「魔王の望みは?」
よ、わし魔王!
この世界をけっこうな恐怖で支配しているぞ。
お前たちを死で覆い尽くしてやろうか!
ふふ、怖いか?
怖いよな、うんそれでいいぞ!
なんたってこのわしは死の支配者だからな。
旧き者どもなど既に形無しじゃ。
これからは余の時代で間違いなし。
素敵すぎて笑いが止まらんよ!
ふ~~ふふ、ははは、はは~~~~~っははは!!
む? どうしたのじゃ魔将軍。
なんじゃと? わしらが死の使者じゃなくなって来てる?
莫迦言うでないよコラ。
そんげなわけあらへんでしょうが!
え? むしろ民衆に気に入られてる?
ええ~~~、何それヤバいじゃない! わしら悪なのに!
ちょ、まってまってまって、求めないで! そんなにわしらを求めないで!
いやぁ~~~~~~!!!
―――――――――― 数十億年後 ――――――――――――――
もっとわしらを求めろ~~~~!!
そこで止めんな! もうちょいだ、……ああ、ダメか?!
うぅ、惜しいにも程があるぞ。
もっと吸ってくれ~~~~!!!
―――――――――― さらに数億年後 ――――――――――――――
フランスのとある研究室。
物思いに耽る学者がいる。
羊皮紙などを広げている。
彼の名は、アントワーヌ・ラヴォアジエ。
おしゃれ鬘の似合う割とイケメン。
「ん~~~、アレだな。やっぱりそうしよう」
と彼は言った。
「こいつの名は、"酸を生む物(oxygène)"だ」
こうして魔王に名前ができた。
今も「酸素」と呼ばれている。
いまとなっては魔王様、おもに生き物の過呼吸を望むばかりである。