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Time goes by

作者: 麻生あきら
掲載日:2026/08/25

挿絵(By みてみん)

「一年後に魔法使いにしてあげる」

 

 仕事帰りの薄暗がりの公園。

 木立の中の細い歩道。

 重い足を引き摺って、ぼんやりと歩いていた。

 

 目の前のあらわれた黒衣の男が、そう言った。

 どこから来たんだろう?

 木々の間から?

 

 それとも、最初からいたのか?

 

 

 

「一年後?」

「そうだよ。一年後」

 

「魔法使いって何?」

「魔法が使えるんだよ。ふふ」

 

 小馬鹿にしたように笑うのが、なんだか腹立たしい。

 変だな? フードを被っていて顔なんか見えないのに。

 

「大雑把すぎてわからないよ」

「そうだね、何でも魔法で解決できるよ。物を動かすのも、作り出すのも、壊すのも」

 

 ありえないだろ?

 錬金術とか言われた方がまだマシだ。

 

「手品って事?」

「違うよ。この世界の物理法則を無視するやり方だね」

 

 ますます馬鹿馬鹿しいな。

 

「なんで、一年後に、俺を? 魔法使いにしてくれるんだ?」

 

 にぃ、と唇が動いた。

 そんな気がする。

 

「ふふ。猶予、かな。君、っていうのは、そうだな。目についたから」

「なんだよ、それ。猶予? 今すぐでもいいんじゃないの?」

 

 何でも出来るようになるなら、こんな疲れる生活から解放されたいよ。

 思いのままに作って、思いのままに壊して。

 ああ、でも。

 どうなのかな。

 どこまでできるんだろうなあ。

 

 

「今すぐは駄目。心の準備がいるからね。色々と整理しておいて欲しいな」

 

 それじゃ、と言って男は消えた。

 

 

 

 ひと月、ふた月。……半年。

 何も変わらない日々が続いた。

 

 職場に足を運ぶ。

 同じルーティンワーク。

 酒もたばこもやらないし、賭け事もしない。

 

 毎日公園を通ってアパートに帰る。

 重い足を引き摺って。

 

 

 

 気づけば同じ季節が廻って来た。

 黒衣の男が目の前にいた。

 

「さ、約束の一年後だよ」

「⋯⋯え? もう?」

 

 男はフードを下ろして俺を見た。

 胸の痛み。息苦しい。体が傾ぐ。

 何も見えなくなった。

 

 

 

 頬にザラザラとした感触。

 鼻の頭を何かがくすぐった。

 

 目を開ける。

 土。背の低い草。

 ああ、公園の歩道で倒れたんだ。

 

 身を起こす。

 遠景が広がる。

  

「どこ? ここ」

 

 一面の草むら。

 傍らに黒衣の男。

 

「君はもう魔法使いだよ。念じて御覧? 何でも出来るよ」

 

「なっ」

 言葉が出ない。

  

「整理しておいてって言ったよね?」

解釈はいかようにでも……。

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