくりだ」

「だろう? 俺の自慢だ」


 草叉は台本読み込みながら友人に皮肉を送るものの、うざいドヤ顔と同時に注文を受けたコーヒーとケーキを出す数貴。草叉は溜息交じりに。


「いや、お前に皮肉言ったつもりだったんだが」

「ええ、それが皮肉ですか? 流石、執事も知らないもの知らずですね」

「いい加減お前の弟子桜の苗床にしていいか?」

「春にな」

「良いのかよ」


 2月が始まったばかりの肌寒い容器の中、草叉は台本を読み込みながら他の店員が請け負ってきた注文を聞いて紅茶を入れ始める。当然無言だが、それでも、肯いて動くくらいは出来た。


「おう、他の奴とも話せコラ。何の為に手前を此処にぶち込んだと思ってる」

「知るか」

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