1・3話・正体…!
「すいませーん。隣の暗田ですけどー…・・・」
俺は、チャイムを鳴らした後、そういった。しかし出てくる気配は無い…。もう一回鳴らしたが、やっぱり出てこない…・・・。留守かと思ったが、そんなはずは無い。さっき引越しが終わったばっかりだし、その後に、一家そろって、外を出ることは無いだろう……。
(何だよ…。何でいないんだよ……。)思わず、いらだってしまったもんだから、ノブを少し引っ張った。鍵は開いていた……。
辺りは薄暗い。玄関の右手には洗面所。その少し奥の左は階段で、二階に続いている。そして、その反対には、扉があった。明るい…人影がある!
じゃあ何で、出てこなかったのだろう?ふと耳を澄ますと話し声が聞こえる。扉のほうだ…。俺はまるで何かに、引き付けられるように何も考えずに、扉にどんどん近ずいていった。そしてこんなことを、話していた。
「よいか?二人とも。わしらは、何故この人間界に着たか…・・・分かるかのう?」
老人の声だった。そして、別のやつが答えた。
「わかってるよ、じいちゃん。今回、オレらは魔界のスッゲー宝を守るんだろう?」
あいつだ!夜野月代!しかし、さっきから魔界とかなんか言ってるが、一体なんだろ?俺は少し、疑問に思ったがそのまま扉に耳を傾けていた。
「うむ、そのとおりだウルン。魔界で最も貴重で謎に満ちている武器『スリームーン』…。人間と魔界人が作った日本刀『新月』、サーベル『クレッセント』、そして、鎖でつなげられた2本の短剣、『月の絆』。この3つの剣が、1つの武器とされている…・・・・。」
うーん…。さっぱり分からねえ…・・・そもそも魔界なんて、何を馬鹿なことを……。
「しかし今、その『スリームーン』がモンスタークレミナル(魔界の犯罪者)たちに狙われている。」
別の声だった。低くて少し抑揚がある声だ。
「ああ…そうじゃ…だからその『スリームーン』をわしら3人で守る。それが、わしらの任務じゃ。」
そして、老人は、一度黙りこんで、こんな事を言い出した。
「わしらは、普段は人間界にやってくるモンスタークレミナルを逮捕し、人間をモンスタークレミナルから守るのがわしらモンスタースパイズの仕事じゃ…二人とも…これは何度も忠告しているが…・・・決して、自分の正体が狼人間だということを人間にばれてはいかんぞ!」
『狼人間』……!?俺はそのことばを一瞬、耳を疑った。顔に冷や汗が流れ、鳥肌が立つ。まるで、冬に水のシャワーを体全体に浴びるようだ。
歯はガチガチと鳴らし、思った「このままじゃ食われる!逃げないと!」と。
なんてたって狼人間、狼だ!人間を守るとかなんかいっているが、月を見て狼になり、きっと人を襲う化け物だ!今はともかく逃げなくては!!
そのときだった。
「ガサッ」
「誰だ!!!」
月代の声がした。ミスター○ーナツの箱を汗で落としたのだ。目の前には、3人の人影がいた。そして、真ん中には月代がいた。
「お前は…あのときの…・・・!!!」
月代の姿は、一度見たときの姿じゃなかった。かすかに見えた小さい牙。耳は人間の耳ではなく、フサフサの狼の耳で、後ろにはフサフサの狼の尻尾がはえていた。まさに、狼女の姿であった。