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17 はるかと秋人の出会い・3

 想いを伝える。

 そう考えるだけで、鼓動が速くなる。

 告白を決意して次の日に店を訪ねるまで、はるかは落ち着くことが出来ずにそわそわしていた。

 不安と希望が胸にあって、でもイメージしたのは「あきと」の微笑む姿ばかりで、「あきと」を思い浮かべるだけで幸せに思う。

 そんな風にはるかは冷静さを失い、空想の「あきと」にただ焦がれていた。

 そして、楽しい未来が待っている……そんな予感を胸にはるかは家を出てあの店へ向かった。


 店にはいって、いつものようにカウンターに座ると、目の端に秋人が映って一気に緊張が高まった。

 いつ話しかけよう。

 はるかは告白することだけを決めて、その他は何の計画も戦略もなく、勢いだけでここまで来たのだった。

 それから秋人が近くを通るたびにそわそわして、いつものように顔を見ることもできなかった。

 タイミングを見て声をかけようかと思ったが店内では難しそうなので、どうにか少しでも会話する時間を作ってもらうのが一番だと考えた。例えば秋人の仕事が終わった後や、はるかが会計を終えて外に出た後の少しの時間だけでもいい。

 しかし話しかけようとすると体が動かない。

 深呼吸してカクテルを一気に飲み干した時、男に話しかけられた。

「こんばんは」

 酔っているのだろう、男はカウンターに寄りかかっているにも関わらず、ふらふらと落ち着かない様子だ。

「最近よく一人でくるよね」

 この男の顔には見覚えがあった。どうやら常連のようだ。

 はるかは目の前の男より、秋人がどう思うのかを気にした。生返事に気づくことなく、男はしゃべり続けている。

 こういう状況での対応の仕方をはるかは知らない。冷たくあしらうなんて、考えもつかなかった。だから秋人を気にしながら、曖昧に返事を続けた。それで男は少し調子にのってしまった。

「さっきから大人しいね、せっかくだし、もっと仲良くしようよ」

 男はそう言ってはるかの手を握ってきた。それから少し椅子をずらして、はるかとの距離を縮めた。

 ここでようやくはるかは、目の前の男が困った人間だからどうにかしなければ、と思った。

 しかし手を握られているだけで、それは過剰反応なのかもしれない、とも思った。

 はるかがどうすればいいかわからず、困ってしまい石のようにかたまっていると、背後でコップの割れる大きな音がした。

 そこにしゃがんで割れたガラスを片付けている店員は、秋人だった。

「申し訳ありませーん」

 秋人は軽く断りを入れて、片づけを続けた。 

「素手で触ったら危ないですよ、大丈夫ですか。私、手伝います!」

 はるかは秋人に駆け寄った。

 先ほどまでそばにいた男のことも手を握られていたことももう頭にはなく、ただ秋人のためにその場を離れた。はるかには秋人だけしか目に入っていないのだ。

 




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