第二十四話 暴走と母親決定戦3
母親決定戦は今回で終わりです。
『だ、第一回母親決定戦……や……』
『………詳しいことは前々回と前回を見てください………』
「あ、アカネちゃん……どうしたの?」
『お兄さん、聞かんといて……』
『………アカネちゃん、普段通り元気にやらないと………また、“やる”よ………?』
『は、始まるでぇー!』
「……二人の間に何があったんだろう?」
「じ、じゃあ次は私が……」
『続いて名乗り出たのは、守屋選手やぁー!』
『………出場選手の中では、一番常識人に見えますが………』
「……そうか。 お前達は知らないんだったな」
『………た、鷹野さん………な、何をですか………?』
「まぁ、見てればわかる」
(カツカツカツ)
「あ、赤ちゃん。 こ、コレ……」
『おぉーっと!守屋選手、子供用オモチャを取り出したでぇー!』
『………モノで釣る作戦ですね………ありふれたようですが、効果は高いと思われます………』
『さて、赤ん坊の反応はぁー!?』
「ダァーッ!」
「よ、よかった……」
『カナコはんの予想通り、かなり喜んでいるようや!』
「もしかして、さっきからこの子がイジってるオモチャって……」
「は、はい。 私があげました」
『おぉーっと! 守屋選手、大会が始まる前からアピールしていたようや! これはポイント高いでぇー!』
「ありがとうございます。 僕は今こんな状態なものですから、こういうことに気が回らなくて……助かりました」
「よ、喜んでいただけたようで……よかったです……」
『………見た感じも、良い雰囲気ですし………これはもう決まりかもしれませんね………』
「………ミツキ、何か作戦はあるか?」
「ボクが考える一番良い作戦は……チケットの有効期限過ぎまで喜助を動けなくさせることだ」
「喜助くん喜助くん喜助くん喜スケくんキスケクンキスケクンキスケクンお仕置きお仕置きお仕置きお仕オキオシオキオシオキオシオキオシオキ……キィスゥケェクゥン……オォシィオォキィ……」
「サヤさん、ミツキさん、アヤコさん………簡単に殺しちゃダメですよ? しっかり苦しめないと」
「「了解」」
「スグ……殺ッチャ……ダメェ……?」
「………お前ら、落ち着け。 あと篠原、お前はこの小説のジャンルを“コメディー”から“ホラー”に変えるつもりか?」
「「「で、でも……!」」」
「殺ラナイト……殺ラナイト……私ガ私ジャナクナル……」
「お前はすでに人間をじゃなくなりかけているが……とにかく安心しろ。 ……俺がトラップをしかけた」
「つ、次は絵本を読みますね……」
『おぉ! これはまた定番や!』
『………定番、ということは効果があるとも言えますからね………』
「じ、じゃあ読みます……」
「は、はい。 お願いします。」
「いきます…………………………………………………………………“空手入門”」
「………ん?」
『『………え?』』
「空手は元は……中国の格闘技で……」
「あ、あの……守屋先輩? それ、絵本じゃないんじゃ……」
「その発祥は………………………………………本なんか読んられるかぁぁぁぁぁぁ!!!」
(バン!)
「も、守屋先輩!?」
「本読んで強くなれるかぁぁぁ! 実戦だぁ、実戦!!」
「ちょ、守屋先輩! 落ち着いて……!」
「………予想以上だな。 やはり夢があった……!」
「………鷹野ぉ! またお前かぁ!!」
「俺はただ本をすり替えただけだ!」
「威張って言うなぁ!」
「夢のためだ……我慢しろ、才原」
「お前のいう夢の定義が僕にはさっぱりわからない!」
「実戦だぁ! 表ヘ出ろぉ!!」
「も、守屋先輩! 落ち着いて……」
「落ち着いてられるかぁ!!」
「ア、ウゥ……」
『………あ、赤ちゃん………こっちに避難………』
『こ、これは……破壊力は抜群やけど……』
「はたして子育てに破壊力はいるのか……」
「元凶が言うなよ!」
「実戦じゃあ!」
「も、守屋先輩! お願いだから落ち着いて下さい!」
『い、いろいろと大変やったけど……とうとう最後の挑戦者や!』
『………最後は鷲崎選手です………』
「………………」
『………わ、鷲崎選手………?』
「(すぅすぅ)」
『もしかして、寝てんのちゃう?』
「(すぅすぅ)」
『………ね、寝ちゃってますね………』
「な、なんか……女性の寝顔ってすごいドキドキする……」
(((((バタッ)))))
「あ、あれ? みんなどうしたの?」
『………み、みんな寝始めちゃいましたね………』
『さりげなく顔を見えるようにしながら、な……』
「ウゥゥ…」
『………あ、赤ちゃんも眠いの………? じ、じゃあ喜助先輩の所に………』
「ウゥーッ!」
『………え? い、嫌………? ………ここでいいの………?』
『カナコはん、気に入られたようやなぁ……』
「(すぅすぅ)」
『………ね、寝ちゃいました………』
「カナコちゃん、よかったらそのまま少し寝かせてあげてくれないかな? その子、なかなか起きないだろうし……その……さっきの僕みたいに服破れたらいけないし///」
『………あ………は、はい………わかり、ました………///』
『この場合、どうなるんや? 審判の鷹野先輩?』
「《赤ん坊が眠った→安心してる→気に入った》と考えて……正式な選手ではないが、泉カナコが優勝だ。 母親決定だな」
((((((ガバッ!))))))
『………い、いきなりみなさん起き………!?』
((((((グルンッ!))))))
「ヒィッ……!?」
「まぁ誰が母親になろうが、こういうことになるだろうな」
「た、鷹野……まさかお前……全部予想して……な、なんで……!?」
「昔の人は言った。 ………他人の不幸は蜜の味、とな」
「………鷹野ぉぉぉ!!」
「「「「「「オォ…シィ…オォ…キィ…」」」」」」
「み、みんな……いや、皆様……お、落ち着いて……下さい……人間としての理性は大切に……」
「「「「「「オォ…シィ…オォ…キィ…!!」」」」」」
「ちょ、誰か!!助け……」
※この場面をこれ以上書くと18禁指定をしなくてはならなくなりますので、控えさせていただきます。“変人たちと僕”は全年齢対象、健全なコメディー小説を目指しています。 (by作者)
「ヤンデレとか出てる時点で、“健全”ではないと思うんやけど……」
(ガンッ!)
「あ痛ぁ!」
次回は見事母親決定戦を勝ち抜いた(?)泉カナコさんと喜助の桜ヶ丘遊覧パークでのデートをお送りします。
ミツキさんが言ったように『期限切れでチケット無効』なんてことはありません。ご安心(?)ください。
では、また次回にて。