在り来たりなお話
処女作で、短い上に趣味に走りました。
生暖かいような暖かい目でお読みください。
どこにでもあるような、在り来たりで三文小説のような話だ。
私と陛下は政略結婚だった。
陛下は王国を統べる王であり、太陽のような金の髪にペリドットのように輝く瞳。それに加えて端正な顔立ちで頭も切れる、まさしく秀外恵中という言葉が当てはまるようなお方だ。
対して私は栗毛色の髪をした、どこにでもいるような顔をしている。唯一自慢できる所といえば、母譲りのアクアマリンの色をした目だ。
結婚式の夜、(所謂初夜だが)陛下は来なかった。嫌われているのだろう。陛下には愛し合っている幼馴染がいるのだと他の有力貴族のご令嬢から聞いた。目があったら逸らされるし。
* * *
それから二年の月日が流れた…
私は今、眉目秀麗でなんでもできるんじゃないか?というような陛下の腕の中にいる。
私は目があったら逸らされる程に嫌われているというのに…
陛下の麗しいお顔は悲痛に歪められて、何か仰っている。
陛下 と声を掛けようとしたが声にならず、代わりにゴボゴボと真っ赤な液体が喉からこみ上げてきた。
そうだ、陛下と視察の最中に襲撃されたのだ。
お付きの騎士達が片付けてくれたのだが、終わったと思い油断していたのだろう、まだ息のあった襲撃者が最期の力を振り絞り剣を持って襲いかかってきた。
この距離では騎士達も間に合わない。
私は隣にいた陛下を思いっきり突き飛ばし、代わりにその切っ先の前へと躍り出た。
その瞬間に胸に突き刺さる銀色の剣。
目の前にはこれでもかと目を開き、私を凝視する陛下。
頭の片隅で、
そんなに見開いたら目が落ちてしまいますよ
なんて思ったが言えるほど空気が読めないわけではないし、言おうと思っても血がせり上がってくるだけで言えない。
後ろで騎士に襲撃者の息の根が止められる音
を聞きつつ、真っ赤な液体と共に崩れ落ちる私を陛下は抱きとめた。
綺麗な瞳から涙を溢れさせ、必死に傷口を押さえつけながら私に向かって叫んでいる
もう何を仰っているか聞き取れないし、目も霞んできてしまったけれど…
最期に、声にならない声で告げよう。
『愛しています、陛下』
最初で最後の告白を
そうして私の意識は闇に沈んでいった…
もし好評であれば陛下視点ももしかしたら書くかもしれません。
もし良ければコメントをお願いします。