ドレミの遺言
ちょっとした言葉遊びです。音階の《ドレミファソラシド》に合わせて作成しました。
後を追う医者の話。
どうしても 貴方に伝えたい
蓮華の花言葉があります
《あなたと一緒なら 苦痛がやわらぐ》
不治の 不起の病に失意していたあたしを
その声で励まし その手で暖め その技術で看病してくれた
来世があるのなら また貴方と話がしたい
死ぬのは怖いけど 別れるのは辛いけど
どんなに暗い闇の底でも 貴方の姿を見い出だせる気がするのです
※
「ーー零時二分」
ミツルは時刻を読み上げる。たったいま《遺族》となった両親二人へと、憂慮の目を向けた。
二人は豪雨のような涙を流し、病床で横たわる愛娘へとすがりつく。
その悲鳴は拷問器具のように錆びつき、そして痛々しく、深夜の病院に広く響き渡った。
雷鳴が屋外で轟き、泣き崩れていた両親はハッと我に帰る。うわ言のように「すみません」と謝り、腫れ上がった目で背後の医者へと振り向いた。
しかし、そこには、
ーーどす黒い血を吐き、薬瓶を手から溢した医者の姿があった。
交際相手の女性が亡くなり、医者としても恋人としても守れなかった男性が自決する話でした。