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1・6話・決心

大きな影は、ゆっくりと俺に近づいてきた。そのあと、ウルンとガルーラさんが武器を身につけてやってきた。ウルンは、長い五本の刃がついているバグナグを身に着けていて、手首の周りには10cmくらいの針がついている。手甲には、三日月のマークが描かれている。一方、兄の一也さんは自分の体ぐらいもある大きな斧で、刃の辺りにはウルンと同じ三日月のマークで、一番下のところには30cm位の鋭い刃がある。おそらく槍のような役割も果たすのだろうと俺は考えた。(まあ、そんないらん説明はおいといて…)

シルエットだけしか見えなかった姿が、だんだん顔や服装などが見えてきた。イタチをモチーフしたようなポンポンつきの帽子をかぶっていて顔が書かれている。髪の色は金髪で、目は髪の毛で隠れそばかすだけが見える。服装は濃い茶色の上にうすい茶色の上着を着て、下はジーンズをはいていた。そして武器は、何も持っていなかった………。

クレミナルは不満げに、

「チッ!くそ!どこにも(ねー)じゃねえか!『スリームーン』って宝は!まったく!ん…?テメーは誰だ?」

ようやく俺達に気づいたらしく、クレミナルは俺に近づき

「おい、小僧『スリームーン』って宝はいったいどこだ?」

と、俺のあごに触れて問いかけた。

「そこまでだ」

ウルンが右腕につけているバグナグの刃をクレミナルの首筋に向けた。

「残念だったな…。『スリームーン』はこの家の隣にある。あいにく手にすることはできねえよ…。何故なら、テメーはオレ達によって刑務所送りになるからな!」

「残念…?刑務所…?フッ!」

クレミナルは、ウルンの言葉を聞くと、余裕な顔をして鼻で笑った。

「何がおかしいんだ?」

ウルンがそう問うと、クレミナルは

「ハン、なるほどな…。道理で(ねー)はずだ。今倒れている、こいつ等に尋ねてみたら『そんなもの知らない』って何度も答えるもんだから、『とぼけるな!』って、ついキレてやっちまったよ…。ハハ…ハハハハハ…!」

それを聞いた俺は、『ギリ』っと歯を鳴らした。何だか怒りがこみ上げてくる…。コイツは…そんな事までもして…武器のために…父さん母さんを傷つけたのか…。そう心の中で呟くと俺は、ますます怒りが込み上がってきた…。

「さてと、まずは片付けと始めますか…。まず一番邪魔なのは…お前だ!」

イタチの様な帽子をかぶっているクレミナルは、俺を指差してそういった。そして指差したかと思ったら、いつの間にか俺の前に消えていた。

そのときだ


キィ――――――ン―……


凛として静かになる金属の音が俺の後ろの聞こえた。振り向いてみると、ウルンが俺の後ろでクレミナルの腕を押さえつけていた。クレミナルは『チッ』と、舌打ちをしサッと風のように台所の部屋のドアを出て俺の家から出ていった。

「逃げた!!」

ウルンが俺たちの前で叫んだ。ウルン達が走ろうとしたので俺も急いで後を追おうとしたとき、いきなりウルンがくるりと振り向いた。

「来るな!!」

「!?」

その顔はとても険しくて、俺は肩をすくめた。ウルンは、俺を見つめながら、

「お前はあのクレミナルに命を奪われかけた…。お前がオレ達についてきたら厄介だ!もしもついてきたら、お前は被害者になってしまう。そうならない為にだ!だからもうついてくんな!しばらくお前んでじっとしてろ!!」

そう怒鳴ったウルンはガルーラさんと一緒にサッと玄関へ駆け、出て行った。俺はしばらく何も言えなかった。ふと、振り返ってみると明かりがついていないが、台所の窓近くに街灯があるのでそれがともって、薄暗いが大体見えた。かけた皿やコップなどの食器。散らばった今日の夕飯になるはずだった、ハンバーグのひき肉。そして、倒れて気絶している父さんと母さん…。いけない!クレミナルのことですっかり忘れていた!おれは慌てて、母さんと父さんのところに寄った。幸い怪我はかすり傷程度で少しホッとした。けど、何だか胸が妙にもやもやとしていた。本当にいいんだろうか…。

俺の頭の中でふと浮かび上がってくる。しかしその中で一瞬ウルンの言葉が頭によぎる。あいつらならきっとやれるという気持ちもある。けど正直言って、心配な気持ちもあり、いかなくてはいけないと言う思いがある。そんな思いが胸の中で渦巻き、迷いが走る…。けど俺はとうとう決心がついた。やっぱり行こう!足手まといになるかもしれない!けど、何だか行かなくちゃいけないような気がしてたまらないんだ!!俺は急いで玄関にに駆けていった。外に出てみると、夏なのに夜風が吹いていて涼しく、ちっとも蒸し暑くなくて心地よかった。今日は新月のため、道にたってある街灯が唯一の明かりだった。ウルンとガルーラさんはどこに行ったんだろう…。そんなことをふと考えたが、そんな暇はない。俺はすぐに家から見て左の方へまっすぐと走っていった。

「あーあ行っちゃったぜぇ…アイツ」

俺の後ろを上から遠く眺めている。周りが暗く、よく見えないがどうやら二人だ。

「全くだ…あの犬コロの小娘の言うことを黙って聞いとけばいいのによぉ…」

もう一人が薄笑いしながらそういう。するともう一人が、また話し出し

「何故なら、今日のM・モンスタースパイズには最悪の日だからな……」

二人はじっと俺を眺め邪悪の笑みを浮かべた。午後11時50分月のない夜に今、本当・・の闇が動き出す。

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