1・5話・クレミナル出現
「さてと…そろそろ本題に入るとするかのう……。」
フルムナさんは、ウホンとせきをだして俺の方へ視線を向けた。俺は今、そのモンスタースパイズという組織はいったいどんな組織なのか表には出さなかったけど正直言って、気になって気になってしょうがなかった。
「人間界には犯罪者は、一種類しかいないが、あっ、これはわし等魔界人の目からなんじゃがのう…。しかし、魔界では犯罪者は二種類いるんじゃ。まあ、当たり前かのう。一つ目は魔界にいるクレミナル。まあ、こいつらは犯罪をしたばかりの素人みたいなもんじゃから、大したことは無いがのう。ハッハッハッハッハッ。」
フルムナさんは、そう話ながら笑い、また話を続けた。
「次に二つ目は、人間界に降りたクレミナルじゃ。こいつらは厄介でのう、魔界にいるクレミナルと違って、魔界で多くの犯罪を犯した凶悪犯。その中には指名手配されたやつが何千人もおる。しかもやつらは、魔界で犯罪を犯すのが物足りなく感じて、今度は人間界で大暴れしてやろうと考えるもんが多いから、大変な問題じゃ。」
俺は、その話をなぜか真剣に聞き、ゴクリと唾を飲んだ。
「ここからがわしらモンスタースパイズの出番じゃ。わしらは、人間界に降りて普段は人の姿をして、偽名を使っているのだがクレミナルがやって来た時は、すぐに本当の姿にとなってクレミナルを退治し、逮捕して魔界に送ると言うわけじゃ。分かったかのう?」
「んー…じゃあもし、クレミナルが人間たちの前に現れたらどうなるんですか?モンスタースパイズは、人間の前に正体をばらしたらまずいんですよね?大丈夫なんですか?」
俺はそういう質問をフルムナさんに問いかけた。
「うむ、いい質問じゃのう。だがその心配は無い。もし、人間に目撃されたなら、すぐにその時の記憶を消すからのう。」
それを聞いた俺は、思った。俺は、こいつらの正体を知ってしまった。だから、俺もその時の記憶を消されるんだろうと思った。
「けど、モンスタースパイズは、クレミナルを倒すだけじゃない。時には、極秘で魔界の貴族を護衛したり、今俺たちがやっている魔界の宝をクレミナルの手から盗まれないよう守るのも仕事のひとつだ。」
そう答えたのは、ウルンだった。ウルンが自分から仕事のことを話すのは、正直驚いた。まあ、どうせ俺は記憶をけさられるからどうでもいいと思ったんだろう。それにしても、モンスタースパイズっていうのは、そんなすごい組織だったとは……。スパイと言うより、警察みたいなもんだなあと俺は思った。けどなんか、かっこいい…!普通のスパイと違って、違う種族を守るなんて…。何だかとても偉いような気がした。
「今のわしらの任務は、この『スリームーン』と言う秘宝を翌日モンスタースパイズの本部に届けること。しかし、噂なのだが……その秘宝を狙っているクレミナルがいるらしいのじゃ。」
と、フルムナさんが答えた。
「奴の賞金首は確か七百万。名前はえ―と――……」
と、途中でウルンが答えかけた。
「これウルン!お前クレミナルの名を忘れるとは一体何事だ!」
フルムナさんが怒鳴る。
「じゃあ、じいちゃんは覚えてるのかよ!」
「…………。」
フルムナさんは、無言だ…(汗
「ほら見ろ、ボケで覚えてねえじゃねえかよ!」
「ウルン、じいちゃんはしょうがない無いだろ!」
ガルーラさんがウルンに怒鳴る。俺は何も言えなかった…。さっきのあのかっこいい感じは一体どこへ行ったのやら……。
しかし、その『スリームーン』を狙うクレミナルは、一体どんな奴なのだろう…俺はそのことについて少し考えてたそのときだった。
「キャ――――――!!!!」
隣から叫び声と一緒に食器などが割れる音が聞こえてきた。あの声は……
「母さん!!!」
間違いなくそれは母さんの声だった。すると突然「クレミナ―――ル!!クレミナ―――ル!!」とかん高い声が聞こえてきた。あまりにも高かったため、びっくりしたが、それはウルンたちの腕についていた、何やら腕時計のような物から発生している物だった。
「クレミナルだ!!しかも場所はオレ達の家の隣だ!!」
ウルンが叫ぶ。俺は鳥肌が立った。何故俺の家にクレミナルが……!俺はウルンの家を出て、自分の家へ駆け出した。ウルンたちも、俺のあとに続いて、走り出した。俺は、玄関で靴も脱がずに、台所へ向かいだした。
「母さん!!!!」
台所の戸を意気酔い良く開けたとたん目の前に恐ろしい光景が広がった。あっちこっちに割れた食器の破片や調理しかけた食材が散らばり、その中で母さんと仕事に帰ってきた父さんが倒れていた。そしてその前には大きな人影が俺の前にいた。それは間違いなくクレミナルだった……。